アメフト

最終戦の開始早々に反則で「退場」、無念かみしめた京大の3回生DB岡﨑直也 

神戸大戦の試合開始早々に資格没収となり、チームを離れた(撮影・安本夏望)

アメフト関西学生リーグ1部 最終節

 11月10日@大阪・万博記念競技場
京大(3勝4敗)7-16 神戸大(5勝2敗)

 アメフトの関西学生リーグ1部で、ある選手のつらいシーズンの終わり方を目撃した。1110日のリーグ最終日。「国立大決戦」で京大が7-16で神戸大に負けた。34敗のリーグ5位。この試合で京大のDB(ディフェンスバック)岡﨑直也(3年、高槻)は、試合開始早々に「退場」となった。

パスを受けた相手に体当たり、「ターゲティング」に 

1クオーター4分すぎの出来事だった。神戸大の最初のオフェンス。京大からすれば最初のディフェンスだ。京大陣40ydからの第3ダウン15yd。神戸のQB(クオーターバック)是澤太朗(4年、東海)がフィールド中央やや右でフリーになったWR(ワイドレシーバー)坂本浩介(3年、三国丘)へミドルパスを決めた。ボールを捕った直後の坂本に対し、左から走ってきた岡﨑が体当たり。フィールドレベルで写真を撮っていた私には、「ボンッ」という音が聞こえた。岡﨑のヘルメットが、坂本のあごの付近に入った。 

すかさず審判からイエローフラッグが投げ込まれた。主審が「パーソナルファウル、ターゲティング。ディフェンス、京都大学2番」とアナウンス。審判団はインスタントリプレーによる検証に入った。1分ほどして、再び主審から「フィールド上の判定が正しかったことが分かりました」とのアナウンスがあり、「京都大学2番は資格没収」と告げられた。資格没収はいわゆる退場処分で、もうその試合には出られない。岡﨑は関西学生連盟のスタッフに連れられ、ベンチを離れて競技場内の大会本部室へ向かった。

「ボールを狙ったつもりだった……」 

パーソナルファウルは、アメフトのルールで最も重い反則だ。その中でも岡﨑の犯した「ターゲティング」は、ヘルメットの頂点からボールキャリアの頭や首にタックルしたり、パスやキックを終えた無防備な選手の頭や首にタックルする反則だ。後遺症が残りやすい頭部や首に重度のけがを負うリスクがある。罰則は最も厳しく15yd罰退と当該選手の資格没収。昨年より関西1部の試合ではインスタントリプレーが導入され、ターゲティングにのみ適用されている。リプレー検証には、一般社団法人リコネクトテレビジョン(rtv)の映像を使う。試験導入を経て昨秋から本格的に導入した。 

神戸大との試合後、反省を口にする岡﨑(撮影・安本夏望)

リーグ最終戦の試合開始早々にフィールドを去った京大の2番が気になった。試合後に岡﨑に取材した。彼は神妙な表情で言った。「自分としてはボールあたりを狙って、ショルダーでヒットしたつもりだったんです。でも、ズレてしまって首から上にいってしまった。もっと冷静にプレーすべきでした」。試合中は大会本部室のモニターに流れる中継映像で、仲間たちの戦いを見つめた。自分に代わって入った坂本大礎(だいき、3年、横浜翠嵐)は奮闘してくれたが、京大として特別な思い入れのある神戸大に負けた。「歯がゆかったです。自分自身が情けなくて……」

高校の先輩と一緒にプレーしたくてギャングへ

 最終戦、しかも国立大決戦ということもあり、前のめりになっていたのかもしれない。岡﨑は高槻高(大阪)のアメフト部出身で、1浪して京大へ。高校時代には、京大の先輩でエースRB(ランニングバック)の植木宏太郎(4年)やOL(オフェンスライン)の畑井(はたい)良文(同)とともに、関西制覇を経験した。高槻高のアメフト部顧問である依藤容直(よりふじ・ひろなお)教諭も京大ギャングスターズの出身。「反則なしで激しくプレーすること」を教えられてきた。岡﨑は「高校の先輩たちともう1度、一緒にアメフトがしたい」という思いでギャングに入った。だが、最後まで同じフィールドには立っていられなかった。「4回生にはお世話になりました。あの人たちを勝たせたかったのに、残念です」。岡﨑の深い絶望が、こちらにも伝わってきた。

立命館大戦で、相手のエースRB立川にタックルする岡﨑(中央手前左、撮影・篠原大輔)
龍谷大戦でインターセプトを決め、仲間と喜び合う岡﨑(中央、撮影・篠原大輔)

 ただ、岡﨑にはあと1年ある。「反則の重みが、身にしみて分かりました。毎日の練習から自分をちゃんとコントロールして、2度とこんなことにがないように心がけてやりたいです」

 取材の内容が内容だけに、岡﨑の表情は終始硬かった。私が最後に「事情聴取みたいになってゴメン」と謝ると、初めて笑顔になった。
いい笑顔だった。ラストシーズンは心から笑って終われますように。

神戸大との試合前、気合を入れる京大ギャングスターズの選手たち(撮影・安本夏望)