野球

明治大の若き大砲・上田希由翔 誰もが認める4番へ止まらない成長

1年生ながら上田は4番を任された

強く振り抜いた打球は、きれいな弧を描きライトスタンドへ。快音とともに、神宮球場に衝撃をもたらした。昨年度の秋季リーグ、対立教大1回戦で本塁打を放った上田希由翔(きゅうと、2年、愛産大三河)はガッツポーズをしながらダイヤモンドを駆け抜けた。

持ち味の長打力と勝負強さを買われた上田は、1年生ながら4番に抜擢された若き大砲。昨秋、打率.344、7打点をマークしチームに欠かせない存在となった。

尊敬する先輩の応援が後押しに

野球一家に生まれたことから小学1年次から野球を始めた上田。地元・愛知県の愛産大三河高に進学すると才能はすぐに開花した。

2年次から4番を任され、チームとしては22年ぶりの夏の甲子園出場にも大きく貢献。甲子園でも2本の安打を放ち存在感を見せつけた。プロからのスカウトがあったものの「もう少しレベルアップしてから」と大学進学を決意した。

笑顔でチームメートを迎える上田(右)

異例の夏開催だった1年次の春季リーグ戦から長打力を買われベンチ入りを果たした上田。そんな中、ベンチから見えたのは同じポジションの先輩である清水風馬(2021年卒、現明治安田生命)だった。

一塁手のレギュラーとして3割越えの打率を残し、ベストナインにも選ばれた清水。それに対し、2打席無安打に終わった上田。悔しさを味わった上田には神宮で活躍する先輩の姿はいっそう輝いて見え、いつしか超えるべき目標となっていた。「風馬さんを超える。秋はもっと頑張ります」。春季リーグ戦後、上田は清水の前でそう語った。

「小さなアドバイスが大きな力になった」。オープン戦から次第に出場機会が増え、迎えた秋季リーグ戦。早稲田大との2回戦から、清水に代わり4番を任され、立教大戦では本塁打を含む2打点をマーク。上田は実力で4番の座を勝ち取った。

だが気持ちは複雑だった。実力で勝ち取ったとはいえ、最高学年から奪ったレギュラーの座。奇しくも清水とは同部屋だった。「野球をやっていたら分かる。絶対に悔しかったと思う」。それでも清水は悔しさを後輩にはぶつけなかった。むしろ「応援してくれた」と上田は言う。

部屋ではたわいない話で盛り上がる一方、試合になるとベンチから何度も声を掛けてくれた。そんな先輩の姿を見て「素直に頑張ろうと思えた」。尊敬する先輩からの応援が大きな飛躍への鍵となっていた。

4番としての覚悟

バットを立てて投手へ向け、大きく息を吐いてからゆっくりと構える。周囲から見れば風格漂い、脅威を感じるが「緊張して毎打席足が震える」。チームに入ったばかりで任された4番という大役。任されたからには結果を残さなければならない。上田はそんな重圧でいっぱいになることもあった。

さらに「期待のされ方も見られ方も違う」。2年目にかかる期待は大きい。それでも「みんなが思う明治大の4番になりたい」。この強い思いが上田の原動力となっている。彼の中に現状維持という言葉はない。この冬は飛距離の向上に取り組み、打撃フォームも分析。「飛距離は昨年度に比べて伸びている」と手応えは十分だ。「明治大の4番といえば上田」と言われるように。4番としての覚悟はできている。

風格漂う構えで相手を圧倒する

最後に。「希由翔(きゅうと)」という名前は、両親が「希望に向かって自由に羽ばたいてほしい」という意味を込め名付けた。幼いころは「すぐにでも変えてほしかった(笑)」。そんな名前だが、今となってはみんなから親しまれる愛称となり、自分でも気に入っているそうだ。

4季ぶりの優勝へ向け、上田希由翔の活躍は不可欠。名前とは裏腹に、脅威の打撃で明治大を勝利へ導いてみせる。