バレー

“常勝チーム”早稲田男子バレーは一つになれるか

早稲田はいま、チーム力の底上げを求められている

関東大学リーグ男子第4節

9月16日@キッコーマンアリーナ(流山総合体育館)
早稲田大(4勝) 3-1 駒澤大(2勝2敗)

開幕4連勝しても、早大の松井泰二監督は険しい表情だった。「いまのままではダメだというのは、自分たちで気付いてると思うんですよ」。主将の藤中優斗(4年、宇部商)も開口一番で「入りが悪かった」と漏らした。

柱だったリベロの不在

早大は今年、春のリーグ戦と東日本インカレの2つのタイトルを獲得している。藤中はその高いディフェンス力を持ち味としてチームを引っ張ってきた。さらにジャカルタのアジア大会代表に選ばれた実力とムードメーカーとしての明るさを持つリベロの堀江友裕(3年、開智)も、チームの柱になっていた。その堀江がケガで秋は出られない。早稲田はリベロを1年の北川諒(早稲田実)に託した。

駒大には北川を狙われた。フォローが遅れて失点が重なり、駒大ペースに。第1セットを落とした。第2セットでは、藤中のレシーブからの村山豪(2年、駿台学園)のクイック、そして村山得意のブロックで、早大が流れを取り戻す。第2セットをとると、あとは危なげなく3-1で勝ちきった。

チームがひとつになるために

快勝とはいえ、今後を考えると立ち上がりの悪さが気になる。松井監督は「藤中と副キャプテンの小林(光輝、4年、創造学園/現・松本国際)はいま、悩んでるんだと思う。チームに『ワーッ』となる雰囲気が出てないんです。堀江がいない状況でどうしたらいいのか、もっと考えて全体を見てもらいたい。本来の自分たちの力を出すにはどうしたらいいか、もう一回しっかり考えて実践できれば、最初からスッといけるはず。力はなくはないと思うから」。期待をこめて、そう語った。

松井監督は選手たちに任せるスタイルをとっている。それは、試合中の作戦タイムの様子からも分かる。選手たちが輪になって話し合っているとき、監督はベンチに座ったままデータを確認している。「実際にやっているのは彼らですからね」と松井監督は言う。最終的に求められるのは選手自身の状況判断力。外から見れば分かることを、コート上でも分かるようになる。リーグ戦を戦いながらこのトレーニングを重ね、11月の全日本インカレに備える。

藤中は言う。「普段は堀江がプレーも含めてムードメーカー役を担ってくれてたんですけど、いまは『誰がやるの?』というような雰囲気になりがちです。そのあたりは、僕も含めた4年生が率先して声を出していかなければならない」

試合中にはしゃぐタイプではないと自認する藤中だが、いまはチームを盛り上げるため、得点後は意識的に笑うようにしている。自分でアタックを決めてもガッツポーズはせず、ただ笑顔で仲間に駆け寄る。春のリーグ戦では「最優秀賞」「レシーブ賞」「会長特別賞」を総なめにしたが、「みんなのおかげでとらせてもらったような賞です」と一歩引く。そんな藤中らしい雰囲気づくりに取り組んでいる。

「はしゃぐタイプではない」と話す藤中だが、チームを盛り上げるために、笑顔を心がけている

兄の背中を追って

藤中は来春の卒業後、Vリーグでプレーする。バレー人生のきっかけを与えてくれた兄の謙也(宇部商→専修大)はサントリーの選手だ。兄弟対決について尋ねると、「同じようなタイプなので、これからはライバルというか、越えていかないといけない存在だと思ってます。きっと兄貴も、僕には負けたくないって思ってるでしょうね。同じステージに立って戦えることがすごく楽しみです」と笑顔を見せた。

この日、筑波大が慶大にストレート勝ちし、セット率で早大を抜いて首位に立った。当然ながら、藤中は動じない。「最終的に全部勝てば何の問題もないです。誰ひとりとして気にしてる選手はいないと思います」。そして、奮闘する1年生に触れた。「北川の一生懸命さが、僕らにとっても力になってます。チーム全員で一つひとつ勝っていきたい」

松井監督の言う「ワーッ」となる雰囲気は、藤中が言うようにチーム全員がギュッと一つになって初めて、出てくるものなのだろう。集大成の秋から冬へ。早大の行方が楽しみだ。

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