陸上・駅伝

特集:第97回箱根駅伝

箱根駅伝でシードを逃した明治大学 「弱いから」では終わらない再起への道

箱根デビューの1区児玉(右)は16位で襷渡しをすることになった(撮影・北川直樹)

第97回箱根駅伝

1月2、3日@大手町~箱根の10区間217.1㎞
明治大学
総合11位 11時間06分15秒
往路 14位 5時間36分03秒
復路 7位 5時間30分12秒

「4強」と評され優勝候補の一角にも挙げられた明治大学。しかし現実は甘くなかった。1区での想定外の出遅れに始まり、なかなか悪い流れを断ち切れず。5区鈴木聖人(3年、水城)は14位で芦ノ湖へ襷(たすき)を運んだ。

巻き返しを誓った復路。全日本大学駅伝でも快進撃を見せた大保海士(4年、東海大福岡)が8区で区間賞の走りを見せる。続く9区の富田峻平(2年、八千代松陰)も、一時シード圏内10位へ浮上するなど奮闘した。それでも最後まで流れを引き戻せなかった明大。目標の5位以内にも及ばない総合11位に終わった。

総合11位、シード権まで26秒届かなかった(撮影・藤井みさ)

わずか26秒差でシード権を逃すまさかの展開。1、2区のブレーキが明暗を分けた要因であると言っても過言ではない。序盤の流れが最後まで大きく響いたことから、改めて山本佑樹駅伝監督が「駅伝は流れが大事」だと痛感させられたと語ったレースであった。

1、2区で作れなかった流れ

1区を任せられたのは、チームで唯一の1年生エントリーとなった児玉真輝(鎌倉学園)。スターターは全日本大学駅伝に続き2回目だったが、箱根という特別な舞台で重圧がのしかかった。

スローペースから始まり、ペースの揺さぶりが続く展開。「14kmくらいから足がきつかった」。六郷橋の下りからは先頭集団から遅れを取ってしまい、16位で襷を渡す。箱根デビューは「難しさというか厳しさを感じた」と苦しいものとなった。

2度目の花の2区を走るも流れを変え切れなかった加藤(左、撮影・藤井みさ)

児玉から襷を受け取ったのは、昨年度も2区を走った加藤大誠(2年、鹿児島実業)。前回はエース区間としてではなくつなぎの区間として起用された。加藤は「花の2区として使い切れなかった」と振り返った。

「今回2区なら『花』ということをベースに」と自信を持って再び2区に挑んだ。しかし得意な単独走をうまく生かせず。昨年度のタイムよりも約2分遅い1時間9分48秒で区間17位に。最終的にシード権まで26秒差だっただけに「2分の差がなければ」と唇をかんだ。

確かなる実力を持つ2人

失速は実力不足か。そう言い切れない強さを2人は秘めている。1区・児玉の強みの裏にあるのは座右の銘「努力は裏切らない」だ。

今年度の1年生はスーパールーキーぞろいと名高い。箱根駅伝予選会で日本人1位の順天堂大・三浦龍司(洛南)や12月の日本選手権5000mでU-20日本記録更新の中央大・吉居大和(仙台育英)など数々の注目を集めてきた世代だ。その学年の一人であるにも関わらず児玉は彼らに対し「今年無理して勝とうと思う必要はない。すぐに結果が出るわけではない」と先を見据えてあえて自分のペースを保つ姿勢を貫いてきた。

そんな児玉は、チームでも一目置かれる存在。大保からは「1年生ですけど勝てないような選手」、山本監督は「安心して見ていられる」と先輩、監督からの信頼を築いてきた。この信頼を次は走りで体現したい。

一方、加藤は2年連続でエース区間を勝ち取った実力者だ。昨年度は1年生歴代2位のタイムを出した。それでも結果に満足することはなく「学年のトップレベルで戦っていきたい」と飛躍を誓った。

この1年間で「1番武器にできた」といえるほどスピードに磨きをかけた加藤。5000m、10000mともに自己ベストを更新し着実に成長を遂げている。今回の敗戦も加藤の野心を奮い立たせることに違いない。

この失敗を再起へ

「弱いから」。この言葉では片付けないと山本監督は語る。実際に10000mの上位10人の平均タイムは出場校の中で2位と確実に力のあるチームだ。課題はこの力を発揮できるかにある。流れに乗るだけではない、自らがつくり出す。そんな選手が厳しい戦国駅伝時代には必要とされる。

今回不発に終わってしまった児玉と加藤。この2人がこれからどれだけ成長し殻を打ち破れるかがチームの命運を握る。次こそは負けない。悔しさをはねのけ箱根路へと一歩踏み出している。




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