青山学院大の新エース・横田俊吾 悔しさバネに努力した「よこたっきゅう」の決意
10月10日に行われた出雲駅伝で、彗星の如く現れ、大学3年目にして鮮烈な大学駅伝デビューを果たした選手がいる。「よこたっきゅう」と呼ばれる、まるで卓球選手かのような独特なフォームで、4位と出遅れていた青学大を2位にまで押し上げたヒーロー、横田俊吾(3年、学法石川)だ。学法石川時代は3年時にキャプテンとして臨んだ全国高校駅伝(都大路)で4区2位、チームの3位入賞に貢献したが、スター揃いの青学大ではなかなか日の目を見ることがなかった。取材を通して見えた、新エース誕生の裏側に迫る。
陸上競技との出会い 高校から親元離れ努力の日々
元々野球少年だった横田が陸上に出会ったのは、小学6年生の市内の陸上大会。そこで1500mを走り、自身の可能性を感じ中学から本格的に陸上に転身した。
高校は親元を離れ、地元新潟から福島の学法石川高校へ進学。しかし入学後に足の接地を変えようとして、2年間も結果が出ない日々が続いた。「親が県外進学を応援してくれているのに、活躍できずに申し訳ないという気持ちがずっとありましたね」
そんな長く辛いスランプを乗り越え、横田自身「1番思い出に残っている」と語った高校3年生での最後の都大路。横田は1、2年と出走するも、チームの順位は42位、12位とくすぶっていた。そして迎えた3年目。日本人だけのチームで3位入賞を目標に全員でタスキを繋ぎ、見事に有言実行。「ようやく顧問の松田先生に恩返しできたんじゃないかなって」と、笑顔で高校時代の青春を振り返る。
期待を胸に大学入学も……
高校を卒業し、憧れの青山学院大学に入学。しかし、「本当になんで自分の体はこんなにも動かないんだろう」と口にするほど、1年目のシーズンは苦いものだった。そんな中で同郷で同期の岸本大紀(3年、三条)が箱根駅伝のエース区間・2区の大舞台で5位と活躍する姿を見て、悔しさを噛みしめるしかなかった。
「親がここまで自分のやりたいことをやらせてくれてきたので、感謝を伝えるため、恩返しをするためには自分は走ることしかできないので、それがモチベーションというか継続につながったと思います」。どんなに挫折しそうになっても、親への感謝の気持ちから走ることはやめなかった。
2年生に進級し、その積み重ねが少しずつ形となって現れ始めた。昨年度開催された全日本大学駅伝と箱根駅伝の両方にエントリーされたのだ。結果として出走は叶わなかったものの、横田はすぐにポジティブに切り替え、練習を積んだ。「エントリーはされていましたが、レギュラーメンバーとは差がある補欠だったので、自分としてはこれを機に3年、4年でステップアップできるように準備はしていました」
悔しい日々の先に 横田の快進撃始まる
その言葉通り、春に故障があったものの日々の練習の継続がようやく結果として現れた今シーズン。「高校3年の時の安定感が、いま大学3年目になってようやく出てきたかな」と本人が口にするように、抜群の安定感で今季一度もレースを外していない。7月に行われた第2回絆記録挑戦会では5000mで自己ベストとなる13分54秒85をマークし、一気に主力へと名乗り出た。
そんな中での出雲駅伝での快走。初めての大学駅伝でアンカー区間を任された。理想としていたトップでタスキを受けることは叶わなかったが、前には3校、さらに後ろからは駒澤の田澤廉(3年、青森山田)が追いかけてくるという展開の中、「とにかく必死で、最後に前が詰まってきたのを見て2位に押し上げるために全力で、本当に何も考えずに走りました」と激走の心中を明かした。
各校エースが集う中で2つ順位を上げ、区間3位。自身が課題に挙げていた「ラストのキレ」でロングスパートを仕掛け、見事に競り勝った。ゴール後、原監督からは100点という言葉を、チームメイトからは「(横田の)スパートがキレがないので、2位に上がった瞬間盛り上がったよ」という祝福の言葉をもらい、嬉しかったとニッコリ。
新エースの強い決意
青学大の新エースはもう前を見据えている。チームが目標に掲げていた3大駅伝三冠は惜しくも逃してしまったが、全日本、箱根と先は続く。「どの区間でも区間賞を取るというのはもちろんですが、流れを自分たちの方に一気に引き寄せる走りをするのが目標です」と語気を強めた横田。上級生として、またエースとして気迫のこもった走りをし、青学大の優勝にスマッシュを決められるか。