甲子園沸かせた明大・丸山和郁、輝き始めた背番号8 選手権の顔・3
野球の第68回全日本大学選手権が6月10日、神宮球場と東京ドームで開幕します。4years.では、出場27校から4人の注目選手を「選手権の顔」と題して紹介します。3回目は明大スポーツ新聞部によるセレクションです。3年生の丸山拓郎記者が、この春ブレークした丸山和郁(かずや、2年、前橋育英)について書きました。
この春、不動のレギュラーに
丸山はオープン戦期間中にセンターの定位置をつかみ、着々と調子を上げてきた。立大との開幕戦でスタメンに名を連ね、リーグ戦初出場。その後も全12試合にスタメン出場し、打率は3割1分8厘をマーク。リーグトップの8犠打を決め、不動のレギュラーとして躍動した。
身長は173cmと小柄だが、最大の武器は何といっても足の速さだ。50m5秒8と超のつく俊足で、周囲が「ただ速いだけじゃない」と語るように、“野球に適した足”も持っている。スイングしてからの一塁到達タイムは3秒8と驚異的なスピードだ。その快足を存分に生かし、この春積み上げた14安打のうち実に8本が内野安打だった。守っても華麗なスライディングキャッチを見せたかと思うと、レーザービームを連発。何度も神宮のスタンドを沸かせた。「あの歓声はたまらなかったです(笑)」と、本人はいまも喜びを隠しきれない。
けがに泣いたルーキーイヤー
前橋育英高校(群馬)時代は“二刀流”で活躍。現・中大の皆川(喬涼)らとの140kmカルテットの一翼を担った。野手としては俊足・好打の外野手だった。3年夏の甲子園では3回戦までの3試合で、大会タイ記録となる8盗塁。聖地にその名を刻んだ。
大学では野手に専念し、即戦力としての期待も高かった。しかし、春のシーズン開幕直前に肩を脱臼。リーグ戦が始まると、スタンドには腕を白いギプスで固定して応援する丸山の姿があった。「相当悔しかったです。何もできないことへのもどかしさがありました」。さらに焦りを助長させたのが同期の活躍だ。寮で同部屋だった陶山勇軌(すやま、2年、常総学院)が秋にリーグ戦デビュー。初安打も放ち、守備でもシーズンを通じて存在感を放った。「さすがに陶山の活躍は意識しました」と、心にスイッチが入った。「勝負の春だと思ってます」と開幕前に意気込んだ通り、やっとチームの期待に好結果で応えた。
気持ちが先走ったリーグ戦後半
春のリーグ戦を振り返り、丸山は「めっちゃ疲れました……」と本音を漏らした。2カ月に及ぶリーグ戦は高校野球とは違い、調整のよしあしや心の持って行き方が大きくプレー出てくる。疲れのたまった後半は「塁に出ようという気持ちだけが先走ってしまった」と丸山。ボール球にも手を出し、三振も目立った。それに加え、「やっぱり六大学の伝統あるチームは違う。しかもそこの背番号8なので……」。
周囲の期待や長年にわたって積み上げられた伝統といった、目には見えないものを背負いながらの戦いだった。それでも戦い抜いた。「ポジショニングとか、投球間のコミュニケーションとか、課題はまだまだあります」と言いながらも、「いい結果を残せたことで、手ごたえはつかめました」と語った。
今度は全国の舞台で躍動できるか。負けたら終わりの一発勝負に「また違った戦い方が求められます」と先を見すえる。純粋無垢な性格で、普段はクール。そんな男が「ここまで来たからには日本一になりたい」と、鋭い眼差しで言いきった。38年ぶりの全国制覇へ。あの夏の甲子園同様、ダイヤモンドを駆け回る韋駄天に注目だ。