サッカー

「法政大のジョーカー」FW田中和樹はハングリーさも現在地も見失うことはない

類いまれな万能性で法政大のジョーカー的役割を担うFWの田中和樹

東京都サッカートーナメント学生系の部決勝

8月29日 会場非公開
法政大 1-0 中央大

一瞬でトップスピードに乗る爆発的な加速力を持ち、最前線での体を張ったボールキープや守備に奔走することもいとわない。加えてパワフルなランニングで攻撃を牽引し、両サイドも中央もこなす実力を持つ。類いまれな万能性で法政大のジョーカー的役割を担っているのが、FW田中和樹(3年、浦和学院高)だ。昨年の天皇杯ガンバ大阪戦で先制点をアシストするなど結果を残してきた彼だが、現状に満足しきれない理由がある。

同じ埼玉の先輩を追いかけて法大へ

栃木県に生まれ、ヴェルディSS小山でプレーしたあと、高校は埼玉県の浦和学院に進んだ。元日本代表FWであり、名古屋グランパスなどで活躍した森山泰行さんが監督を務める環境で実力をつけ、高校3年次にはFC東京の強化指定選手に。FC東京U23の選手として、J3で2試合に出場、現在はスペインで活躍する久保建英選手ともプレーした。

高校でプロとのレベル差を実感し大学進学を意識

プロでプレーした周りのレベルについて、「止める、蹴るの技術で差を実感しました」と表現する。夏ごろにけがをしたこともあり、「本当にプロでやれるのか」、自分の中で一抹の不安が生まれた。大学に進もうと意識したのもそのころだったという。

「同じ埼玉の先輩の紺野和也選手(武南高、法政大、現FC東京)や、橋本陸選手(西武台高、法政大、現福島ユナイテッドFC)があこがれで、一緒にやってみたいと思って法政に進みました」。同じ埼玉の先輩を追いかけて、大学サッカーの門を叩いたのだ。

レベルの差を体感したプロとの対戦

「FC東京で感じたレベルに近い練習をやっていると感じました」と大学入学当初を振り返る田中。のびのびとプレーできる質の良い環境と、先輩たちの助けもあり、彼は段々と自信を取り戻した。1年次の前期リーグ開幕戦に途中出場し、2年次にはトップチームでの出場が増えた。そこで迎えたのが天皇杯。かつてレベルの差を体感したプロとの対戦だった。

2年にはジャイアントキリングの立役者となった田中だったが……

3回戦のガンバ大阪戦で、FWとして、日本代表の三浦弦太らとマッチアップ。大西遼太郎(現FC岐阜)の先制弾をアシストし、ジャイアントキリングの立役者となった。しかし田中は「正直何もできなかったですね。このままじゃプロになれないと感じました」と静かに話す。高校生で感じた不安、天皇杯で感じた力の差、全てを払拭するような圧倒的な実力を身につけてプロになるために、田中の心に慢心など一つもない。

理想と現実を幾度となく見つめ直して

いま口にする課題は安定したメンタリティ。絶対的な選手になるためには、波のない実力が必要だ。好調時の実力は申し分ない彼だからこそ、調子が安定しない自分にふがいなさを感じている。

即戦力として活躍するために、田中は常に変化し続けている

「今の自分をリセットして変わっていかないといけないと思いますし、変わった自分を継続することが、来年の自分やプロへの道へつながっていくと感じています」。自分の理想と現実を幾度となく見つめ直してきた。プロ相手に肌で感じた差を埋めるため、即戦力として活躍するため、田中はハングリーさも現在地も見失わない。