アーチェリー

関大女子アーチェリー久野和、3度目の夢の舞台「王座」でやりきった

スポーツ推薦で入学し、4年間をやりきった久野

アーチェリーの全日本学生王座決定戦(通称「王座」)は大学を背負って戦う団体戦であり、学生アーチャーの夢の舞台だ。久野和(ひさの・のどか、4年、華陵)は2回生のときに王座へ初出場し、昨年も関大女子の主力メンバーとして戦った。ついにラストイヤー。夢の舞台へ3度目の挑戦だ。

悪天候で波乱の幕開け

関大女子は関西1部リーグのブロック2位で王座への切符を手に入れた。経験豊富で安定して高得点の狙える久野は、エースとしてチームの得点源となる。「思いきって、悔いのないように」と意気込んだ。

今年の王座は波乱の展開となった。1日目の予選ラウンドが悪天候のため中止。そのため、予選が2日目の午前中に持ち越され、午後から決勝ラウンドとなった。決勝ラウンドに勝ち進めるのは、例年なら16校。しかし、時間短縮のため今年は予選で8校まで絞られることに。異例の措置だった。雨はやんだとはいえ風が強く、的まで70mと距離の長い王座決定戦は極めて難しくなる。それでも、関大女子は一丸となって全国の強豪校に挑んだ。

初めの6本を打ち終えて、選手たちは首をかしげた。矢を放つ場所と、的の付近で風向きが変わり、いつもの感覚では戦えない。コーチや部員間で状況を確認し合い、対応していく。

久野は後輩の2人を気遣いながら、自らも大舞台を楽しんだ

失敗の許されない王座の舞台。一射一射にプレッシャーはかかったが、4年生の久野、奥本碧(みどり、主将、奈良学園)は積極的に後輩の2人に声をかけ、「楽しもう」と言い続けた。その言葉と表情が後輩たちの力に変わる。前半終了時点で関大は10位となり、決勝進出の8位以内を狙える位置にとどまった。

予選敗退も「めっちゃ楽しかった」

後半戦がスタートしても、相変わらず強風が吹き荒れる。風が弱まる瞬間を狙って矢を射るが、待ちすぎると制限時間が少なくなり、気持ちに焦りも出てくる。満足のいくエンドは少なかった。しかし「悲しい顔もせず、最後まで笑顔でやってくれた」と、4回生女子3人組の一人である赤木理彩子(甲南女子)は振り返る。赤木やベンチ後方から熱い声援を送る仲間たちが、的前で奮闘する4人を支えた。

ともに戦ったメンバーと最高の時間を過ごした(右から2人目が久野)

9エンドには奥本が50点を出し、ガッツポーズ。久野は11エンドにこの日のチーム最高である53点を叩き出した。だが、最後まで8位との点差を縮めることはできず、11位。今年の王座は予選敗退という悔しい結果に終わった。

しかし、久野の表情に曇りはなかった。「めっちゃ楽しかった」。憧れの決勝ラウンドに立つことはできなかったが、心の底からアーチェリーを楽しめた。予選ラウンドは個人戦。決勝ラウンドの出場メンバー3人に入るために、4人はライバルとなり、しのぎを削るのが例年だ。だが、今年は少し違った。4人で力を合わせて、チームで戦った個人戦となった。

4年間幸せだった

王座が終わる。それは関大アーチェリー部としての4年間が終わることを意味する。久野は言う。「この4年間は、楽しい思い出より苦しい思い出の方が多かった」。スポーツ推薦で入学し、期待に応えられない時期もあった。だが最後の王座は楽しさに満ちていた。「みんなの顔を見ながら打ったり、打ちながらみんなの声が聞こえてきたり。4年間のことが頭の中でよみがえってきて『4年間幸せだったな』って思いながらやりました。楽しかった」

久野は個人で秋の国体に出場する。4年間をやりきった彼女は、次のステージを歩み始めた。