北見工業大女子、キャリア2年の4人で北海道選手権準V
北見工業大学(北海道北見市)のカーリング部は2005年の創部で、2019-20年シーズンは50人超の部員を抱える大所帯。北日本を中心に、全国で10チームあまり活動している大学のカーリング競技団体でも最大規模だ。
OBには平昌オリンピックの男子代表である軽井沢クラブに所属していた平田洸介(KiT CURLING CLUB/アイエンター)がいるが、第37回全農日本選手権本戦(2月8~16日、長野・軽井沢アイスパーク)にも、男子の大谷拡夢(チーム東京)、鎌田優斗(宮城CA)、野々村優介(岡山CA)ら、卒業後に全国に散らばった北見工大ブランドのカーラーが目立った。
今年の日本選手権本戦には男女それぞれ9チームが出場。最後の1枠は、日本選手権出場枠(ワイルドカード゙)選考会勝利者に与えられるが、その選考会に北見工大の女子が北海道選手権の準優勝チームとして参戦した。
経験値低くても、どのチームよりも練習
リードが島田萌々香 セカンドに斉藤茉奈美、サードが上林紗梨、スキップに斉藤の双子の妹である茉由美、フィフスが加藤真歩という陣容の新4年生のチームだ。この5人に彼女らをサポートした宮川陽莉を加えた6人の同級生は、競技を始めたのが1年生の冬だ。全員のキャリアが2年あまりで北海道選手権準優勝というのは、極めて珍しいだろう。
「もともと運動能力の高いメンバーだとは思いますが、どのチームよりも練習してましたから」。そう語るのは、6人と同期の男子で、2016年リレハンメルユースオリンピックの日本代表となり、その実績を買われて男子のトップチームであるコンサドーレに加入した相田晃輔だ。現在も北見工大生としてカーリング部に所属しながら、日本代表として活動している。相田はこうも言った。
「チームは今シーズン、ほどんど毎週、週5日は大学のそばにある河西建設さんのカーリングホールか、大会が近づいてくるとアドヴィックス常呂カーリングホールまで通って、本当にストイックにアイスに乗ってました。小林(博文)コーチの指導との相性もよくて、急激に上達したんだと思います」
全国4位の面積を誇る北見市でも、キャンパスのある北見市街と常呂は40kmほど離れている。1台の車に乗り合わせて移動し、時間の許す限り、国内でもっとも質のいいと言われる常呂のアイスでトレーニングを積んだ。
教わったことを素直に実行、自分で考えて上達
小林コーチは、北海道銀行フォルティウスのスキップである吉村紗也香をはじめ、多くの優れた選手を育成してきた名伯楽。ワイルドカード出場決定戦まで進出できた要因について尋ねると、「本人たちの努力に尽きる」と言って、目を細めた。
「最初はカーリング体験に来た初心者に教えるのと同じところからスタートしました。上達の度合いもバラバラで、コーチとして苦労がなかったとは言いませんが、とにかく教えられたことを素直に実行してましたね。その上で、ある程度できるようになったら、もっと上手くなるために質問をしてくる。しっかり自分の頭で考えることができるのも、上達の要因だったと思います」
一方で小林コーチは「どうしても経験不足は否めない」とも。ショットの種類やその精度、戦術の幅など、後手に回ることは多く、ワイルドカード決定戦では惜しくも敗れる。本戦出場には届かなかった。「アイスの読み、ウェイトジャッジなど、とくにゲームの入りに課題が残った。もっと練習して、来年またこの舞台に戻ってきたいです」。涙をふきながら、スキップの斎藤茉由美は来シーズンへの巻き返しを誓った。4年生になると研究や卒業論文、就職活動で忙しくなるが、時間を有効に使ってトレーニングを積む決意だ。
幸い、北見工大は工学部の桝井文人准教授らが開発したデータを活用した戦略支援アプリ「iCE(アイス)」があり、スピードや氷への圧力データを収集し、分析したスイープ力測定など、工学、情報学の見地からさまざまな研究が進んでいる。「文」と「武」が直結しているのは大きなアドバンテージだろう。
「リケジョ軍団」の卒業後は未定
来シーズンの日本選手権は引き続き22年北京オリンピックの国内選考会であると同時に、史上初の首都圏開催(KOSE新横浜スケートセンター)が実現した。さらなる注目を集めることになるだろう。
キャリア3年目を迎える北見工大の「リケジョ軍団」は、来年には卒業を迎える。社会に出てからもカーリングを続けるかどうかは未定だ。カーリング界の現状では、部のある実業団に入るか、職を得て可能な範囲で競技をするか、いずれにしても企業の理解やサポートは不可欠だ。
「まだどうなるかは分かりませんが、カーリングを続けるなら、やっぱり日本選手権に戻ってくれば可能性も出てくると思います。1年間、また頑張ります」
斎藤茉由美はそう言って大会を去った。