同志社フィギュアスケート・船越宝 最後まで全力で駆け抜けるラストシーズン
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、第93回日本学生氷上選手権(インカレ)の中止が決定された。全国各地の学生スケーターが集まる年に一度のこの特別な試合を目指し、多くの学生スケーターたちは努力を積み重ねてきた。練習時間の制限や大会の中止など前例のない状況が続く中、ラストシーズンを迎える同志社大・フィギュアスケート部の船越宝(4年、長田)は、凛とした態度で前を見つめている。
大学入学後に競技生活を再スタート
長い手足を生かしたダイナミックな演技で、会場中の視線を惹きつける船越。曲に合わせた表情、堂々とした滑りは多くのスケートファンを魅了してきた。
幼いころにスケートを始めるも、受験やけがで一度、競技からは離れた。それでも、スケートを好きな気持ちに変わりはなかった。大学入学後、フィギュアスケート部の存在を知り、再びリンクに戻ることを決意。学校生活との両立を図りながら、競技生活を再スタートさせた。
しかし、限られた時間の中で練習、勉強の時間を確保させることは、理工学部に所属する船越にとって簡単ではない。「今年こそは全日本インカレに」と意気込み、挑み続けた西日本インカレでは、スケートだけに照準を合わせきれず、目標の場所には届かずにいた。
切磋琢磨しあい、高め合った仲間たち
迎えたラストイヤー。学業も落ち着き、これまで以上に練習に力を入れていた。「今年は最後なので、夏の間は今まで以上に練習に力を入れるぞと思って、いつも以上に滑っていました」。西日本インカレに向け、着々と練習を重ねていたとき、全日本インカレ中止が知らされる。
突然の発表にも、落ち込む素振りは見せなかった。「意外とモチベーションは保てている」。真っ直ぐと前を見据え、言葉を続けた。「1つ試合がなくなったというのはすごく残念。でも、同期たちと出られる関西インカレはまだ残っているので」。仲間への思いは、船越の気持ちを奮い立たせる。
残りのスケート人生、落ち込んでいる暇はなかった。苦楽を共にしてきた部員と挑む試合は、あと少し。「同回の子が滑っているって思うから一緒に頑張れてきた」。学業との両立に苦しむときでも、周囲の存在が支えになった。互いに切磋琢磨しあい、高め合った仲間たちに最高の演技を届ける。強い思いを胸に秘め、練習に励んでいる。
「納得のいく演技をしたい」
ラストシーズンを彩るのは、『ビートルジュース』。ホラーコメディ映画の曲調に合わせた、お化けをイメージした振り付けに注目だ。「この『ビートルジュース』が一番好きで、気に入っていて踊りやすい」。船越の魅力が詰まった演技と共に、ラストイヤーを輝かせる。
冒頭に2Aを2回入れるなど、表現面だけでなく技術面にもこだわった。演技の最後まで、ステップやスピンで見せ、見る人を楽しませるプログラムとなっている。
「結果よりも納得のいく演技をしたいです。部員とかみんなが喜んでくれたらいいなと思います」。優しい笑顔で仲間への想いを綴り、次戦への意気込みを語った船越。
例年通りにはならないことも多い。それでも、決して下を向くことはせず、大好きなスケート、仲間への想いを語ってくれた。シーズンは始まったばかり、自分らしさを貫き最後まで全力で駆け抜ける。