バスケ

日体大・小澤飛悠 等身大なルーキー「仲間が困ったときに助けになる」選手をめざして

すでにチームへ高い貢献度を示している日体大の小澤(すべて撮影・青木美帆)

日本体育大学の小澤飛悠(1年、中部大第一)は、大学バスケ界のルーキーの中で1、2を争う貢献度を示している選手だ。4月下旬に行われた筑波大学との定期戦からスタメンに起用され、5月の関東大学選手権の優勝、6月の関東大学新人戦の3位入賞の原動力となった。

今回の記事で何よりも伝えたいことは……

身長188cm、体重91kgの小澤は、器用さとパワーを兼ね備えたオールラウンダーだ。状況に応じて、ボール運び、3ポイントシュート、ポストプレーなどのプレーを賢く選択できる上に、とにかく気が利く。チームメートがリバウンドを取ったら真っ先にゴールに走り、大きく手を上げてボールを呼ぶ。ボックスアウトを徹底し、こぼれ球に手を引っ掛ける。その献身的なプレーは、現在ハンガリーで開催中の「FIBA U19ワールドカップ」でも日本代表の大きな助けになっている。

……と、小澤のプレーの特徴を簡単に紹介させてもらったが、今回の記事で何より伝えたいのはここからだ。

試合会場で小澤のプレーを見てみると、すぐに気づくことがある。それは、小澤がいつも楽しそうにバスケットボールをしているということだ。

いいプレーをしたら全身で喜びを表現する。味方がいいプレーをしたときもうれしそうに笑っている。何なら、対戦相手がいいプレーをしたときですら「やるなあ」と笑みを見せていることがある。

いいプレーをしたら全身で喜びを表す

日体大の藤田将弘監督は、小澤がほとんど試合に出ていなかった高校1年のときから彼に目を留め、「うちに来てほしい」と声をかけていたという。理由を聞くとこんな言葉が返ってきた。

「選手のどこに引かれて声をかけるのかは、指導者によって違うと思います。プレーなのか、顔つきやベンチでの振る舞い方なのか……。僕は後者。プレーがどうこうっていうより、笑顔でやってるところに引かれてアプローチさせてもらいました」

中部大第一高校の常田健監督も、中学時代は関東大会で1回戦負け、体重100kg超のぽっちゃり体形だった小澤に声をかけた理由を「素直そうだったから」と話していた。確かに試合を見ても、コート外での振る舞いを見ても、小澤はとても素直に見える。

味方が倒れたときは、すぐに駆け寄ってサポート

「しっかり休めよ!」「しっかり休みます」

新人戦で、強く印象に残っているシーンがある。

準決勝の序盤、ベンチに戻った小澤に対して応援席にいる上級生が「飛悠、しっかり休めよ!」と声をかけた。試合中、突然上級生から声をかけられた新入生は、軽く会釈するくらいが精いっぱいだろう。しかし小澤は声をかけた上級生にニッコリ笑って「しっかり休みます」と答えていた。

年長者や不慣れな環境に対して臆したり、おびえたりしない。積極的にボールを持ち、シュートを放っていても尊大さや傲慢(ごうまん)さを感じさせない。どんな場所でも等身大の自分を発揮できるパーソナリティーは、小澤の根幹をつかさどる大きな才能だろう。

そしてこのような人柄は、小澤に学びのチャンスをたくさん与え、成長を呼び込んでいる。小澤は言う。

「普段から結構コーチ陣に『どうすればいいですか?』と聞きに行きます。U19日本代表の合宿をトム・ホーバスさん(日本代表ヘッドコーチ)が見に来たときも、『アドバイスをください』と話しに行って、『今はフォワードだけど将来は2ポジ(シューティングガード)だから、シュート以外の技術も身につけたほうがいい』と言われました。確かに世界規模で見たら自分は小さいほうだし、3ポイントが打てるだけじゃ足りないと思って、藤田先生に『セットプレーをコールしたりハンドラーとしてのプレーにも挑戦したいです』と伝えたら、それを聞いてくださって、そういうプレーをさせてもらうようになりました」

自ら志願しハンドラーとしてのプレーにも挑戦中だ

気分次第で自分を変えたくない

バスケ経験者の両親のもとで育った一粒種。少年時代は、小学2年生のときに買ってもらったバスケットゴールで、暇さえあれば父と1対1をやっていたという。「勝手な想像ですけど、ご両親にとてもかわいがられて育ったんでしょうね」と言うと、小澤は多少照れくさそうにしつつも「そうです」と即答した。やっぱり、どううがった見方をしても、小澤は素直だ。

自らが思い描く理想像は、仲間が困ったときに助けになれる選手。チームが落ち込んだときは自分が声を出す。ガードがボールを運べないときは自分が運ぶ。センターの調子が悪いときは自分がインサイドで体を張る。試合中は個人の出来にフォーカスせず、「チームがよければOK」と切り替える。「気分で変えたくないんです、自分を。常田監督に『自分の感情よりチームの感情に敏感になれ』という言葉をもらってから、いつも意識するようにしています」

関東大学新人戦準決勝の筑波大戦は、残り40秒、自らの3ポイントシュートでチームを逆転に導いたが、直後に元チームメートの坂本康成(1年、中部大第一)に3ポイントを決め返され、81-83で敗北。熱戦を終えた後、「試合が終わった瞬間は『あいつ(坂本)だるいな〜』って思いながら次の大会に切り替えようとしてたけど、今振り返ってみるとやっぱり悔しいですね」と穏やかな口調で話していた。

リベンジの舞台は、7月10日から開催される全日本大学バスケットボール新人戦。「今年は、これまでで一番成長する年になるんじゃないかなと思う。与えられたチャンスをしっかり生かして、どんどんチャレンジしたい」と話す小澤は、新人戦の敗北とワールドカップの経験を糧に、どのような成長を見せてくれるだろうか。

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