大学陸上・駅伝

男子の仙台育英高が12年ぶり都大路制覇、1年生アンカー吉居駿恭の勝負勘キラリ

「1」を掲げて笑顔でゴールするアンカーの吉居(撮影・藤井みさ)

男子第70回全国高校駅伝

12月22日@たけびしスタジアム京都を発着点とする7区間42.195km
優勝 仙台育英(宮城)2時間1分32秒
2位  倉敷(岡山)      2時間1分35秒
3位  佐久長聖(長野)2時間2分28秒

12月22日にあった全国高校駅伝で、男子の出場58チームから栄冠をつかんだのは仙台育英(宮城)だった。12年ぶり8度目の栄冠で、同校として26年ぶりの男女同時優勝だった。

ラスト200mで決まった

気温10度、曇り空の下でレースは始まった。1区(10km)には各校のエースが勢ぞろい。残り1kmで飛び出した佐藤一世(八千代松陰3年)が鶴川正也(九州学院2年)との競り合いを制し28分48秒の区間賞。28分台が7人も出るハイレベルな争いだった。2区(3km)は仙台育英の白井勇佑(2年)が区間賞の走りでチームを3位に押し上げる。3区(8.1075km)はトップと8秒差の5位で襷(たすき)を受けた倉敷のフィレモン・キプラガット(3年)がダイナミックな走りで前を追い、1.3km地点でトップに。後続を突き放し、独走体制に入る。4区へつないだ時点で、2位の八千代松陰との差は58秒になった。

圧倒的な走りを披露したキプラガット(右)(撮影・安本夏望)

ここから仙台育英が追い上げる。6区(5km)でムチリ・ディラング(2年)が14分6秒の区間新記録をたたき出し、走る前に48秒あった倉敷との差を5秒にまで詰めた。勝負は最終7区(5km)に。仙台育英の吉居駿恭(しゅんすけ、1年)と倉敷の長塩寛至(2年)が並走。お互いに様子をうかがうが、前には出ない。ついにトラック勝負になった。ラスト200mで吉居がグンとスピードを上げ、長塩を引き離して優勝のゴールへ飛び込んだ。

「明日の夜もみんな笑顔で集まろう」

レース後、真名子圭監督は感極まった面持ちで「涙が出そうです」と口にした。「みんなが頑張ってくれて、いいお膳立てをしてくれました。選手たちが自身で頑張れる環境づくりをしていました。とても感謝しています」

倉敷が3区にキプラガットを持ってくるのは分かっていたので、差が開くのは前提だった。しかし6区のディラングのところで5秒差にまで迫り、「いけるかな」と思ったという。「どの区間も適材適所で起用しました。やはり6区が一番のポイントで、ここにムチリ(・ディラング)を持ってこられたのが強みになりました。選手が力を出しきってくれました」

男子チーム、女子チームはお互いに「最大のライバルであり仲間」だ(撮影・藤井みさ)

先にあった女子で仙台育英が優勝したことについては「少しプレッシャーもありました」と監督。いつも朝練から始まり、ほぼすべての練習を男女で一緒にやっているという仙台育英。真名子監督は女子チームについて「刺激をもらえるライバル」と表現する。「女子が頑張ることで、男子も頑張れる。一番の仲間でありライバルです。昨日の夜、宿舎で集まったときに『明日の夜もまたここでみんなで笑顔になれるように、いい結果を出そう』という話をしました」

吉居駿恭「絶対勝つ、勝つしかない」

アンカーを走った吉居は途中で長塩と並走し、前に行きかけて下がった場面があった。「ペースが遅かったから出たけど、離れてくれなかったのでもう少しあとでいこうと思ってしまって……。弱さが出てしまいました」と振り返った。長塩がペースを上げたタイミングでは「いききれていないのかな? 自分のほうが有利かな?」と感じる瞬間もあった。そして最終的にスタジアムに入ったときに自分のほうが余力があると確信。残り300m、200m、100mと段階的にペースを上げたという。「残り200mを切ったあたりで、勝利を確信しました。ラストで切り替えれば、もう(ついてくるのは)無理だろうって。ガッツポーズは勝手に出てきました」

ラストの直線、吉居は勝利を確信して走った(撮影・藤井みさ)

吉居は自らの強みをラストのキレ、勝負勘だという。「それがあるから選んでもらえたと思ってます。練習のときも勝負を意識して、ラストを上げるようにしてます」という。いままでの試合でもラスト勝負になったことは何回もあるというが「これだけ『勝たないといけない』って思ったのは初めてでした」と力をこめる。「前に出たときは『絶対勝つ』『勝つしかない』『どんなときでも勝つぞ』という気持ちでした」

吉居の兄で3区を走った大和は5000m13分55秒10のタイムを持ち、インターハイの同種目で日本勢トップの3位に入ったこの世代のトップランナー。兄について聞かれると「チームを引っ張ってくれる存在です。走り、生活面すべてが尊敬できる大好きな兄です」と返した。

兄の吉居大和「チームの優勝のために」

その兄は3区の区間8位だった。昨年の都大路では1区で42位と悔しい結果だったが、「自分のことがどうこうじゃなく、チームの優勝のために走った」と言いきった。「先生が優勝するためのオーダーを組んでくれました。去年落ち込んでたとき、『楽しんでやらないと意味ないよ』と言われて、そこから変われました。今日は楽しく走れて、優勝できて、1年間やってきてよかったなと思いました」

弟の走りは、移動するバスの中で見たという。「練習のときも(体がよく)動いてて、ラスト勝負なら勝ってくれると思ってました。しっかり走ってくれました。勝負勘もあるし、負けん気もあるし、アンカーに向いてると思ってました」

兄弟で写真を、とのリクエストにも快く答えてくれたふたり(撮影・藤井みさ)

普段から仲のいい二人。練習でもお互いのフォームを見たりして、アドバイスし合ったりすることもあるという。2学年違いのため中学、高校と一緒に競技ができたのは1年ずつだが、その1年で最高の結果を残せた。

喜早駿介「箱根駅伝でリベンジ」

吉井大和との「2枚看板」と呼ばれてきた喜早(きそう)駿介(3年)。1区を走り6位で28分58秒。しかし「28分台はうれしいけど、悔しいです」と口にした。「勝負にこだわってましたから。ペースが速くなるのは想定してて、粘ろうと思ってました。ラスト1kmでいかれたときに、うまくついていけなかったです」

28分台のタイムは素晴らしいが、勝負に負けたことで悔しさが残った(撮影・安本夏望)

東海大への進学が決まっている喜早は大迫傑(ナイキ)にあこがれ、将来はマラソンにチャレンジしたいという。11月には日体大記録会で初めてトラックで10000mを走り、いきなりの28分52秒13を出した。思わず、自分がここまで走れると思っていましたか? と聞いてみると「ここまでの結果を出せるとは思ってなかったです」と話した。「入学したときは弱かったです。練習を頑張って、キツいところでもあきらめないように、と思ってやってきました。みんな速かったので、とにかく食らいついて、だんだん力が上がったと思います」

1区で負けたライバルたちに「箱根駅伝でリベンジしたい」と口にした喜早。新たなステージにも期待がかかる。

吉居、喜早という強力なダブルエースが抜ける仙台育英。真名子監督は「まずは来年ここに来られるかもわからないので、もう1度いままでやってきたことを一からやるだけです」と力を込めた。令和最初の王者として名を刻んだ仙台育英の挑戦は、これからも続いていく。