フィギュアスケート

東洋大フィギュアスケート部主将・菅原生成 4年間の集大成を華々しく飾るために

苦難を乗り越え、さらなる高みへ挑戦する菅原

年に一度の学生のための祭典、第93回日本学生氷上選手権(以下、インカレ)の中止が発表された。「僕の中でインカレは、独特な雰囲気のある、ある意味一番スケートを楽しめるお祭りみたいな大会でした」。氷上の舞台を懐かしむようにそうこぼしたのは、東洋大学フィギュアスケート部の主将、菅原生成(きなり、4年、開志学園)。「今年でフィギュアスケートは一区切りにしようと思っている」と話す菅原には、今回のインカレにはどうしても譲れない思いがあった。

感情をむき出しにできる舞台

「スケートをしている皆のあこがれの舞台で大半の4年生の引退の舞台でもあるので、そこには笑いがあったり涙があったりと、それぞれの感情が最も出るような最初で最後の大会であるような気もします」。インカレの印象についてそうつづった菅原。東洋大に入学してからこれまで3年間、一度も欠くことなくインカレに出場していた菅原にとっては、大学日本一を決める大会であると同時に、感情をむき出しにできる舞台でもあったのだという。

そんなインカレの初出場の1年目は、「自分のことでいっぱいいっぱいだった」と振り返る。とにかく調子が悪かったという1年目のシーズン。1年の集大成としては満足のいく演技となったもののメンタル面で振るわず、良くも悪くも鮮烈にインカレという舞台の重みを感じることとなった。

そんな気持ちが動いたのは2年目のインカレだった。「とにかく楽しかった! くらいしか言うことないです」と振り返る通り、1年前よりも成長してインカレの舞台に舞い戻った菅原は、1年前の記録を上回る総合15位で演技を終えた。また、チームワークが強みの東洋大の代名詞でもある「応援」についても、「人一倍取り組めたので満足いきました」と楽しげに語った。

その年は当時の主将だった濱谷佐理(さり、2019年卒業、富士見丘)の引退の舞台でもあった。「演技が印象的で、いろんな感情が湧き上がって思わず涙してしまったのを覚えています」と振り返る菅原。あこがれの先輩の姿に感銘を受け、主将を志すことにもなった思い出の大会でもあった。

満を持して迎えた今シーズン

迎えた3度目のインカレでは、けがの影響で全力の演技はかなわずに終わってしまった。出場こそしたものの、終始「ジャンプ」なしでの演技。「ジャンプなしでもとりあえずやれることをやろうと思ってやった」と、コーチの進言もあり出場を決めたという菅原。

3度目のインカレはけがの影響で満足のいく演技とはならなかったが……

それでもふたを開けてみれば、結果は予想以上の点数。菅原の繊細な演技への評価は、ジャンプが失われてもなお衰えることはなかった。「やれることはやったので悔いはない」と当時はそう語った。しかし、それでも期待値が高かっただけにしこりは残り、4度目、そして大学人生最後の舞台への思いは増すばかりであった。

そして4年目、主将となり満を持して迎えた今シーズン。しかしそこで待ち受けていたのは、新型コロナウイルスの影響によるインカレ中止の知らせだった。「インカレ中止を知ったのが、8月にあった新潟の大会後だったので、その日は顔が死んでいたと思います」。苦笑をこぼしながらその瞬間の気持ちを振り返った。菅原にとってリベンジのチャンスとなっていた今回のインカレ。4年目の記録は歴史に刻まれることなく、雪辱の機会はついえてしまった。

まだ見ぬ大舞台への挑戦

しかし、菅原の4年間はまだここで終わってはいない。「とにかく『完全燃焼』を目指して演技をしていくまでなので、燃え尽きるその日のために、練習を続けていきたいと思います」。インカレの中止を受け予定された代替試合に向けてすぐに気持ちを切り替え、既に前を見据えている。「『これから』につながる姿を見せるのが僕の役目でもあり、4年生の目指すべき演技だと思っています」と力強く語った菅原。そこにはチームを牽引する主将としての姿があった。

そんな菅原の次なる目標は、全日本フィギュアスケート選手権(以下、全日本)出場。強豪ひしめく日本一の舞台へ挑むという。「諦めるのは簡単なことだけど、目指し通すのは難しいことだと思っているので、誰よりも全日本に対する熱い気持ちは負けずに頑張りたいです」。最後にそう締めくくった菅原の目は、まだ見ぬ大舞台への道筋をしっかりと描いていた。4年間の集大成を華々しく飾るため、スケート人生ラストイヤーを駆け抜ける。