野球

エースが本領発揮、「怪物」も覚醒、東洋大が優勝へ突き進む

エース村上は3戦すべてに登板。5勝目を手にした

東都大学野球第4週

5月9、10、15日@神宮球場
1回戦 東洋大 2-3 立正大
2回戦 東洋大 4-1 立正大
3回戦 東洋大 2x-1 立正大

第3週まで勝ち点3を獲得し、優勝争いを独走中の東洋大。第4週は相性の悪い立正大と激突した。

エース村上が好投も、延長で敗戦

1回戦。今シーズン、エースとしてすでに4勝を挙げている村上頌樹(しょうき、3年、智弁学園)が先発のマウンドへ上がる。7回2失点と試合を作り、「みんないいですよ」と信頼を寄せるリリーフ陣に託す。勝負が決まったのは延長11回。開幕から好投を続けていた2番手の松澤海渡(かいと、1年、帝京)が、大学で最長となる4イニング目に入って立正打線につかまった。「イニング数と同じくらいフォアボールを出してしまう。そこが課題です」。11回に二つの四球で走者を得点圏に進めてしまったところで、マウンドをクローザーの河北将太(1年、浦和学院)に譲った。2死一、二塁で対峙するのは8番立松由宇(3年、藤代)。追い込んでからの3球目で勝負が決まった。「高さがダメでした。ストライクからボールにしようとしたのに、浮いた」。フォークを左前に落とされ、1点。これが決勝点となり、1回戦を落とした。

4年生で初先発の野木からの継投決まる

2回戦。ここまでリリーフ待機だった野木海翔(4年、九州国際大付)。杉本泰彦監督は試合後、この起用について「カードが始まったときから構想してました。イニング数も予定通りですよ」と、得意げに語った。大学初先発となった野木は任された3イニングを1失点でとどめ、役割を十分に果たした。その後はルーキーイヤーにリリーフとして活躍したが、近年は好結果が残せていなかった山下雅善(4年、東邦)が登板。この日は4回を投げて被安打0で無失点と、貫録の投球を披露。勝利投手となった。「今日は自分が勝ち投手って言っていいと思います」とご満悦だった。最後はエース村上が2イニングを締めた。3投手で被安打1という好投に応えるように、主将の佐藤都志也(4年、聖光学院)の2ランと山田知輝(4年、桐生第一)の2打席連続ソロ本塁打が飛び出し、4-1で勝った。

勝ち点をかけた3回戦。1回戦と同じく、村上が熱投を披露。今シーズンはこの試合までに4完投している鉄腕が141球を投げ、9回1失点で5勝目を手に入れた。打っては5回にルーキーながら全試合フル出場を果たしている松本渉(1年、龍谷大平安)が大学初打点をマーク。終盤で追いつかれたが、対駒大3回戦以降スタメンから外れていた津田翔希(4年、浦和学院)が一振りで起用に応えるサヨナラヒットで劇的勝利。この一打には打った本人も「チームに貢献できてよかった」と興奮気味に語り、仲間が待つバスへと向かった。

「芯食えばホームラン」の山田が3発

このカードで、ついに東洋大の「怪物」が覚醒した。山田だ。「芯を食えばホームラン」と杉本監督も舌を巻く。オープン戦では1番に座り、4本塁打をマークしてきた。4年前、東洋大野球部の門を叩いた当時はピッチャーだった。ピッチャーの出世番号である28を背負ったが、いい結果を残せなかった。そんなとき、当時の高橋昭雄監督が彼の打力のよさを見出し、野手へ転向。開花に時間こそかかったが、46年のキャリアを持つ名将の目に狂いはなかった。東洋大の強打者が背負ってきた背番号8。山田はその輝かしい歴史を塗り替える勢いだ。

「怪物」山田がついに覚醒した

立正大との3試合で3ホームラン。1発目が飛び出したのは1回戦、2点ビハインドで迎えた8回。一瞬でスタンドへ届いた打球に、神宮のお客さんは開いた口が塞がらなかった。「完璧な当たり」と語る第3号2ランが、試合を振り出しに戻す最高の一撃となった。打たれた立正大のキャッチャー立松も「あの当たりで入るんだから、パンチ力がけた違いです」と絶賛。一度勢いに乗ると、この男は止まらない。

2回戦は2本塁打でチームを支えた。1本目は6回。「うわっ」。球場が思わずどよめいた。3球目の直球を強振すると、オレンジのバットから伸びた打球がライトスタンドに突き刺さった。「打ったのはたぶんチェンジアップ。こっちは完璧でした」と、満足気に語った。続く8回にも怪物のバットが火を噴く。3球目の直球を叩くと、打球はぐんぐん伸び、そのままスタンドへ。「まっすぐでした。ほぼ完壁だけど、ちょっとだけ詰まり気味でした」。バックスクリーンに入る一発を放っても満足しない。怪物が目覚め、存在感をいかんなく発揮した立正大との戦いであった。