アメフト

特集:第73回ライスボウル

関学が富士通に14-38で敗戦、鳥内秀晃監督のラストゲーム飾れず

第2クオーター、関学のRB三宅が独走タッチダウン(撮影・安本夏望)

アメフト日本選手権・第73回ライスボウル

1月3日@東京ドーム
関西学院大(学生)14-38 富士通(社会人Xリーグ)

アメフトの日本一を決めるライスボウルがあり、学生代表の関西学院大が14-38で社会人Xリーグ代表の富士通に敗れた。これで学生側の11連敗となった。鳥内秀晃監督(61)のラストゲームを飾れなかった。

富士通のRBグラントを封じることはできなかった(撮影・北川直樹)

関学は相手のRBサマジー・グラントのランが止められず、要所でパスも通され、先に21点を奪われた。ようやく第2クオーター(Q)11分すぎ、関学はRB三宅昂輝(3年、関西学院)が64ydの独走タッチダウン(TD)を決めて7-28で試合を折り返した。第4Q1分すぎ、富士通に五つ目のTDを奪われ、7-38に。ようやくチャンスを得たのは第4Q終盤。RBへのパスを軸に攻め、試合残り38秒にQB奥野耕世(3年、関西学院)からWR鈴木海斗(3年、横浜南陵)へ4ydのTDパスが決まった。直後のオンサイドキックが成功し、攻撃権は再び関学に。ここからゴール前1ydまで進んだが、TDには至らなかった。試合後、テレビのインタビューに応じた鳥内監督の目は潤んでいた。そのあと選手たちを前に話し、「いままでありがとう」で締めた。監督に対する報道陣の囲み取材の一部始終は以下の通り。

試合後、選手に語りかける鳥内監督(撮影・安本夏望)

こっちがミスしてたら勝てんわな

(報道陣を見渡して)主役は学生やで。

――知ってます。試合を振り返ってもらえますか?

こっちがな、ミスとか反則してたらあかんわな。やっぱりパスいかれたんも、アジャストミスやねんな。ああいうところをちゃんとやらんと勝負でけへん。

――向こうのRBに対してはどうでしたか?

ええときもあんねんけど、やっぱりなあ、やられとったなあ。飛び込んでいったら、ああなってしまうからね。

――最後のプレー、タッチダウンほしかったですね。

そやね。まあしゃあないな。

第4クオーター、タッチダウンパスを受けたWR鈴木(撮影・安本夏望)

――いいとこでミスが出てしまうのはどういう原因なんですか?

やっぱり、俺の教育不足かな。それは。防げるからな。それを徹底してできてへんかったいうのは失敗やな。

――相手への過剰なリスペクトというか、過剰な警戒からそういうことになってるんですか?

まあ経験値がモノを言う思うけどね、それは。ディフェンスの作戦自体、ちょっと複雑化しすぎとったかも分かれへんね。これは。若い子にとってはパニック状態なる可能性あるんでね。それはちょっとどうかなというのは、反省としてあるけどね。

――この試合自体に異議を唱えられたこともありましたけど、いま現在はどうですか?

やっぱり学生も体力的にしんどいしね、我々も故障者だらけで、まあ授業も忙しいし、なかなかしんどいですよ、現実問題としてね。

教え子である有馬隼人氏からテレビのインタビューを受ける鳥内監督(撮影・安本夏望)

最終戦に感じるところ「ちょっとだけな」

――さっきテレビのインタビューのときに目が潤んでるように見えたんですけど、今日はさすがに感じるところがありましたか?

ちょっとだけな。

 ――最後に負けたら一生面白くないという発言もありましたが。

一生おもんないねん。ほんまに。負けて帰ったら。

――それが何かのモチベーションになったりするんですか?

もうええねん、ちょっと休憩や。

――さっき学生のハドルで「俺も手伝えることがあったらやる」という話をされましたが、あれは何を意味するんですか?

