大学アメフト

明治大アメフト部「グリフィンズ」、10年ぶりに定期戦で関学に勝利

関学に勝ち、喜びを爆発させる明治のWR九里(右)とQB西本

第71回定期戦

5月19日@東京・アミノバイタルフィールド
明治大27-26関西学院大
(関学の55勝14敗1分け、1休止)

アメリカンフットボールの関西学院大学と明治大学の定期戦が5月19日、東京都調布市のアミノバイタルフィールドであり、試合残り1秒からのプレーで明治大が17ydの逆転タッチダウン(TD)パスを決め、27-26で昨年の学生王者・関学に勝った。明治がこの定期戦で勝ったのは10年ぶりの出来事だった。

関学のエースQB奥野、早々に負傷退場

関学はエースQBの奥野耕世(3年、関西学院)が先発したが、最初のオフェンスシリーズで負傷。安西寛貴(2年、関西大倉)が攻撃の司令塔役を引き継いだ。関学は第1クオーター(Q)4分すぎ、42ydのフィールドゴール(FG)を失敗。明治が2度目のオフェンスシリーズでQB西本晟(じょう、3年、箕面自由学園)がWR九里遼太(くのり、4年、明大明治)へ33ydのTDパスを決め、7-0と先制した。すると関学は、直後のキックオフでリターナーに入ったRB三宅昂輝(こうき、3年、関西学院)が98ydのキックオフリターンTDを決めたが、トライフォーポイントのキックに失敗。関学らしくないミスにより、7-6と明治がリードを保った。

関学のエースQB奥野は試合開始早々で負傷退場

関学は奥野が負傷退場したこともあり、ラン中心のオフェンスを強いられた。ディフェンスがQBサックからのターンオーバーでつかんたオフェンスで、敵陣深くまで攻めながらファンブルロスト。これも試合巧者の関学らしくなかった。明治はここから西本のパスを中心に、約6分を費やしてドライブし、副将のRB小泉亜斗夢(あとむ、4年、足立学園)がTDを決め、14-6とリードを広げた。

関学は攻めきれない展開が続いたが、第2Q終盤にキッカーの安藤亘祐(4年、関西学院)が36ydのFGを成功させて14-9。第3Qにはディフェンスが相手のパントをブロック。LB繁治亮依(しげじ・りょうい、3年、関西学院)がそのままボールをエンドゾーンに持ち込み、ディフェンスで得点。14-16と逆転した。その後再び安藤の36ydFGで3点を追加、14-19としたが、パスが好調の明治が次のシリーズでTDを奪い、21-19とひっくり返した。

決勝の逆転TDパスを捕り、喜ぶWR九里(右)

最後まで関学に出た「らしくない」ミス

勝負の第4Q。関学の3番手QBとして登場した中岡賢吾(4年、啓明学院)がランとパスを織り交ぜながら前進したが、敵陣34yd地点で第4ダウンに追い込まれた。ギャンブルを選択した関学は、1年生ながら唯一メンバー登録されていたWR糸川幹人(箕面自由学園)に20ydのパスを決め、攻撃権をつなぐ。1年生の大仕事は、RB前田公昭(2年、関西学院)のTDランで結実した。21-26と関学が再び逆転した。

5点を追い、残り時間約3分からスタートした明治のオフェンスは、パスを封じられて3&アウトとなり、試合終了まで2分を残し、攻撃権は関学に。大勢は決したかと思われた。
関学はランで時計を進めるが、攻撃権を更新できずに、パント。パンターに入った安藤がスナップを受け、明治のラッシュを見ながらギリギリまで時間を使って蹴ろうとしたところ、明治のディフェンスメンバーが勢いよく襲いかかり、安藤がボールをポロリ。DL佐々木友也(3年、駒場学園)がボールを押さえ、ハーフライン手前という絶好のフィールドポジションで、明治が攻撃権をゲットした。これも関学というチームでは考えられないミスだった。

