帝京大「自分がやってやる」の気持ちで5強を崩し、箱根駅伝総合優勝を
12月12日に帝京大学八王子キャンパスであった合同取材。報道陣を前にして、中野孝行監督は「今年はチーム内の5000m、10000mの上位10人がそのまま入っているメンバーです。秋になって調子が上がってきてます」とチームを紹介した。掲げる目標は総合優勝だ。
誰が走ってもいいメンバー
メンバーに選んだ16人は、「誰が走ってもいい16人」だと中野監督は言う。「本当は21人ぐらい選びたかったです。断腸の思いで削りました。層が厚い、と言われますけど、特に厚くしようとは思ってなかった。小さいものの積み重ね、たゆまぬ努力をしてきた結果です」と言う。「メンバーを選んだので、この後は彼らを磨き上げていく期間ですね」
エントリーされたのは、4年生、3年生が各6人、2年生3人、1年生1人。「上級生になればなるほど力を発揮できる。1、2年生に頼るようではだめです」。今年は東海大、青山学院大、東洋大、駒澤大、國學院大が「5強」と言われているが、「うちは入ってないから気が楽です」と笑わせる。しかし、「5強の一角を崩したい。一角、二角、三角、四角、五角と崩していって総合優勝を目指します」と独特の言い回しで高い目標を掲げる。思わず崩せると思いますか? と聞くと「その力はあると思います」と答えてくれた。
自分の役割をいかに果たせるか
選手には常々「どの区間を走ってもいいように準備しなさい」と言い続け、選手もそのつもりで練習に取り組んできた。小野寺悠(はるか、3年、加藤学園)が「監督はまだどこを走るかまったく教えてくれない」と言っていましたよ、と言うと「まだ区間は決めてないんです」と返された。
記者会見の際に、選手全員に走りたい区間とその理由を問う質問があったが「あれはだいぶ参考になりましたね」と感心したようす。走りたいところを走らせてあげるということですか? 「でも、やりたいこととできることって違いますからね。チームにとって何ができるか。最終的にはどこでも力を発揮できないとだめです。チームにおける自分の役割を考えられるかどうか。それが、この箱根だけじゃなくて社会に出てからも生きてくると思いますよ」。競技、そしてその先も考えている監督の心が感じられた。
5強に食らいつきたいし、負けてはいけない
主将の岩佐壱成(4年、徳島科技)もまた「メンバー全員が順調にきてて、誰が走るか分からないぐらい層が厚いです」とメンバーのレベルの高さを口にする。「うちのチームには相澤くん(晃、4年、学法石川)みたいに一人で流れを変えられる選手はいません。でも一人ひとりの安定感はしっかりしてるので、『5強』の選手に食らいつきたいし、負けてはいけないと思います」と闘志を燃やす。
箱根が近づいてきて、エントリーメンバーに入れる者、入れない者がそれとなく分かってくる時期。「箱根駅伝総合優勝」という目標に対し、同じ目線に立てていないメンバーがいて、あまりいい空気感ではないと感じた時期があったという。集合時間に遅れたり、出されたご飯を残したり、「駅伝を一番に考えられていないな」と感じた。「全員を巻き込んで同じ目標に向かっていくために、例えば練習を引っ張ってもらったりとかしました。いまは全員が目標に向かっていけてると思います」
もともとあまりリーダーシップを発揮するタイプではない、という岩佐。話し合って決まったキャプテンだったが「最初はやりたくなかった」と明かす。「でもいまは人として成長できて、やってよかったなって思います」
一人ひとりが「やってやろう」
岩佐個人は、2区を走りたいという思いがある。「箱根駅伝の花の2区にあこがれて帝京大学に入ったので、エース区間を強い気持ちで走って、4年生としてチームにいい流れを作りたいです」。絶対的エースがいないからこそ、チーム全員が「自分が、自分が」という雰囲気だという。「一人ひとりがチームに貢献しよう、やってやろうって気持ちです。苦しんだ時期もあったけど、総合優勝を目標にしているので、集大成として笑顔で終わりたいです」
「雑草集団」と書かれがちな帝京大チームだが、中野監督は「雑草っていう言い方は好きじゃない。草にも一つひとつ名前があり、役割がありますから」という。着実にチーム力をつけてきている帝京大の戦いに注目だ。