箱根駅伝区間エントリー発表! 東海、青学、東洋……各大学の監督の思惑とは
12月29日、東京・新宿で第96回箱根駅伝の監督会議があり、区間エントリーが発表された。当日変更は最大4名まで可能とはいえ、ここである程度各大学の戦術・思惑が判明。エントリー発表直後の監督の思いを聞いた。
東海大・両角監督「2連覇、3連覇の自信ある」
前回、初の総合優勝した東海大の両角速監督は、2連覇の自信はありますかとの問いに、間髪入れず「あります」と返した。そして「2連覇したら3連覇もあるんじゃないかと思ってるんで。おそらく来年も今年に匹敵するぐらいの戦力を整えられる自信はありますんで、3連覇が目指せるように頑張りたいです」と言いきった。
昨年8区で区間新記録を出し、大会のMVPに輝いた小松陽平(4年、東海大四)を続けて8区に置いた。初優勝のゴールテープを切った郡司陽大(4年、那須拓陽)も同じく10区に配置。「スピードスター」鬼塚翔太(4年、大牟田)も続けて1区に。2区には初出場となる塩澤稀夕(3年、伊賀白鵬)を据えた。山登りの5区は前回区間2位の西田壮志(3年、九州学院)。主将の館澤亨次(4年、埼玉栄)、11月の全日本大学選手権のアンカーで逆転優勝をもたらした名取燎太(3年、佐久長聖)は補欠に回った。
トップで復路に入ることは考えていないという両角監督。復路逆転のメドについて、「70秒差以内なら」と語った。逆転を思い描く区間について尋ねられ、これも即答で「10区です」と返した。「ドラマチックでしょ。視聴率に貢献します。最後まで目が離せない! ハハハハ」とご機嫌だった。
青学・原監督「“やっぱり指数”は80から90」
「隠し玉も入れて予定通りにできた」という原晋監督。しかし、2区にエントリーした岸本大紀(1年、三条)にアクシデントがあったことを明かした。12月21日にポイント練習をした際に左足の小指横に痛みがあり、23日までノーランニングだったという。「エントリーをどうするかというところを悩みました。権田坂を上って下ってというところまではいくんですけど、最後のバイパスにはいってからの3kmに多少の不安はあります。でも彼は1年間トレーニングを積んできたので、1年生ですから、逆に疲労が抜けて、いまのところは自信を持ってスタートラインに立たせることができると私は思ってます」。原監督の岸本への評価は高く、16年監督を務めてきた経験を振り返っても「歴代で一番」と評した。
5区は前回、前々回と走った竹石尚人(4年、鶴崎工)がエントリーメンバーから外れ、今年は飯田貴之(2年、八千代松陰)を入れた。不安材料だったというが「あえて12月10日の時点で竹石を外すことで、ほかのメンバーが一つになってワンチームでやってくれる。山に対しては不安はない。竹石並みに走るでしょう。ただ、トータルでいえば多少落ちるので、それをみんなで1人数秒ずつカバーしていければ」と、チームでの戦いを強調した。
エースの吉田圭太(3年、世羅)を補欠に回していることについては、岸本のアクシデントもあったので作戦上のリザーブだという。「本人は絶好調です」と念を押した。往路の順位目標を問われると「本当にどこが勝つかわからない。対○○大学との差がいくらっていう形に、個別の対応になってくる。國學院大さん、東洋大さんは往路優勝を狙ってますけど、この2校だと、国学院大さんだと2分以内だと復路での逆転はあると思う。東洋大さんでいえば、1分以内。東海大さんに勝とうと思ったら、やはりリードして往路を終えたい。仮に負けたとしても30秒以内で復路へ。あと、駒沢大学さんには……、勝ちます」。先日の壮行会・事前取材の際には戦略への言及はなかったが、ここで具体的な数字を口にした。
