サーフィン

千葉商科大・市川貴大 世界で活躍し、サーフィンの魅力を伝えられるプロに

来年から本格的にプロとして活動する市川(C)JPSA

千葉商科大の市川貴大(4年、柏井)は、今年7月にプロサーファーになった。世界のトッププロを目指し、来年から本格的にプロ活動を始めようとしている。

野球少年が父に誘われ、サーフィンの世界に

市川は小学生のころから野球をしていたが、高1のときに「何となく先が見えた」という理由でやめた。市川の父はサーフィン歴25年。子どものころから家族で海に出かける機会が多く、そのたびにサーフボードに乗る父を目にしてきた。野球から離れた市川は父から誘われ、高1の冬にサーフィンを始めた。

かつてピッチャーだった市川は言う。「野球は自分が頑張ってるのに試合に勝てないこともあって、サーフィンはそれがないので『楽だな』と思いました」。そんな側面にもサーフィンの魅力を感じ、どんどん没頭していった。

自分がやっただけ返ってくる。市川はサーフィンの魅力にはまった(撮影・マンティー・チダ)

サーフィンは使う板でショートボード、ロングボードの2種目に分かれる。父はロングボードの選手で、自宅にはロングしかなかったが、市川自身は「持ち運びが便利」という理由でショートから始めることにした。ただショートボードは短くて浮かない、たくさん漕がないと波に乗れないという難しさもあった。市川はほどなくして父と同じロングへ転向した。

ロングボードに乗り始めてから半年後、市川は父とともに試合へ出場した。「サーフィンを始めてから父親が出場する大会に同行してたんですけど、自分が出ないのでヒマでした。それじゃ、次は出ようかなと」。父とさまざまな情報をかき集めては、週末にふたりで海へ出かけるのがルーティンになった。

進退をかけて臨んだトライアルで、晴れてプロに

大学進学の際、高校の先生から「ここが一番向いてるんじゃないか?」と千葉商科大を勧められた。「豊かな自然に自由な感じで、自分でいろんなことを決められる」。そんな雰囲気が気に入り、サービス創造学部に進学した。「家から近くて自分が学びたいことが見えると思いました。いまは、おぼろげに見えてきました」

市川は大学に通いながら、プロサーファーになるためのチャレンジを始めた。昨年10月のアマチュア最高峰の大会「12th All Japan Surfing Grand Champion Games 2018」では、ロングボードメンズオープンクラスで初優勝を飾った。しかし、プロになるためには、プロトライアルを通過して本戦のR1を勝ち上がる必要があった。

「ここでダメならサーフィンを辞める」と挑んだ大会で勝ち上がった(C)JPSA

今年はJPSA(日本プロサーフィン連盟)主催のプロトライアルへの出場を続けた。第3戦までは惜しいところまで進んでいたが、プロへの切符を逃していた。「これで無理だったらサーフィンをやめようかと考えてました」。進退をかけて臨んだ第4戦で、プロトライアルから本戦出場を果たしてR1も通過、晴れてプロサーファーになった。

「俺の波だ」一瞬でとらえて技を決める

サーフィンでは、目の前にやってくる波をどうとらえるかが大事になる。「適応力が求められます。『俺の波だ』と感じたときは漕ぎます。波を見た瞬間に技を決める自信はあります」。市川は「自分の波」について「サイズよりもパワーで来る波」と表現する。「波を見て怖いとは思わない。パワーがある波だと板が走るし、楽しいのでテンション上がります」

得意技はボードの先端に立つ「ノーズライディング」だ。「ノーズライディングができないと大会で勝てないことが分かりました。こればかりを練習したことで、苦手なことが得意になりました。最近はもともと得意だったマニューバの練習をやってます。それぞれステップアップできるように取り組んでいます」

来年の目標は「ルーキープロで1番」

来年からはプロサーファーとして活動する。「海外の方が環境はいいし、波も強いですから。日本は場所にもよりますが、波の力が弱いです」と海外へのあこがれを口にする一方で、自分自身の足場を固めの意味合いも強調した。「現在スポンサーをしてもらっているショップ(99BASE)に就職して貯金していきたい」。市川が現実的な目標を口にするのには理由がある。海外の試合に出場しようと思えば資金と時間が必要で、日本で実績を残しながら足場を固めないといけない。ある程度のスポンサードがないと、サーフィンに専念する環境はつくれない。

スポンサードを得られないとなかなか競技に専念することは難しい(撮影・マンティー・チダ)

プロとしてまず「ルーキープロで1番」を目指す。「将来的に日本代表となるためには、来年ルーキーで1番になって実績を積むのが大事です。日本でトップの実績を残して初めて海外の大会に出られます。さらに海外でも予選があって、最後のチャンピオンシップで勝てば、その年のチャンピオンです。おそらく1、2年では無理だと思ってます。5年ぐらいはかかるかなと」。自分の現在地を、こうとらえている。

もっと、サーフィンの魅力を広げたい

最後に、プロサーファーとしての最終的な目標を聞いてみた。「試合に勝つことよりも、サーフィンの魅力を広げることが重要だと考えてます。プロである以上、サーフィンのイメージを壊さないように、板をはじめとして道具を大切にし、いい方向に持って行かないといけないのかなと。知識を広めたり、サーフィンを教えたり、普及活動が大事だと思います」。一方でこうも言った。「活躍できれば、おのずと魅力が広まっていくと思ってます。自分が活動しているところをみんなが見てくれていると思うので」。いい結果をだすことが、最終的な目標への近道でもある。

「来年は大事ですね。気合いは入ってます。世界戦にも出てみたいし、海外のトップ選手と戦えれば自分のレベルも上がると思います。海外の選手は見ているだけでもレベルの違いが分かるので、高いレベルでやりたい。来年は最低でもルーキートップを取れるぐらいの勢いで取り組まないと、自分が思ってるステップは踏めないでしょうね」

ルーキーで1番に。それがないと本当のトップにはいけない(C)JPSA

コミュニケーションをしっかりとれるように、市川は英会話にも力を入れている。「卒業までの単位は足りてますが、大学で英会話の授業を受けています。海外遠征するためには必要なので」。あくまで先を見すえて、いまできることに取り組んでいる。

市川のチャレンジは始まったばかりだ。