毎日は行けへんけどな、何か話してほしい言うんやったらしたるしやな、ただそれだけや。もう現場は関われへんで。個人個人で話をしてくれ言うんやったらするけど。まあ、できることだけやるだけや。あんまり関わってたらあかんねん。そやから。いらんことせん方がええねん。

戦況を見つめる鳥内監督(撮影・北川直樹)

次のこと考えんでええのは楽やで

――テレビのインタビューで、「この試合が終わって次のことを何も考えんでいいのは楽や」という話をされてましたが、そういうもんですか?

そら楽やで、そら。そら、楽やで。

――その分で何するんですか?

ほっといてえな、そんなん。

――試合のことですが、若い選手が結構頑張ってたなと思うんですが。

まあ、おるからな。それなりに。だけどここまで来たら、ディフェンスもようさんけが人ばっかりやねん。肩外れかけてるんばっかしやねん。

――DBがちょっとしんどかったですね?

しんどいな。もともとしんどいけどな。

タックルを決める繁治(40番)と大竹(51番、撮影・安本夏望)

点差開かんかったのは、向こうがメンバー落としたから

――去年より点差は縮まりましたけど、それは成長ととらえていいんですか?

ちゃうちゃう。向こうがだいぶメンバー落としたからや。

――最後まであきらめるな、といつもおっしゃってて、最後はまさにそういう試合展開でしたね。

最後の1プレーでな、とりたかったな。ちょっと甘かったな、あれな。

――パントのスペシャルプレーが決まった次のプレーで交代違反があって、あれは痛かったですね。

痛いねん。いらんことばっかりしとんねん。なんかな。そんなことしとったら、勝負できひんわな。我々は。

――今シーズンは4年生が厳しいということをおっしゃってきましたけど、よくここまで来ましたよね。

それは4年生じゃなしに、下級生のおかげちゃう? 下級生がよう我慢してやってくれたんちゃう? まあ4年もそれなりに変わっていったけどな。遅いわな、ちょっとな。

――終わった瞬間の感情は「もっとできたのに」という悔いなのか、やりきった感じなんですか?

 やりきった感じはないねんけどね、もうちょいできんねんけど、毎回毎回そやけど。そういう反則、ミスが起こるいうのは、まだまだ練習で甘いねんな。我々がね。

――最後まで反省の方が先に立ってるんですか?

そやで。

関学の監督、コーチ陣で記念撮影。鳥内監督の右が次期監督就任が確実視される大村アシスタントヘッドコーチ(撮影・北川直樹)

やっと終わったわ

――改めて最後の試合を終えての率直な感想を教えてください。

やっと終わった、だけ。はあ~、やで。

――もっとやりたいというのはないですか?

ちょっとしんどいねん。分かる? しんどいで、これ。ほんま。

――28年長かったですか?

終わったら早いで。終わったら早いねん、もう。

――昨日までは長いと思ってたんですか?

いや、もう1日だけやと思うやん。終わったらもう、早いで。ああー、やっと終わった、や。

――昨日は学生にどんな話をしたんですか?

4年に? ちょっと言われへんな。

――次のファイターズに何か伝えるとしたら。

永遠にこのチームは期待されるチームやからね。ファンも多いし。ファンの期待に応えられるようにやってほしいな。「なーんや」言われるチームになったらあかんし。そういう注目されとってやれるいうのは、一番自分も伸びるチャンスあんねんね。個人個人で。非常にやりがいあるチームにおんねんけどね。だから上を目指してみんながやっていけば、ちゃんと機能すんのちゃうかなと思うけどね。

――ある意味、重圧と闘ってきた28年ですか?

学生に重圧を与えるのとは違ってね、上の責任者が重圧を受けといたらええと思うけどね。プレッシャーを。それはしゃあないわな。

マスコミのひとことに傷つくねん

――そのプレッシャーから解放される安堵感もあるわけですか?

そうそう。思ってへんこと書きよるからな、マスコミは。そのちょっとしたひとことが、ほんまに傷つくねん。ウソやで。以上! ええやん、負けてんねんから。ほっといてえな。

――監督自身は監督生活をやりきったという感じですか?

やりきったいうよりもな、そんなん言うとったらやめられへんねん。そやろ? 100まで生きひんねんから。バトンタッチしてやってもらわな困るわ。それだけや。はい。

――おつかれさまでした。ありがとうございました。