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立命のエースRB立川玄明「晴れのち大雨」の開幕戦 関西学生アメフト

試合開始1分36秒、立命のRB立川が51ydのタッチダウン(すべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグは8月30日に開幕。1試合があり、4年ぶりの甲子園ボウル出場を狙う立命館大が31-0で龍谷大を下した。ただ、立命のエースRB立川玄明(たつかわ・ひろあき、3年、大阪産大付)の表情は晴れなかった。

この秋、最初のプレーで独走TD

オフェンスが出ていくまでもなく先制した。試合開始のキックオフを受けたWR北田真貴(3年、北大津)が89ydのキックオフリターンタッチダウン(TD)。リターンチームに入っていた立川は最初に同期の北田に駆け寄り、喜び合った。

そしてディフェンスが龍谷大のオフェンスを食い止め、この秋最初の立命オフェンスが始まる。大方の予想通り、シーズン最初のプレーはエースに託した。
QB荒木優也(4年、立命館守山)からのハンドオフを受けた立川は中央やや右にできた穴を駆け抜け、二人のタックラーをものともせず、エンドゾーンまで走りきった。TDの瞬間、両腕を掲げて喜んだ。エースがこの秋最初のオフェンスのプレーで独走TD。これ以上ないスタートになった。

相手の主将にタックルされてファンブル

ただ、そのあとは思うように走れなかった。第1クオーター(Q)終盤には、ゴール前7ydまで攻め込んだところでボールを託されたが、龍谷大の主将でLBの宮前良平(4年、龍谷大平安)に正面からタックルされ、ボールをファンブル。これを龍谷大に抑えられた。このあと1ydを持ち込むTDを決め、大差がついたこともありベンチへ退いた。

独走タッチダウンのあと、痛恨のファンブル

私は古橋由一郎監督の囲み取材が終わったあと、立川のところへ行った。
彼はゆっくり歩きながら言った。
「今日はほかの人に聞いてください。僕はいいです。ほんとに」
普段の人なつっこい笑顔が消えていた。悲壮な顔つきをしていた。

食い下がって質問していると、ポツポツと答えてくれた。
「オフェンスのリズムがつくれなかったのは僕のせいです」
「しっかり一からもう一回やります」

チームの気持ちを背負ってやらなあかんのに……

1回生でいきなりリーグのリーディングラッシャーに輝いたが、昨シーズンは走りに迷いが感じられ、不完全燃焼に終わった。そして迎えた3度目のシーズン。「がむしゃらにやろう」と決めて開幕戦のフィールドへ来たのだという。試合前の練習から先頭に立って「さあいこう!」と声を出した。「もう、4回生のつもりでやってるんだな」と感じさせられた。
絶対にファンブルをしないように、野太い腕でボールの持ち方を確かめていた。
しかし、やってしまった。「RBで一番ダメなことをしてしまいました。チームの気持ちを背負ってやらなあかんのに……。今日は自分のせいです。すいません」。そう言って、立川はロッカールームに引きあげていった

試合前の練習では先頭に立って声を出した

RBが託されるボールにはチーム全員、いやOBやOG、ファンの人たちみんなの思いが込められている。だからこそ、死んでもファンブルしてはいけない。エースとなればなおさらだ。
立川が入学してから立命は甲子園ボウルに出ていない。今年こそ、自分が勝たせる。その覚悟が本物だったからこそ、ミスをした自分が許せなかったのだろう。

立川玄明は、まだまだ「えげつない」選手になる。私はそう確信した。