陸上・駅伝

女子の仙台育英高 都大路で2年ぶりV、大エースを欠いてチームは一つになった

笑顔でフィニッシュするキャプテンの木村(撮影・安本夏望)

女子第31回全国高等学校駅伝競争大会

12月22日@たけびしスタジアム京都を発着点とする5区間21.0975km
優勝  仙台育英(宮城)   1時間7分0秒
2位 神村学園(鹿児島)1時間7分19秒
3位 筑紫女学園(福岡)1時間8分24秒

全国高校駅伝が12月22日にあった。「都大路」呼ばれる駅伝で、女子は仙台育英(宮城)が2年ぶり4度目の優勝を飾り、豊川(愛知)の歴代最多優勝回数に並んだ。

レースは1区(6km)の3kmすぎで立命館宇治(京都)の三原梓(2年)が飛び出したが、徐々にペースを落ちてきた。残り1kmで仙台育英の小海遙(2年)と和歌山北の小倉稜央(3年)のトップ争いとなり、1秒差で小海が1区を制した。

1区・小海(4番)の積極的な走りが流れを呼び込んだ(撮影・安本夏望)

2区(4.0795km)では神村学園(鹿児島)のバイレ・シンシア(2年)がトップと34秒差の14位からぐんぐんと追い上げ、残り1kmでトップに立つ。3区(3.0km)は神村と6秒差の3位で襷(たすき)を受けた仙台育英の清水萌(3年)がじりじりとトップに迫り、残り100mのところで神村の黒川円佳(2年)を逆転。4区(3.0km)は山中菜摘(1年)の快走で仙台育英がトップを守る。最終5区(5.0km)、仙台育英はキャプテンの木村梨七(3年)。区間2位の走りで首位を守り、ゴールに飛び込んだ。連覇を狙った神村は19秒差の2位だった。

10回のうち1回だけは勝とう

レース後、釜石慶太監督は「10回のうち9回は(神村学園に)負けるけど、でも大事な1回だけは勝とう。そう言い続けてきて、その通りになりました。支えてくれた人たちのおかげです」と、インタビューに答えた。

仙台育英は毎年、強力な留学生を擁して強いチームを作ってきた。今年もエスタ・ムソニ(3年)が中心となるはずだったが、8月のインターハイの1500m予選のレース中に大腿骨を骨折してしまった。都大路の優勝を目標に練習に取り組んできたが、チーム内には暗いムードが漂い、釜石監督は「正直、(優勝は)厳しいんじゃないか」と思ったという。そして夏合宿で選手に向けて「今年は優勝を目標にするのはやめよう」と投げかけた。しかし選手がミーティングをして出した答えは「優勝を目指す」だった。新たな決意のもとでまとまったチームだけに、覚悟を持って練習に取り組めた。

レース後にムソニ(中央)と笑顔で言葉を交わす木村(右)

けがをしたムソニも腐ることなく、11月のエントリー期限ぎりぎりまで黙々とリハビリに励んだ。彼女の思いをチームメイトみんなが受け取り、体現してくれたと釜石監督は言う。「チームワークの勝利だと思います。選手にただ感謝です。1区の滑り出しで区間賞をとれて、魂が伝わりました。2区の米澤(菜々香、1年)は多少リスク覚悟の上で、もともと突っ込める選手、大舞台に強いということでそこにかけました。2区で踏ん張ってくれたおかげで、その後につながったと思います」。日本選手だけで優勝を勝ち取ったことについては「また違った得るものがあります」と、感慨深げに話した。

誰がというより、みんなが強いチームになった

キャプテンでエースの木村は、3年連続の都大路。襷リレーの時点では5秒差だったところを19秒差に広げる快走だった。「差がほとんどなくて、後ろにつかれてもいいからラスト勝負だと思ってました。神村の選手(中須瑠菜、2年)が強いのは分かっていたので、どこまで縮められてしまうか分からないけど、自分の走りをするしかないと思いました」

木村も「エスタがけがをして、いったんチームがごたごたしてしまったことがありました。彼女に頼っていたところが大きくて、優勝は厳しいんじゃないかなと思ったこともありました」と明かした。それでも「全国制覇」への思いは大きかった。2年前に優勝を経験し、昨年悔しい思いをしているだけに、3年生たちにはとくに優勝にこだわる気持ちがあった。「(9月の)白河駅伝で大会記録で優勝できて『いける』とみんなが希望を持てました。今回日本人だけで臨んで、優勝の可能性が少ない中で最多優勝記録に並べたのはうれしいです」

優勝への強い気持ちが全国制覇を呼び込んだ(撮影・藤井みさ)

練習でも積極的に引っ張り、チームの中心的存在である木村は、今年のチームを「後輩たちが3年生を押し上げてくれるチーム」と表現した。インターハイや国体、そのほかの大会でも、下級生の活躍が目立つ。誰が、というのではなく、みんなが強いという。

大きな戦力を失ったことで、逆に一人ひとりのレベルが上がり、チームとしてまとまった仙台育英。釜石監督は「木村の存在は大きかった。彼女が残してくれた3年間を引き継いでいかないと」。今回走った5人のうち、卒業するのは2人だけ。優勝を知るメンバーが「強い仙台育英」を引き継いでいく。