フィギュアスケート

吉田唄菜、森田真沙也の「うたまさ」カップル 全日本優勝へ「大きな差をつけて勝つ」

全日本選手権優勝の期待がかかる吉田唄菜、森田真沙也組(すべて撮影・浅野有美)

フィギュアスケートのアイスダンスで、吉田唄菜(うたな)、森田真沙也組(木下アカデミー)は、カップル結成1年目で全日本選手権3位、四大陸選手権10位と健闘した。「うたまさ」の愛称で人気のカップル。今年の全日本へ「優勝は絶対」と闘志を燃やす。2026年、そして2030年の冬季オリンピック出場に向けてひた走る。

悔しさもうれしさも味わった昨シーズン

同志社大学3年の森田真沙也(京都両洋)と吉田唄菜(うたな、N高)は昨年6月にカップル結成を発表した。全日本ジュニアチャンピオン同士で、アイスダンス経験が豊富な2人はすぐに実力を発揮した。

昨年12月の全日本選手権では、リズムダンス(RD)でツイズルにミスが出て3位と出遅れたが、フリーダンス(FD)はリフトやダブルスピンなどで魅了し、109.17点で1位に。優勝した小松原美里、尊組にわずか5.22差の合計173.17点で総合3位に入った。今年2月にはシニア初の大舞台、四大陸選手権にも派遣され、総合10位と健闘した。

吉田は「とても充実した1年で、本当にあっという間に過ぎていきました。大会ごとに悔しい思いもすごくうれしかった思いもいろいろ経験できましたし、その大会ごとに新しい収穫があったので、成長した年になったなと思います」。森田は「全日本は大きなミスがあった悔しさ、四大陸は緊張しすぎていつもどおり100%を出し切れなかった悔しさがありました。それがオフシーズンのモチベーションになりました」と振り返った。

昨シーズンは四大陸選手権に出場し、世界のレベルを感じ取った

今シーズンは2人の物語を見せていきたい

吉田、森田組は2大会連続オリンピック日本代表のキャシー・リード・コーチに師事し、京都府宇治市のリンクで練習を積んでいる。

アイスダンスではコミュニケーションが重要になるが、2人は同学年で意見を出しやすい雰囲気だという。「リンクの上でもやりにくいところはきちんと言ったり、ここはもうちょっとこうしてくれた方がやりやすかったと言ったり、しっかり会話ができています」と吉田。森田も「練習中もそうですし、練習以外でも、自分の中のスケートに対する気持ちなどメンタル面を唄菜ちゃんに学ばせてもらうことが多くて。スケートへの向き合い方も変わりました」と話す。

例えば昨シーズンのFD。マッシモ・スカリ振付の「Rise of the Phoenix」で、吉田が不死鳥、森田はそれを支える影を表現した。「スケーティングだけではなくて、男性としてどう女性を目立たせるかというのをたくさん勉強させてもらった」と森田は成長を実感する。

2人の武器はスピードと伸びやかなスケーティング、華もある。強みを伸ばしながら技術やフィジカルの強化を図る。

シニアの大会を通じて課題に感じた表現も磨いている。「私たちは表現面がまだまだだなと感じて。今シーズンは2人の物語みたいなものをどんどん身につけて見せていきたいなって思います」と吉田は言う。

華やかなパフォーマンスで目を引く

目標とする現役カップルとして、吉田はマジョリー・ラジョア、ザカリー・ラガ組(カナダ)やクリスティーナ・カレイラ、アンソニー・ポノマレンコ(アメリカ)を挙げた。「マジュリー、ザカリー組はすごい勢いで滑るかっこよさと、クリシティーナ、アンソニー組は映画を見ているような気分になれるので、自分たちもそんな雰囲気を出したいなって思います」

森田は、2024年世界選手権銀メダルのパイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組(カナダ)が憧れ。年齢が近いイム・ハナ、クァン・イェ組(韓国)も意識するカップルだ。「昨シーズンのFD『シェルブールの雨傘』は2人で作り出す空気感が勉強になったので、今シーズンに生かせていけたらなと思っています」。ライラ・フィアー、ルイス・ギブソン組(イギリス)の迫力とパッションあふれる演技も好きだという。

ブルーム・オン・アイスではオシャレなプログラムで魅了

毎シーズン着実にレベルアップを

本格的なシーズンに入り、プログラムも仕上がっている。

今シーズンのRDの課題は「1950、1960、1970年代のソーシャルダンスとスタイル」。吉田、森田組は「BE-BOP-A-LULA」と「Whole Lot-ta Shakin'Goin'On」を選曲した。リード・コーチが振り付けを担当する。FDは、これまで数多くのカップルが名作を生んできた「ロミオとジュリエット」。振り付けにはアイスダンス界で著名なスコット・モイア、マディソン・ハベル、アドリア・ディアスの3人が携わった。対立する家同士の男女の恋愛を描いたストーリーを情熱的に演じる。

9月19日から始まるネーベルホルントロフィー(ドイツ)に出場予定で、11月のグランプリシリーズNHK杯(東京)にもエントリーしている。そして12月の全日本の優勝は2人にとって絶対条件。「昨年は負けてしまった全日本で、今年は大きな差をつけて勝ちたいです。点数では総合180点を超えていけたらと思っています」と吉田は力強く宣言する。

2022年北京オリンピック代表の小松原美里、尊組が今年4月にカップルを解散。アイスダンス界は若手カップルが切磋琢磨(せっさたくま)する様相になりそうだ。

日本のアイスダンス界を引っ張っていく「うたまさ」

2人が目指すのは、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ、そして2030年にフランスのアルプス地方で開催される冬季オリンピックだ。

8月にはオリンピックを見据えた日本スケート連盟による強化合宿がイタリアで行われた。2人も参加し、1年半後に迫る夢舞台に思いを馳せた。「すぐオリンピックのシーズンになっちゃうので、結構焦ってるんです。今シーズンがポイントになってくると思うので、世界(の大会)に出て、どんどん上の順位に食いついていきたい」と吉田。森田も「毎シーズン毎シーズン着実にレベルアップしていけるように頑張ります」と、飛躍を誓った。

希望に満ちあふれる「うたまさ」ペア。まずは全日本の頂点に向けてまっしぐらに突き進む。

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