試合終了まで1分35秒。5点差だから、明治がTDすれば逆転だ。第4ダウンギャンブルを含めて3度のダウン更新で、明治はゴール前17ydまで攻め込んだ。試合残り1秒からのラストプレー。明治は西本のパスにかけた。レシーバーを3人配したフィールド左サイドへ向け、西本が右腕を振り抜く。ボールの落下点には、高校時代までバスケに取り組み、リバウンドが大得意だった九里。関学はDB北川太陽(2年、佼成学園)が競りにいった。北川はボールをはたき落としさえすれば勝ちなのに、捕りにいったがために、九里に体を入れられ、キャッチを許した。劇的な明治の逆転サヨナラTD。27-26で、この定期戦で10年ぶりの勝利を手にした。この日の関学は確かに万全のメンバーで戦えてはいない。とはいえ、最後の最後まで関学らしくないプレーに終始したのは確かだ。

明治のオフェンスを支えた小泉の走り

明治は、この春ここまでけがのために欠場していたRB小泉の走りがオフェンスのリズムをつくった。関学のベンチも小泉がボールを持つたび「アトム!! アトム!!」と彼の名を叫んでいた。主将のOL北村遼太朗(4年、関西大倉)、副将のDB徳茂宏樹(同、同)が東海大との試合で負傷し、この日グリフィンズの幹部として試合に出たのは小泉だけだった。自分の走りについて小泉は「復帰してまだ1週間なんで、正直、調子はまだ7割程度です。これまでRBで結果が出せてなかったので、最低限の仕事はできたのかなという感じです」。TDを挙げたランをはじめ、要所でナイスランを見せ、明治にモメンタムを引き寄せた。「本調子でなくても、自分が出たほうがいいと思ってました。(チームを)引っ張ってやれたのはよかったです」。パスを生かすという点でも、小泉がランで稼いだ62ydは大きかった。

明治の地上戦を支えたRB小泉

オフェンスは北村を含め主力が複数欠場し、OLのスタメンが2人入れ替わるという厳しい状況だった。パスプロテクションを長く持たせるのが厳しいという見通しから、ショートパスを中心に、経験豊富なWR陣で引っ張っていこうというプランだったという。オフェンスで2度もボールを失うというミスもあったが、その都度オフェンスリーダーのWR明松大雅(かがり、4年、横浜栄)が声を張り、仲間に気持ちを切り替えようと促した。「結果として、ミスのあともTDを取り返すことができました。やりきったら絶対に勝てるという気持ちが全員に浸透してました」と、明松は誇らしげに言った。

関西育ち、QB西本のプライド

QBの西本は言う。「関学のDLは大きくて、意識すると圧倒されてしまうので、プレー中はLBとDBしか見ないようにしました」。関学ディフェンスのプレッシャーが強かったため、プレーを壊さないために、ある程度ポケットで時間が経ったら、無理して投げずに捨てると決めていた。奥に投げ捨てたはずのパスがサイドラインに届かず、インターセプトされるミスもあったが、32回投げて18回成功したパスで226ydを稼ぎ、三つのTDを奪った。

第4Qのラストシリーズでは「普段から死ぬほど練習してる」という2ミニッツオフェンスを冷静に進め、残り1秒で九里に逆転サヨナラのTDパスを通した。最後は自信を持って投げ込んだという。試合を振り返り、「オーディブルが結構当たったのはよかったけど、(プレー前に)ディフェンスを見すぎて時間を使ってしまった。もっとテンポよく進めないとダメです」と、課題も自覚している。QBとしては「タイミングが甘い部分もあったけど、肝となるシチュエーションで決められたのはよかった」と、笑顔で話した。

TDを決めた小泉(背中)に抱きつく九里

関西大倉中、箕面自由学園と関西で育った西本。明治に来てから、スターターで出場した関学戦は今回が初めて。前日の夜は眠れないほど緊張した。中学のころから関学には一度も勝ったことがなかったために、心のどこかで「もう関学には勝てない」と思っていた時期もあったが、この日は自信を持って臨めた。「春の山としては、去年の秋に負けた早稲田にも勝つこと。秋にまた甲子園で関学とやれるように、ショートもロングも、パスの精度を上げていきたいです」と前を見た。

明治が最後に甲子園ボウルに出場したのは1985年。相手は関学で、46-48で競り負けた。いまも語り継がれる伝説の点の取り合いだ。昨秋は関東の2位となった明治。この日の勝利でさらにチームの本気度が上がれば、34年ぶりの甲子園も見えてくる。