大学陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

東海大・郡司陽大、初優勝のゴールテープを切ってからの1年

第96回箱根駅伝
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東海大の歴史が変わった瞬間。郡司は一躍有名になった(撮影・松嵜未来)

2年連続の箱根駅伝総合優勝がかかる東海大の合同取材が12月18日、湘南キャンパスであった。出席した16人のエントリーメンバーには、もちろんこの男の姿もあった。前回の箱根駅伝で初優勝のゴールテープを切った郡司陽大(あきひろ、4年、那須拓陽)だ。

走るのが好きだから、けがはつらかった

郡司は2月中旬に転んでしまい、足を痛めた。そこから2カ月ほどは、走って、痛めての繰り返しだった。「僕、走るのがほんとに好きなんですよ。だから、つらかったです。走れるようになった1週間後から合宿に行って、記録会に続けて出て、調子はあまり上がらないままでした」。本来の調子を取り戻したのは、夏のアメリカ合宿からだ。レースに出ず、練習を繰り返す日々。郡司の練習の消化率は100%で、満足いく夏を過ごせた。

6月の日本学生個人選手権から。思うように走れない時期が続いた(撮影・藤井みさ)

出雲駅伝はエントリーメンバーに入ったが、走れなかった。「直前の東海大記録会でメンバーを決めようって、選手内で話し合って決めました。その選考に合わせられなかった自分が力不足だったと思います。自分が走っても、結果は同じだったんじゃないかな。あのメンバーがベストだったと思います」と、サッパリしたものだ。だが、全日本大学駅伝では本人の想像を超える走りができた。「ほかの大学は1年生が多くて、『穴場』って言われてる区間だったんです。3kmぐらいから苦しかったんで、人生初の区間新記録でうれしかったなって。親も喜んでくれて、両角(速)先生も『よくやった』って握手してくれて、うれしかったです」

生まれ変わっても郡司家に

郡司は3人兄弟の末っ子で、長男の貴大(たかひろ、28)さんは駒澤大から小森コーポレーションに進み、長距離を続けている。幼いころから、走る兄を見ていて、自然と「自分もやるんだろうな」と陸上を始めた。「自己ベストは自分のほうが上だったりするんですけど、なんか『兄は強い』と思います。ずっとあこがれのかっこいい存在です」。全日本大学駅伝のあと、お兄さんに何か言われましたか? と聞かれた郡司は「よくやったね、ぐらいです。褒めすぎないようにしてるんだと思います」と返した。

「よく『笑ってるね』って言われるんですが、あれは苦しい顔なんです」(撮影・安本夏望)

前回の箱根で初優勝のゴールテープを切ったあと、スーパーヒーローのような扱いを受けた。しばらく地に足がつかないような、フワフワした感じになったという。そのときに声をかけてくれたのも家族だった。「箱根駅伝というものと、(お前の前に)走った9人のおかげなんだ。巡り合わせだから、お前がすごい人なわけじゃないんだ」。はじめは、その言葉に少し反発する気持ちもあった。「でも、いま思うとあの言葉がなかったら、あそこに満足して終わっちゃってたと思います。そのあと身が入らずに『箱根だけだったよね』って言われてただろうな。本当に親のおかげです。生まれ変わっても郡司家に生まれたいって思います」。まっすぐに言った。

そして東海大での出会いにも感謝する。「大学に入ってから、いい人にしか巡り合ってないです。チームもすばらしくて、本当に僕は運がいいなと思う。つらい時期のほうが多かったかもしれないですけど、いま振り返っても、すごい巡り合わせだなと思います」

このチームメイトたちに出会えてよかった(撮影・藤井みさ)

東海大では、高校時代に素晴らしい実績を残し、「黄金世代」と呼ばれる選手たちと同学年になった。郡司は言う。「黄金というより、みんな努力して強くなってきたんだと思います。同じチームになってから、努力のすごさを目の当たりにしました。阪口(竜平、洛南)、鬼塚(翔太、大牟田)、關(颯人、佐久長聖)とかは同期として純粋にあこがれることもあります。走り方かっこいいな! って(笑)。彼らは本当に『黄金』だなって思うことがありますね」

「耐え抜く2区」の走りをしたい

実力者がひしめく東海大で、郡司は箱根駅伝で2区を希望する。「2区を走るってことはチーム内のエースです。そこを目標にして練習するからこそ気が抜けないし、2区を目指して選ばれなかったとしても、気持ちは変えずにいたいです」。そしてこう続けた。「全員が2区を走ろうと思うようなチームであればいいなと思います。それに、東海はエースを2区に置かなくても戦えると思います。去年の湯澤(舜)さん(現・SGホールディングス)の走りを見て、耐え抜く2区、そういう走りを僕もできればいいなと思いました」

今年も10区、アンカーってのはどうですか?「前回はみんなのおかげで、あれだけの差をもらって走らせてもらったので、今度は自分が別の形で貢献したいなって思います。僕のことを待ってくれてるみんながすごく楽しそうだったんで、次はほかの選手と一緒にアンカーを迎えたいなって思いもありますね」

最後の箱根は迎える側で思いっきり楽しみたい(撮影・松嵜未来)

卒業後は長男と同じ小森コーポレーションに進む。マラソンに取り組みますか?「うーん、あんまり考えてなくて(笑)。陸上が長くやれたらいいなって思うんです。好きだからやってこられたので、できるだけ長く、楽しく走れればって思います」

かけっこが大好きな少年のまま大学4年生になったような男だ。まっすぐだけど、ちょっとお調子者でもある。そんな郡司家の末っ子、大学最後の晴れ舞台は、すぐそこに迫っている。

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