大学陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

國學院大の土方英和と浦野雄平 箱根で見せる、切磋琢磨の集大成

針本正行学長からたすきを授与される土方主将(壮行会写真撮影・上原伸一)

國學院大の箱根駅伝壮行会と共同取材が、12月13日に渋谷キャンパスであった。今年の出雲で三大駅伝初優勝を遂げた新興勢力の先頭に立つのはもちろん、土方英和(埼玉栄高)と浦野雄平(富山商)の両4年生ダブルエースだ。

あえて言葉にした高いハードル

國學院大の主将・土方は、発した言葉が持つ力と重みを知っている。前回の箱根駅伝。総合7位でシード権を獲得すると、土方はその直後、チーム、学校関係者を前にこう宣言した。

「来年は総合3位を目指します」

黒山の人だかりはどっと沸いたが、いきなりハードルを上げられ、困惑気味の表情を浮かべる選手もいた。あれからもうすぐ1年。大風呂敷を広げたようにも取られた土方の宣言は、実現不可能なものではなくなっている。「あの場で言ってよかったと思ってます。言葉にしたことで、チームがその方向へと向かっていったので」

往路優勝、総合3位。掲げた時は高すぎると思われたが、今や現実的に見える目標になっている

土方は3年生のときから主将を務めている。「チームに何かあれば相談できる存在。他の選手の行動もよく見ている」と2009年8月からチームを率いる前田康弘監督の信頼も厚い。土方は前田監督がそうであるように、対話を重視する。寮でのコミュニケーションはLINEを使わず、必ず部屋まで出向いて話をしているという。目配り、気配りができる主将は求心力もある。前田監督は「選手間ミーティングでも、土方が言うなら、となるようです」と明かす。

勝負勘が働いた出雲のラストスパート

3位を目指す宣言は「まずは自分が有言実行しなければ」と自らを成長させる糧にもなった。土方は今季、コンスタントに結果を残している。トラックでは関東インカレのハーフマラソンと、日本インカレの10000mで日本人トップに。勢いそのままに、出雲では最終の6区で区間賞。強豪校のアンカーを3人も抜き去った圧巻の走りで、三大駅伝初優勝に導いた。1882年に母体が創立した國學院大だが、これまでスポーツの分野では特筆するような快挙はない。土方のラストスパートが歴史を変えた。

前田監督は土方の長所を「勝負勘」だと言う。「レースを作るのが上手で、仕留めるタイミングがよく分かっている」。それは感覚的なもので、教えても備わるものではない。土方は先天的な「勝負勘」を発揮し、実力派が揃った出雲の6区で勝ち切った。

土方がゴールテープを切り、國學院大學の歴史が変わった(撮影・藤井みさ)

だが、出雲に続いてアンカー(8区)を担った全日本では区間5位に。青山学院大、東海大、東洋大、駒澤大と並ぶ「5強」の一角だったチームも7位に沈んだ。しかし土方はこの結果をプラスにとらえている。「悔しかったのは確かです。ただ全日本でも好結果だったら、箱根もいけると浮ついてしまったのでは。そういう意味ではシード権も確保できましたし、いい経験だったと思います」

箱根では2年連続で2区が有力。総合3位とともに掲げる往路優勝のためには、土方がいかに他校のエースを抑えるか。それもひとつのカギとなる。

2区を走りたかった思いを封印

土方とダブルエースを形成するのが、浦野だ。前回は山上りの5区を走り、区間賞と区間新。往路3位躍進の立役者になった。キャプテンシーと勝負勘が持ち味の土方に対し、浦野は「スピード、スタミナ、メンタルとすべてにおいてアベレージが高く、バランスが取れているのが強み」と前田監督は評する。今季の駅伝でも、出雲が3区で区間3位、全日本は2区で8人を抜いて区間2位と安定している。

「今回の箱根では2区を走りたかったのですが」。浦野は胸の内を正直に吐露するが、11月初旬の段階で5区を走ることが確定。すでに気持ちは切り替わっている。準備にも余念がない。歴代の「山の神」と呼ばれた選手の走りを動画でチェックしている他、前回うまくいかなったことを踏まえ「筋力だけつけるとおもりになってしまうので、筋力を効率よく使うための動き作りをしてます」と言う。

浦野には「唯一無二の選手になりたい」という気持ちがある(撮影・藤井みさ)

前回5区で好結果を残せたのは、1年生のときに山下りの6区を走れた経験が大きかったという。区間17位と屈辱的な結果に終わったが、「上りは下りの反対なので、コースの具体的なイメージがしっかりできた」。5区には他校の山上りに懸ける猛者も待ち受けているが、必ずトップで往路のゴールテープを切るつもりだ。

成長できたのはライバルがいたから

土方は浦野について「僕を成長させてくれた存在」と口にする。夏のジョグの走り込みでは必ず浦野より1kmでも多く、5分でも長く走るようにしていたという。「栄養補給についてもいろいろ教えてもらいました。浦野は『自分の体は自分が作る』というしっかりした考えを持ってて、寮の食事以外で何が必要かもよく分かってます。そういう意識の高さは僕だけでなく、他の選手に好影響をもたらしてます」

今季のスローガンは昨年に続いて「歴史を変える挑戦」。出雲では新しい歴史を刻んだ。箱根ではさらなる高みへ。土方と浦野が集大成の走りで、チームを引き上げる。

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