大学ラグビー

ラグビーを支え、関わり、創るボランティア 早稲田の元快足WTB勝田譲の挑戦

勝田譲さん(36)はかつて、早稲田大学ラグビー蹴球部の快足WTB(ウィング)として2004年度と05年度の大学選手権連覇に貢献した。いまIT企業で働くかたわら、ジュニア世代の指導に尽力している。そして彼がもう一つ力をいれているのが、ラグビーを通じて人と地域をつなぐボランティア活動だ。今年1月には新たなボランティアチームを立ち上げた。なぜボランティアに力を入れるのか? 勝田さんの思いを聞いた。

きっかけは「日本のチームを自分たちで支えたい」

「練馬ラグビースクール」の中学生をコーチする勝田さん

東京都練馬区にある人工芝のグラウンド。3歳から中学生までの子どもたちが集まり、ラグビーボールを夢中で追っている——

ここで中学生の指導をしているのが、早稲田大ラグビー部出身の勝田さんだ。

「練馬ラグビースクール」は1988年にできた地域のラグビースクールで、ラグビーワールドカップ2019™日本大会以降もスクール生は増え続けている。スクールを支える練馬区ラグビーフットボール協会の理事長でもある勝田さんは、この練馬のラグビー仲間たちと今年、新しい団体を立ち上げた。それが勝田さんが力を注ぐボランティアのチーム「スリーチアーズ」だ。

「自分たちが暮らし、自分たちが指導するラグビースクールの拠点でもある練馬に、いままでのボランティア経験を還元したかったんです」と勝田さんは言う。

大勢の子どもたちが人工芝の運動場でラグビーを楽しむ

それでは、大学ラグビーで鳴らした勝田さんがなぜ、ボランティア活動に魅了されていったのか? およそ4年前に遡る。世界のプロチームが参加するラグビーリーグ・スーパーラグビーに参戦する日本のチーム「サンウルブズ」が誕生したのがきっかけだった。「日本のチームは自分たちで支えたい」という思いから、勝田さんはサンウルブズのボランティアチームのリーダーになった。このチームは複数のボランティア団体の集まりで、サンウルブズの試合のたび、150人ほどのボランティア参加者が集まる。

今年の2月15日に秩父宮ラグビー場(東京)で開催されたサンウルブズvsチーフス(ニュージーランド)戦でも、ボランティア参加者たちは観客の誘導やチケットの受け渡し、物販やラグビー体験コーナーの運営、さらには試合後のスタンド清掃まで、多岐に渡る活動にあたった。勝田さんはその先頭に立つ。

サンウルブズのボランティアメンバーとスタンドの清掃後に記念写真

昨年のラグビーワールドカップ2019™日本大会では、ボランティアチーム「TEAM NO-SIDE」に参加した。「東北出身でありながら、東日本大震災の復興に貢献できなかったので、ラグビーを通じて少しでも役に立てることがあれば」と、岩手・釜石会場のボランティアリーダーになった。

この経験をもとに発起人となり立ち上げたのが「スリーチアーズ」だ。現在は20人ほどのメンバーで、練馬ラグビースクールのコーチから練習場の周辺や区内の清掃活動、そしてサンウルブズの試合のサポートまでを主な活動としている。

早稲田のレギュラーであり主務

勝田さんのボランティアの原点は大学時代だ。
今年1月に11シーズンぶり16度目の全国優勝を果たした名門・早稲田大ラグビー部で快速WTBとして活躍した。在籍していた2002年度からの4年間は「赤黒ジャージ」の黄金期。清宮克幸監督のもと04、05年度に大学選手権連覇を果たしたチームに、トライゲッターとして、そしてプレースキッカーとして貢献した。大学日本一になったときだけに歌える第2部歌「荒ぶる」も熱唱した。

早稲田伝統の赤黒ジャージに身を包む勝田さん

花形選手だった勝田さんだが、同時に裏方である学生主務としてマネジメントも経験した。選手と主務の兼務は、長い歴史を誇る早稲田大ラグビー部でも前例がなかった。

「大学時代は素晴らしい指導者がいて、天然芝の上井草グラウンドという素晴らしい環境がありました。その環境を生かすため、自分たちはどうすべきか。僕たちの代は、『地域にも貢献していきたい』という強い思いを持ってました。だからこそ裏方として役に立ちたいと思ったんです」

名門のレギュラーとマネージャーに同時に打ち込んで学んだのは、リーダーシップとフォロワーシップだった。スポーツではプレーする人もいれば、支える人もいると、身を持って知った。

「この経験が、いまのボランティア活動につながっているところはあると思います。それにラグビーの競技特性がボランティアに似ているんです。体が大きい、足が速いといったいろんな特徴を持った人たちがいて、それぞれの強みを生かすのがラグビー。ボランティアもそれぞれの強みを生かすことで相乗効果が生まれるんです」と勝田さんは言う。

ビジネススキームはボランティアにも役立つ

社会人としてIT企業で働く経験も、ボランティア組織を運営していく上で役立っている。たとえばボランティアのIDカードの管理。大勢のボランティアが集まれば、参加者の把握が難しくなる。そこで個人を認証するシステムを導入した。また参加者に任意でアンケートの記入をしてもらい、ボランティアの改善に役立てている。「これもビジネスで学んだことで、製品開発でお客さまからのフィードバックを受けて改善していくのに近いです」

アンケートには、たとえばサンウルブズ戦の来場者の満足度を高めるためのさまざまなアイデアも書かれている。試合後のボランティアと観客とのハイタッチや、ボールに触れられるアトラクションもここから生まれたという。こういった工夫によって、ボランティア活動はさらに幅を広げていく。

「スポーツでは勝ち負けが大きな要素ですが、観戦した試合でひいきのチームが勝つとは限りません。天候に恵まれないこともある。そうなると必ずしも楽しい一日になるとは限りませんが、スタジアムの空間で何か楽しめることがあれば変わってきます。そこでのファンサービスを担うことが、ボランティアの役割の一つでもあると思ってます」

自分で場を作り、自主的に。それがボランティア

サンウルブズのボランティアリーダーとして参加者を引っ張る

一般的にボランティア活動の基本理念は「公共性」「自発性」「先駆性」の三つとされている。勝田さんはこれまでの経験から、とくに「自発性」が大切だと感じている。

「ボランティアの仕事は本来、与えられるものではないです。与えられたことをこなすだけでは質も落ちます。自分たちで場を作って自主的にやるのが、ボランティアだと思います」

スポーツもボランティアも、楽しむ気持ちがもちろん必要だ。自発的に楽しみながらやっていれば、よりよくするためのアイデアも生まれてくる。

「そういう姿勢で“支える”ボランティアから一歩進んで“関わる”ボランティアになれたら、自分たちでスポーツを“創る”こともできます。2012年のロンドンオリンピックでは、ボランティアを“ゲームズ・メーカー”と呼んで、運営者の一人という位置付けにしていました」

ボランティアは決して受動的な気持ちでやる奉仕ではない。勝田さんのように能動的なスタンスで活動を自発的に楽しむ人が増えれば、スポーツとの関わり方の“幅”がさらに広がる。
「スリーチアーズ」を初めとしたスポーツを通じたボランティアの輪が広がることもまた、ラグビー界、スポーツ界の発展につながっていく。

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