アメフト

特集:第73回ライスボウル

関学・鳥内監督の「最後やから負けてくれへん?」作戦 ライスボウルで富士通と対戦

言いたい放題だった関学の鳥内監督(すべて撮影・松尾誠悟)

アメフト日本選手権・第73回ライスボウル

1月3日@東京ドーム
関西学院大(学生王者)vs 富士通(社会人Xリーグ王者)

アメフトの日本一を決めるライスボウルの記者発表会が12月17日、東京ドームホテルであった。2020年1月3日、学生王者の関西学院大ファイターズが社会人Xリーグ王者の富士通フロンティアーズに挑む。2009年の立命館大以来、学生側の勝利はない。この日は関学の鳥内秀晃監督(61)と富士通の山本洋ヘッドコーチ(HC、44)らが記者会見に臨んだ。今シーズン限りで退任する鳥内監督と、新任の山本HC。監督28年目の関西人の独壇場となった。

「負けたら一生暗いままで終わってしまう」

最初に試合への抱負を聞かれた鳥内監督は、仕掛けた。「この試合に負けてシーズンが終わると、1年間ずっと暗い雰囲気になるんです。私の最後のシーズンいうことで、負けたら一生暗いままで終ってしまうんで、何とかして勝てたらいいなと思ってます」。多少ウケた。

質疑応答の時間になり、報道陣からの質問が途切れると、鳥内監督は壇上からなじみの記者を指名した。「岡野君、わざわざ大阪から来たでしょう」。また多少ウケた。

鳥内監督の「口撃」にタジタジだった富士通の山本ヘッドコーチ

前日のジャパンエックスボウルでも161ydを走った富士通のRBサマジー・グラントについて尋ねられると、「試合、出んほうがええんちゃいます? 学生レベルで止めるのは無理でしょ? どないかして出んように頼んどきますわ」と言って、山本HCの方を見た。山本HCは顔を真っ赤にして気まずそうにしていた。「見ただけやで」とかぶせる鳥内監督。ウケた。

これが監督として正真正銘の最後の試合になることについては「彼(山本HC)はこれから長くやるでしょ? こっちは最後ですから。ちょっと負けてくれへんかな、と思ってます」。ここまで来ると聞いている方も多少しんどくなってくるが、ウケていた。

「ランナーが個人技でだいぶ走れるようになった」

今シーズン成長した選手について問われたときは、極めてまじめに返した。
「オフェンスはRBの三宅、前田、齋藤というところが個人技でだいぶ走れるようになりましたわ。レシーバーは阿部の安定感のあるキャッチング。OLも最後にやっとコンビネーションが合ってきました。ディフェンスでは若いDBが頑張ってます。宮城、三村と2回生に割と面白いヤツがおるんで、頑張ってほしいです」

ライスボウルの記者発表に参加した富士通の副将でLBの趙、山本HC、関学の鳥内監督、主将でDLの寺岡(左から)

関学と富士通がライスボウルで対戦するのは、これで4度目。「ディフェンスはしんどいの分かってます。対戦をさかのぼって通ったプレー、ムダなプレーを掘り下げてやっていこうと思います」と、鳥内監督。まじめに終わったかと思いきや、マイクを離さず、当日の試合中継を担当する旧知のNHKの担当者に問いかけた。「BSはやめて地上波でやってほしいんですわ」。するとNHKの担当者は「頑張りますとしか言いようがないです……」。「いつから?」とたたみ掛けると担当者は「頑張ります……」。

「臨機応変がアメフトに役立つ」

選手にもそうやって問い詰めて育てるんですか、と聞かれた鳥内監督は「そうそう。臨機応変がアメフトにも役に立つんですわ」と言ってニヤリ。言いたい放題言って、記者会見は終わった。

また、この日の両チームが参加した会議で、当日のユニフォームが関学は青。富士通は赤を着ることになった。「最後ぐらいは青で終わりたいわな」という鳥内監督の要望を受けた話し合いで決まった。 

両者はライスボウルで2シーズン連続4度目の対決となる