先輩の背中を追い、キャッチャーとして大学で急成長 上武大・古川裕大
新型コロナウイルスの感染拡大で、大学野球の春のリーグ戦は全国的に開幕が遅れています。晴れ舞台を待ちわびる選手たちの中から、この秋のドラフト候補を紹介します。3月の中旬に取材に訪れた上武大学硬式野球部の練習で、古川裕大(福岡・久留米商)は選手たちに向かってホワイトボードを示し、指示を出していました。
キャプテンになって変わった
強肩強打の捕手としてプロの注目を集める古川は最高学年となった今年、チームのキャプテンを任されている。同学年のマネージャーである和佐田一樹は「もともと前に出る性格ではなかったんですけど、キャプテンになって率先して動くようになりましたね」と、古川の変化を語る。
谷口英規監督も「去年から大きく成長しました」と話す。「自覚というのか、本人の中で『プロに行きたい』という意識が強くなっていると感じます。2月のキャンプでは朝、夜と自主的に欠かさず練習してました。大学ジャパンに入ったのも大きな刺激になってますよ。1学年上のキャッチャーは3人がプロに進みましたからね」
2018年12月、当時2年生だった古川は松山市内で開かれた大学日本代表候補合宿に参加した。「自分の足りない部分が見えてきて、まだまだ努力しなければ、と感じました。野球に対する意識はそこから変わったと思います」と振り返る。
このとき、同じ捕手には東海大の海野隆司(現ソフトバンク)、東洋大の佐藤都志也(現ロッテ)、慶應義塾大の郡司裕也(現・中日)と、のちにプロ入りするメンバーがそろっていた。「海野さんはキャッチング、スローイングと両方すごくて、都志也さんも肩が強くてバッティングもいい。立教の藤野隼大さん(現Honda)もいたので、レベルの高さを感じました。自分自身はいい結果が出せず、悔しい思い出があります」
大学ジャパンの合宿で偉大な先輩たちに学んだ
そんな環境の中、古川はどん欲に先輩に教わった。スローイングに定評のある海野からは投げるときのポイントについて助言を受けた。「海野さんからは足の使い方を教わりました。足から動くイメージですね。もともと、その意識は持ってたんですが、上体を早く動かそうとして体が突っ込んでたんです。ちょうどボールの素早い握り替えも意識していたところだったので、上に下を合わせるイメージで修正しました。二塁送球のタイムは1秒8台前半と、以前よりも速くなりましたね。候補合宿ではアピールも必要でしたけど、学びの点で大きな収穫でした」
入学当初の古川について谷口監督は「キャッチャーとしてのノウハウがない状態でした」と表現した。2学年上の正捕手だった吉田高彰(現セガサミー)の背中を追いかけ、キャッチャーとして着々とレベルアップを重ねた。とくにスローイングはもともと体の回転が横振りだったものを、縦振りに修正。送球がブレなくなり、安定した。
3年生から体幹トレとランニング
一方、打撃の面では昨秋、関甲新学生1部のリーグ戦で首位打者となった。3年生の春、秋と安定した結果を残せた。その要因について本人はこう語る。「2年生のときは主にDHでずっと出てたんですが、後半に調子が落ちて、いい結果を出せなかった。その反省を踏まえて、3年生になってからは体のキレやバランス、軸を意識するようになりましたね。リーグ戦期間中も継続して、体幹トレーニングやランニングに取り組みました。それがいい結果につながったと思います。技術的には低めのボールを見極められるようになって、いろんなボールに対応できるようになったのが大きいです」
現状の課題については「バッティングでもうワンランク上を目指すのはもちろんですが、まずは守備力強化です」と話す。「リード面ではピッチャーのいいところを引き出すのは当然として、バッターや周りを見て状況判断をすること。その点はまだまだです。キャッチングではボールにミットをかぶせてしまう癖がまだ直ってないので、そこを意識してます」
プロに進むために福岡からやってきた
新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期された関甲新学生の春季リーグ戦は、5月の理事会で開幕時期について改めて話し合うことになっている。
3月中旬の時点で古川は「春のリーグ戦が勝負」と意気込んでいた。「大学を卒業したらプロにいきたい、と思って上武大に入りました。この4年間が勝負だと思って取り組んできましたし、4年の春のリーグ戦次第だなと感じます。チームとしては昨年悔しい思いをしたので、全勝優勝。そして大学日本一。個人では打率4割でホームランは3本以上。10打点以上が目標です。この数字がクリアできれば、いい結果がついてくると思います」
大学ジャパンでともにプレーした先輩たちの辿(たど)った道を進むべく、古川はただ前を向いている。