大学陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

明治大、古豪復活の総合6位 5年ぶりシード獲得の裏にルーキーあり

1年生の加藤は花の2区で箱根デビューを果たした

第96回箱根駅伝

1月2、3日@大手町~箱根の10区間217.1km
6位 明治大 10時間54分46秒

悪夢の箱根不出場から2年。明治大が古豪復活の第一歩を踏み出した。阿部弘輝(4年、学法石川)を主将とし出発した今年度。関東インカレの2部降格に始まり、エース兼主将の阿部が故障により離脱、さらに4年生の不調、そして秋以降の連戦。多くの壁にぶち当たりながらも、下級生を中心に前へ前へと進んできた。「自分たちがやってやるんだという雰囲気」がでてきたと、山本佑樹駅伝監督は語る。学年は関係ない。チームのためにおのおのがやるべきことをやる。“新・自主性”ともいえるその形は、ルーキーたちにもしっかりと刻まれていた。

花の2区でも気にしない「どの区間でもやってやる」精神

「最後は結果を出して卒業してほしい」。監督が阿部に託した最後の思いだ。そのためには「往路を阿部なしで戦う」という大きな課題があった。スターターに小袖英人(3年、八戸学院光星)、山は適性のある鈴木聖人(2年、水城)。その中で明大にとって最大の難所はエースが集う花の2区を誰が走るか。白羽の矢が立った選手こそが加藤大誠(1年、鹿児島実)だった。

「正直、めちゃくちゃ驚きました。でもやるしかない」と加藤。10kmすぎ、後ろから追い上げてきた東京国際大の伊藤達彦(4年、浜松商)と東洋大の相澤晃(4年、学法石川)に抜かれる。「ただ抜かされるのではなく、勢いをつけてもらってから離れろ」と山本駅伝監督からの指示。抜かれてもただではやられない、気持ちの強さはピカイチだ。ラストは得意のスパートで締めくくった。

1時間7分52秒の記録は日本人1年生歴代2位。明大の中で見ても、2011年の鎧坂哲哉(現・旭化成)に続く歴代2位の大記録だ。それでも加藤は「青学大の岸本大紀(1年、三条)に負けたのが本当に悔しい」と満足はしていない。走るからには誰にも負けたくない。来年度こそはもっと強くなってやる。現状に満足せず常に上を目指し続けるその姿勢は、未来のエースになることを感じさせた。

初めての紫紺の襷は憧れの先輩から

平塚中継所、8区を任された櫛田佳希(1年、学法石川)は両手を大きく振り回した。右手を突き上げ駆け込んできたのは、1時間1分40秒の区間新記録をたたき出した阿部。同じ学校法人石川高校出身で、その背中を追って明大へ。憧れの先輩から襷(たすき)をつなぎ「阿部さんからもらった順位だけは動かしたくない」。期待と緊張の中、櫛田の初めての箱根は始まった。

阿部から襷を受け取り、8区で好走を見せた櫛田

茅ヶ崎のポイントではまさかの区間19位。「抑えていけという言葉を取り過ぎてしまった」とかなりのスロースタートとなった。しかし、そこから意地を見せる。徐々にペースアップをすると、終盤の難所・遊行寺の坂でスパート。得意の上りで勢いに乗った櫛田は、区間8位で襷をつないだ。

「持てる力を出し切った」と、初めての箱根を走り切った櫛田。次の目標は区間5番以内の走りでトップ選手に追いつくこと。高望みはしない、一段一段着実に。いつかエースになるその日まで、憧れの背中をずっと追いかける。

好走を支えた仲間への思い

2人の好走の裏に、かなわなかった思いがある。エントリー16人に4人が食い込んだ1年生。山本駅伝監督からも「図太いメンタルの持ち主」と言われる選手たちは、果敢に下から突き上げてきた。櫛田を中心に立てた「自分たちが箱根を盛り上げよう」という目標もその一つ。4年生の最後の大舞台に向けて、この1年生4人を中心に士気を高めてきた。

しかし箱根直前。「どの区間でもオールマイティーにいける」と監督からも期待されていた小澤大輝(1年、韮山)に疲労骨折が見つかった。杉本龍陽(1年、札幌日大)も出場には一歩届かず6区のサポートへと回った。「自分が不甲斐ない走りはできない」と櫛田。走れず悔しい気持ちはきっと10人の選手以外の全員が抱えている。「最後は笑顔で終わるために」。チームの思いに2人は全力の走りで応えた。

「自分たちが4年生のときに優勝したいんです」。春の取材で小澤はそう言っていた。チームの誰もが少し遠く感じていたであろう“優勝”の2文字。あのときはまだ夢の話と片付けられていたかもしれない。しかし今、その目標は現実味を帯びている。

「100点以上の結果」に終わった今回の箱根は、きっとそのスタートラインに違いない。先頭で風を切り、颯爽と走る選手。その胸にはMのマーク、そして肩には紫紺の襷が輝く。そんな日は、もう遠くない。