日本一で有終の美を! 自信と確信を持って挑む関学・足達一馬の最後の跳躍
第88回大阪陸上競技選手権大会
7月23日@ヤンマースタジアム長居
足達一馬(関西学院大)
男子走幅跳1位7m91(追い風1.7m)大会新記録、自己ベスト
7月23日に行われた大阪陸上競技選手権大会。新型コロナウイルスにより、他の大会の中止や延期が相次ぐ中で異例の幕開けとなった。ラストイヤーを迎えた4年生にとっては貴重な機会。走り幅跳びで出場した関西学院大学の足達一馬(4年、大阪桐蔭)もその1人だ。
「長いトンネルをようやく抜け出せた」と喜びを口にした足達。今季初戦で7m91を叩き出し、3年ぶりの自己ベストを更新。さらに26年ぶりとなる大会記録を更新し、歴史に名を刻んだ。
「とにかく記録を残したかった」と足達。今後の大会の有無も分からない中で確実に爪痕を残したいと挑んだ今大会。「開催していただけたことに感謝している」。チャンスをしっかりとつかみ取り、自分の力を証明した。
SNSで目にした心ない言葉
足達は高校3年時にインターハイで優勝。大学でも日本一を目指してきた。1年時は国際大会に出場するなど、順調に経験を積んだ。2年時の春には自己ベストを更新。しかし、それから右肩上がりとはいかなかった。
コンスタントに更新してきた自己ベストを更新できず。また、けがも重なり思うように練習できない日々。自信をなくすこともあった。そのようなとき、SNSで目にしたのは「インターハイチャンピオン終わったな」という心ない言葉。顔も知らぬ誰かの言葉。苦しかった。
だが、足達の心が折れることは決してなかった。「見返してやる」。陸上に対する思いは揺らぐことはなかった。高校は高校、大学は大学。過去の栄光にすがらず、足達は前だけを向いていた。
自分の記録を陸上界に残したい
転機が訪れたのはふとした瞬間だった。踏み切りでブレーキがかかってしまっていることに悩んでいた足達は昨年の6月、なんとなくフォームを変えて飛んでみた。すると意外にもしっくりとはまった。
中学1年時から続けてきたフォームを変えることは大きな決断。だが、「悩みを解決するにはこれしかない」と素直に変更することができた。そこから徐々に記録は安定。冬季の練習も積み、春には自己ベストが出せるという手応えをつかんでいた。
その矢先のことだった。新型コロナウイルスの影響で大会どころか、練習すらもできなくなってしまった。開いている競技場もなく、できることは家の中での軽いトレーニングや走ることのみ。ここで調子を落としてしまえば、「全部台無しになる」。不安もあった。しかし、足達は自己ベストが出せることを確信していた。いつ大会があっても万全に挑めるように、変わりゆく環境に冷静に対応。自分の記録を陸上界に残したいという強い思いを抱き続け、厳しい状況を乗り越えた。
足達がここまで結果にこだわるのには理由があった。「お世話になった人に恩返しがしたい」。応援してくれている両親、けがの治療に当たってくれた先生、コーチ、チームメイト、周りで支えてくれている人たちを喜ばせたい。自分が結果を残すことで活力を与えたい。それまでは絶対に折れない。ラストイヤーだからこそ思いは一層強かった。
日本一の称号を手に入れる
足達にとって、9月に開催される全日本インカレは最後の挑戦となる。大学に入ってまだ日本一を勝ち取れていない。過去3回挑戦し、昨年は5位入賞を果たすも記録には「全然届かなかった」。だが、今年は自信を持って戦っている。
大阪選手権でこれまでの努力の成果を発揮したことで、まだまだ記録を伸ばせると自信を得た。日本一へのモチベーションは高まるばかりだ。「インターハイ優勝前と同じ気持ち。ワクワクしている」。どんな状況も乗り越えてきた足達。期待と自信を持った今なら確実に狙える。常に目標にしてきた日本一で有終の美を飾る。