今回の作戦名「やっぱり大作戦」にかけて、現在の「やっぱり指数」を問われた原監督。「これが上がってきましたね、85から90に上がってきました。きょうの練習を見ても、何ら不安なく指数は上がってますね。スタート前に100にきて、往路を終えて150、復路ゴールでは、やっぱり指数500パーセント! 昨年のゴー! に対するリベンジ。あんまりおもしろくないな……(苦笑)」。どこまでもサービス精神旺盛な原監督。「やっぱり青学」と言えるようリベンジはなるか。
東洋大・酒井監督「往路は隠さずに」
東洋大は過去2大会連続で1区の区間賞をとっている西山和弥(3年、東農大二)を、今回も1区に配置し、大エースでキャプテンの相澤晃(4年、学法石川)を2区に置いた。酒井俊幸監督は「チームの序盤の流れを握ってほしいと思って、彼を2区に置きました。チームとは別メニューで練習してきてて、『箱根から世界へ』を体現するために、ここで服部勇馬(東洋大~トヨタ自動車)超えをして、パリオリンピックではマラソン代表を狙ってほしいという思いがあります。留学生にも勝って、彼の言葉を借りると「記憶にも記録にも残るような走り」をしてほしいですね」と語った。
西山は出雲、全日本と本来の走りではなかったが、いまは地道なトレーニングで状態は上がってきているという。「この時期になってくると誰がどこを走る、というのがだんだんチーム内の雰囲気でできてくるんですが、やはり『1区は彼しかいないだろう』という雰囲気ができてきました。集団の中で揺さぶりをかける走りをしてほしいです」と、期待を寄せる。
5区は昨年走った田中龍誠(3年、遊学館)ではなく、宮下隼人(2年、富士河口湖)がエントリーされた。「宮下は5区にあこがれて入学してきた選手です。今大会は5区に力のある選手が多数エントリーしてくると思ってて、その中で彼にはいい意味で相澤よりも目立ってほしい、という思いもあります。クロカンの適性もあり、練習自体は田中よりもできているので、彼の伸び率に期待して起用しました」
「今回は往路は隠さずに、相澤がいるうちに正攻法でいこうと。復路はいまのところ1年生を多くエントリーしていて、上級生がリザーブに回ってます。彼らにも期待してます。東海大学さんのことを考えると、去年以上のリードを持って往路のゴールにいかなければと考えてます。あとは東京国際大学の留学生がどこに入るのか。1区に入れて一緒に高速レースに持っていってほしいなって思いますけどね(笑)。あとは國學院さんも、着実に選手をそろえてきてます。まずは往路を楽しみに迎えたいです」と、さわやかな笑顔を見せた。
東国大・大志田監督「シード権は最高で最低の目標」
エントリーメンバーに入っている留学生2人を、この段階ではどこに配置するか明かしていない東京国際大。大志田秀次監督はイェゴン・ヴィンセント(1年)の配置について問われると、「ルカ(ジョン・ルカ・ムセンビ」も上がってきてますから、まずどちらの起用にするかですね」と口にした。
「ルカは駅伝に思い入れがかなりあって、この間、仙台育英が優勝したということもあって『使ってくれ!』という思いをすごく感じます。留学生をどこに置くかについては、1区で引き離して伊藤につなぐパターンと、1区で出遅れても2区伊藤で追いつき、3区留学生で上がるというパターンも考えられるので、どちらにするかというところですね。全体の流れをまだ少し悩んでいます。うちの選手がうちらしく、思いっきり走れるようにしてあげたい」
シード権ゲットは最低で最高の目標だという大志田監督。「三大駅伝をプレゼントする、というのがいまの4年生との約束なので、シード権を取って来年以降、強いチームづくりにつなげていきたいなと思います」。オーダーはほぼ、どうしたいかというのは決まっているというが、あとは選手の顔色も見ながら最終的に決めるという。「こんなに注目していただいて、ありがとうございます」と、例年とは違う注目度に、報道陣に感謝の言葉も述べた。