ウインターカップで活躍が期待される男子の注目選手
12月23~29日、バスケットボールの第75回全国高校選手権大会(SoftBank ウインターカップ 2022)が東京体育館と大田区総合体育館で開催される。インターハイよりも出場チーム枠が増加するトーナメント戦は、「真の高校日本一」を決する冬の大舞台である。前回大会の男子は、福岡大学附属大濠(福岡)が28大会ぶり3度目の優勝に輝いた。今大会の開幕に先立ち、男子の注目選手を紹介する。
背番号8を継承した「高校No.1PG」 福岡第一・轟琉維
今年、福岡第一(福岡)が誇る超高速バスケットの中心にいるのが轟琉維(とどろき・るい、3年)だ。168cmと小柄な司令塔は、その身長を補って余りあるスピード、テクニック、シュート力を駆使してコート上を支配。意表を突くノールックパスや相手のブロックショットを鮮やかにかわすダブルクラッチなど、随所に“魅せる”プレーも繰り出して会場の度肝を抜く。
現在、日本代表でも活躍する河村勇輝(現・横浜ビー・コルセアーズ)が背負った背番号8を継承した轟は、豊富な戦力を誇る今年の福岡第一においても頭一つ抜きん出た存在だ。「ぜひ先輩に続くような立派なガードに育ってほしい」と言葉を送る井手口孝コーチの期待に応えるよう、司令塔かつエースとして仲間を引っ張るその背中からは、今では貫禄さえ漂う。
入学3年目で初めて挑んだ今夏のインターハイでは、決勝で両チーム最多となる28得点をマーク。福岡第一を3年ぶりの全国制覇へ導いた。だが、目標はあくまで「インターハイとウインターカップの二冠」(轟)。現時点では轟が高校No.1ポイントガードであることに異論はない。昨年3位に終わったウインターカップでも頂点に立ち、その称号を守り抜けるか。
飛び級でU19日本代表入り 福岡大大濠・川島悠翔
前回大会で、28年ぶりにウインターカップ優勝を成し遂げた福岡大大濠(福岡)。当時1年生ながら立役者の1人となり、大会ベストファイブに選出されたのが川島悠翔(2年)だ。昨年の7月、川島は飛び級でU19日本代表に名を連ねて「FIBA U19バスケットボール ワールドカップ2021」に出場すると、今年はU16とU18日本代表でアジア(FIBA アジア選手権大会 )、U17カテゴリでは再びW杯(FIBA U17 ワールドカップ)の舞台を経験。U16アジア選手権では平均26.6点で得点王となり、大会MVPにも選ばれている。
すでに世界を股にかける逸材は、200cmの高さと優れた身体能力を武器に攻守で躍動。内外問わない豊富な得点パターンでスコアを重ね、リバウンド、ブロックショットでも存在感を発揮する。昨年のチームでは先輩たちの引き立て役に回る場面もあったが、今年はエースナンバー「14」を背負った。連覇がかかる今回のウインターカップは、昨年のパワーフォワードからスモールフォワードへ主戦場が移り、川島にとっても新たな挑戦となる大会だ。日本代表のエースではなく、“大濠のエース”としての真価が問われる。
米国仕込みのオールラウンダー 開志国際・介川アンソニー翔
昨年の春に開志国際へ加わった介川アンソニー翔(3年)は、すぐにエースの座を掴み、全国でも注目の的となった。もともとアメリカでプレーしていた彼は、197cmのサイズを誇り、跳躍力と走力が光る。さらに外からも狙えるオールラウンダーだ。なかでもアメリカ仕込みのダンクシュートは必見。たとえ目の前にディフェンスがいようとも、その上から豪快に叩き込んでチームに勢いを与える。
そんな高いポテンシャルを秘める介川だが、「去年から注目してもらってたんですけど、全く結果が出なくて……」と振り返るように、昨年はインターハイベスト16、ウインターカップでは初戦で姿を消した。リベンジに燃える今年、介川はウィークポイントであったフィジカルを強化し、体重は昨年よりも10kg以上増やして進化を遂げた。インターハイでは絶対的エースとしての役目を全うしたものの、ほんのわずかな差で準優勝。決勝後、「この悔しい思いを忘れないで、去年の分も含めて優勝したいです」と誓った介川は、2年分の悔しさを今回の大舞台にぶつけるつもりだ。
高い得点力誇る「もう一人の司令塔」 東海大諏訪・石口直
東海大諏訪には1年の時から先発ポイントガードを務める高山鈴琉(3年)がいるが、石口直(3年)もまた、注目すべき“もう1人の司令塔”だ。今年のチームの中心に立つ石口は、U16とU17日本代表でもキャプテンを任されるほど強いリーダーシップの持ち主だ。それだけにとどまらず、銀メダルを獲得した「FIBA U16 アジア選手権大会 2022」では全体2位となる平均5.2アシストを記録して大会ベストファイブに選出された。最大の持ち味は高確率の3点シュートであり、東海大諏訪ではシューティングガードを本職として高い得点力を発揮する。今年度から新設された「U18日清食品トップリーグ」でも合計7試合で30本の長距離砲を突き刺し、平均23.3得点で得点ランキング2位に入った。
今夏のインターハイではベスト16で大会を去った。しかしその後、石口は3×3に挑戦し、日本代表の一員として10月に開催された「FIBA 3×3 U17アジアカップ2022」で見事優勝を達成。今シーズンめきめきと頭角を現して一気にブレイクした石口の輝きは、ウインターカップでも日を追うごとに増すだろう。(文・小沼克年)