サッカー

中央・大橋祐紀 得点王よりも後輩を1部へ

最後の最後に魅せたのは、絶対的エースのFW大橋だった

関東大学リーグ2部第15節

10月6日@中央大学多摩キャンパスサッカー場
中央大(勝ち点36) 2-1 慶應義塾大(17)

後半44分からの逆転劇

関東2部のトップを走る中央大が、ドラマのような勝ち方をやってのけた。

試合前の時点で2位の立正大に勝ち点6の差をつけていた中大。その原動力はJ1湘南ベルマーレへの入団が決まっているキャプテンでFWの大橋祐紀(4年、千葉県立八千代)だ。前節まで16ゴールを決め、得点王争いを独走。当然、慶應には目の敵にされた。「9番が狙ってるぞ」。慶應のGK上田朝都(3年、横浜FM・Y)は序盤から何度も叫んだ。大橋は徹底マークにあった。中大はパスを回しながら隙を狙うが、慶應のディフェンスは崩れない。そして前半29分、慶應のDF鴻巣良真(4年、國學院久我山)がフリーキックから頭で決めた。中大は攻めきれない。前半を0-1で終えた。

後半、慶應は引いてきた。中大はボールキープするものの、ゴールが遠い。ジリジリするような膠着状態が続く。試合残り1分、中大に待ちに待った瞬間がやってきた。ゴール前に放り込み、DF渡辺剛(4年、山梨学院大付)が頭で落としたところをDF上島拓巳(4年、柏U-18)が決めた。ここは中大の“ホーム”だ。応援に回ったメンバーや観衆がどっと沸く。試合の流れが、一気に中大へ来た。

アディッショナルタイムに突入。さあ、エースの出番だ。MF中村亮太朗(3年、新潟明訓)がボールを持つと、大橋はディフェンスの隙を狙って走り込む。中村のクロスに少し体を戻しながら頭で合わせると、劇的すぎる決勝ゴールとなった。中大にとって手応えのなかった後半44分までの苦しみが、一瞬にして報われた。

徹底マークの中、大橋は一瞬の隙を突いた

信頼を力にしてエースは結果を出す

「苦しい試合を勝った意味は大きいです」。中大OBで元日本代表の手塚聡監督は、試合直後にそう語った。リードを許した時間が続いても浮足立つことなく、諦めずにやり抜いた結果が逆転勝利につながった。「4年生が多い分、リードされても『これからいくぞ』という安心感がありました」。エースの大橋は笑顔で熱戦を振り返った。

最後の最後に大橋が決めたという事実は、中大が残り7試合を戦う上で大きな力となる気がする。2位の選手に8ゴール差をつけ、大橋はまた初の得点王へ一歩近づいた。

彼は最初からこの輝きを期待された選手ではなかった。手塚監督は「4年間で最も成長を遂げたのが大橋」と評した。彼が1年生だったとき、中大は1部にいた。当時MFだった大橋は先発出場が1度、途中出場が2度と、トータルでも90分未満しかプレーできなかった。そしてチームは2部に落ちた。大橋の転機は3年生のときに訪れた。4年生FWの矢島輝一(現FC東京)が全日本大学選抜の遠征中に負傷し、大橋に大役が回ってきた。ここで期待に応え、17試合で13ゴール。それでも、ギリギリで1部に上がれなかった。チャレンジ3年目、悲願の1部昇格まであと一歩だ。

私が大橋に「この4年間で自分が成長できたところはどこですか」と尋ねると、「なんだろう……。難しい質問ですね」と笑った。しばらく考えて出した答えは「チームの信頼ですかね」だった。みんなのパスをゴールへとつなげることで、「大橋に託せばやってくれる」という信頼が生まれ、次第にボールを預けてもらえるチャンスが増えた。この日の決勝ゴールだってそうだ。4年間で培われた信頼が、その土台にある。

「大橋に託せばやってくれる」その信頼が大橋をエースにした

大橋は「得点王よりも1部昇格」と言いきる。「1部と2部では、将来的な視野を広げるという意味でも違います。そういう土俵で後輩たちがやれるということに、一番価値があると思います。1部にいた方が、高校生にも『中大にいきたい』と思ってもらえるはずです」と熱っぽく語った。そのためにも、どんな状況であっても狙って点がとれる選手でありたい。熱い想いを胸に、大橋は今日もゴールへ向かってプレーする。

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