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アメフト 明治の西本、アイツのいた場所へ

明大の西本はQBとしてのリーダーシップを課題にする

関東大学リーグ1部TOP8第3節

9月29日@アミノバイタルフィールド
明治(2勝1敗)17-0立教(1勝1敗)

雨の中での戦いは、明治が立教に完封勝ち。ディフェンスが踏ん張り、OL(オフェンスライン)の5人が得意のゾーンブロックで開けた穴を、自慢のRB(ランニングバック)陣が駆け抜けた。そして10-0の第3Q終盤、QB(クオーターバック)西本晟(じょう、2年、箕面自由学園)が右腕を振り抜いた。

自陣45ydから始まった攻撃シリーズ。まずは西本が右サイドへ出たWR(ワイドレシーバー)渡邉圭介(3年、日大三)へパスをヒット。渡邉は相手のタックルをひらひらとかわして22ydの前進。敵陣33ydに進み、RB小泉亜斗夢(3年、足立学園)に持たせ、3yd前進。第2ダウン残り7ydでTDを狙うパスのコールが入った。「よし」。春からずっと練習してきたパスだ。西本に自信がみなぎる。理想的な軌道で中央付近に投げたパスを、エンドゾーンで少しだけ相手のマークを外したWR川端晃太郎(4年、明大中野八王子)が確実にキャッチ。待望の追加点に川端は雄叫びをあげ、西本はガッツポーズを繰り返した。

降りしきる雨の中、タッチダウンパスを決めた西本

同い年のライバルを追いかけて

勝利のあと、観客席に向かって整列。主将のLB(ラインバッカー)茂木崇宏(4年、佼成学園)が「本日は悪天候の中、応援ありがとうございました」と大きな声であいさつすると、背番号順に並んだ選手たちが頭を下げた。頭を上げた西本の口から、思わず「よっしゃ」という声が出た。

西本は30ydのTDパスを振り返り、「ディフェンスが頑張ってたんで、何とかもう1本タッチダウンがほしい場面でした。そういうとこを一発のパスで決められてよかったです」と興奮冷めやらぬ感じで話した。前節の早稲田戦では攻撃の獲得距離で106ydも上回りながら、3度のターンオーバーが響いて32-42で負けた。そこからの2週間、「しょうもないミスをなくす」というテーマでやってきた。この日も試合序盤のプレー中に、西本自身が相手にオフサイドの反則があったと勘違い。オフサイドなら、無理めのところに投げてインターセプトされても、反則をとれば帳消し。そう思って投げたパスが相手に奪われると、果たしてオフサイドはなかった。ただ、ミスらしいミスはそこだけ。雨を予想して、水でぬらしたボールで投げ込んできたのも生きた。

小学2年でフットボールを始めた西本は、大阪・箕面自由学園高3年のとき、関西と関東のいくつかの大学から勧誘を受けた。明治の練習に参加し、学生主体で取り組む姿にひかれた。「これまでは指導者の方がガチッといるチームだったんで、すごく新鮮でした。ここでやったらフットボールIQも上がるやろなと思いました」。そして大阪から東京へやってきた。

昨秋は第6節の中央大戦からスタートQBを任された。1年生のシーズンで先発できること自体がすごいが、長年の同い年のライバルは、ずっと上をいっていた。
その名も林大希(たいき)。昨年、1年生ながら日大のエースQBとなり、第3節の明治戦からは歴代のエースがつけた10番を胸に戦った。27年ぶりの甲子園ボウル制覇の立役者となり、1年生では初めて年間最優秀選手と甲子園ボウルMVPに同時に選ばれた。

お互い小学校からフットボールに親しんだ西本と林は、中学生になると大阪ベンガルズでチームメートになった。試合では攻撃シリーズごとに、西本がQBなら林がRB、林がQBなら西本がRBと併用された。当時を思い返し、西本が言う。「アイツはリーダーシップがすごかった。フィジカルも強かったし、QBに必要なものはすべて持ってたと思います」。西本は、最大のライバルが一番身近にいるという3年間を過ごした。

高校はそれぞれが大阪の強豪校に進んだ。関大一高に進んだ林は、成績が足りずに大阪府立大正高に転校。10数人しかいない弱小校だ。そこでも腐らずにフットボールと向き合った。
高2の冬、ニューイヤーボウルという大会の大阪選抜に2人そろってQBで選ばれた。林が1本目、西本が2本目の扱いだった。西本は言う。「あそこで評価に差がつき始めて、くそーと思いました」。実際、その試合で林は日大のコーチの目にとまった。

ライバルの林へ対抗心を隠さない西本

「エース同士でやって、絶対僕が勝ちます」

同じ関東1部TOP8の大学へ進学したが、昨シーズンの結果はくっきり分かれた。林がエースとして甲子園ボウルに勝ったのに対し、西本は終盤にエースとなったが、入れ替え戦に回った。「林は中学からの仲間やから、活躍したらうれしい気持ちもあるんですけど、正直めちゃめちゃ悔しかったです」。西本は1年前を振り返って、顔をしかめた。一連の問題で、日大は今シーズン試合ができない。これまた西本は悔しがった。次に公式戦で林と勝負できるとしたら、4年の秋のシーズンとなりそうだ。西本は真顔で言った。「エース同士でやって、絶対僕が勝ちます」

2年生でエースQBを務める西本を、たくさんの人が支えてくれているという。中でも4年生QBの阿江保智(あえ・やすとも、六甲学院)は、事細かなアドバイスをくれる。それにOLの5人中4人が3年生以上で、フィールド上でも西本を落ち着かせてくれる。「去年は弱気になるときもあったんですけど、もうそれもありません。徐々に僕がリーダーシップを出して引っ張っていけるようにします」。西本が前を向いて言った。

すでに1敗を喫した明治だが、身長171cmと小さなエースは言いきった。「ここから全部勝って、学生日本一までいきます」。西本晟は1年前に林大希がいた場所へ向かって、突き進む。

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