東海大連覇ならず、悔しさから始まる新シーズンのリベンジ
第96回東京箱根間往復大学駅伝競走
1月2、3日@大手町~箱根の10区間217.1km
2位 東海大 10時間48分25秒(新記録)
昨年の全日本大学駅伝を制し、優勝候補筆頭と見られていた東海大が連覇を逃した。復路では新記録で優勝と前回王者のプライドを見せたが、総合優勝には届かなかった。再び王者の座へ返り咲くために、「1番」になれなかった現実を必ず糧にする。
名将も想定できなかった今年のスピードレース
「10時間50分を切っても勝てないんだからね」。両角速監督は苦笑交じりにそう言った。1区から10区までの総合タイムは10時間48分25秒。これは昨年東海大が作った最高記録を4分近く上回る。それでも連覇はできなかった。“スピードの東海”を率いる両角監督にとっても、区間新が続出した今年の箱根は想定以上のスピードレースだったようだ。
「もしかしたら、これまでの平均タイムも参考にできなくなったかもしれない。自分たちの中に刻まれた“時計”を見直す必要があるでしょう」
もちろん東海大の代名詞である“スピード”で青山学院大に屈したままでいいはずはない。すでに名将の頭には来年に向けた青写真が描かれている。「これまで以上に基本を大事にするのと、同じコースで練習できない難しさがある中で、いかに実戦を想定するか。まずはこの2つを柱にするつもりです」
体調不良だった西田は来年も5区を走る
「黄金世代」が抜ける中、新チームの先頭に立つのは塩澤稀夕(きせき、伊賀白鳳)、名取燎太(佐久長聖)、西田壮志(たけし、九州学院)の3人の3年生だ。いずれも昨年の全日本では16年ぶり2度目の優勝の原動力になった。今年の箱根では、塩澤はエース区間の2区、名取は4区、西田は2年連続で山上りの5区と、それぞれカギとなる区間を担った。
初の箱根路となった塩澤と名取がともに快走を見せた中、“らしくなかった”のが西田だ。70分切りを狙っていたにも関わらず、72分4秒で区間7位。昨年は区間新だった自らのタイムを上回ることもできなかった。得意とする山上りに入る前から飛ばすはずも、序盤から顔がゆがみ、途中何度か脇腹をおさえる場面も。原因は体調不良だった。実は昨年末の26日に高熱が出て、そこから満足に走れていなかったという。西田は沈痛な面持ちでこう話した。
「体調を崩したのは自分の責任。言い訳になりません。本当に悔しいですし、陸上人生最低の走りをしてしまった。黄金世代の4年生を有終の美で送り出せなかったのは自分のせいだと思ってます」
昨年の全日本4区で初の三大駅伝区間賞を獲得した西田は平地にも自信を持ち、「今年は『山の神』となり、来年は『花の2区』で区間賞を狙う」と口にしていた。だが2区への思いはきっぱり封印するという。「もう1度5区に挑みます」。その目は早くも来シーズンを見据えていた。
「黄金世代」の郡司が卒業までに伝えたいこと
昨年の初優勝に貢献した「黄金世代」の中で、一番悔しい思いをしたのは郡司陽大(あきひろ、那須拓陽)だったかもしれない。1年前、郡司は今年と同じ10区を走り、満面の笑みで歓喜のフィニッシュテープを切った。今年は2番目。郡司は一瞬天を仰ぎ、連覇できなかった現実を受け入れると、ゴールそばで待ち構えていた仲間のもとへと向かった。
「うちはトップでゴールするのを求められているチーム。2番目は本当に悔しかったですね。沿道の声援も去年のほうが格段に大きかったですし……。でも今年もみんなが全力でつないでくれた。だから僕も最後まで全力で走りました。本当は区間新を狙っていたんですけど、区間3位だったのは自分らしいかな(笑)」
記者からの質問に答えているうちに、いろいろな思いが一気にこみ上げてきたのだろう。大会後の囲み取材の際中、ゴールした時は「僕のキャラではないので」と決して見せなかった涙が頬を伝わった。郡司は卒業までの残された日々の中で、「2番」で終わった悔しさの意味を後輩たちにしっかり伝えていくという。
ポスト黄金世代の“ニュー東海大”は、まだ松の内が明けない7日にスタートを切った。