東海大・西田壮志 伊勢路で得た自信を胸に、箱根5区で伝説の男になる
箱根駅伝の勝負の行方を左右するのが山登りの5区だ。2連覇を狙う東海大からは、昨年区間2位になった西田壮志(たけし、3年、九州学院)のエントリーが確実視されている。全日本大学駅伝での区間賞を弾みに、70分切りに挑む。
2度目の山登りの準備は万全
西田は山登りをするために東海大の門をくぐった。「高校のとき、(高校の)先輩の宮上翔太さん(東海大~九電工)が5区を走る姿をテレビで見て、自分も走りたいと思ったんです」。あこがれの区間を初めて走ったのは、前回大会。國學院大の浦野雄平(4年、富山商)には24秒及ばなかったものの、区間新のタイムで区間2位と、総合優勝につながる快走だった。だが、これはあくまでも通過点。「今回こそ区間賞をとりたい。70分切りを果たして「山の神」と呼ばれたいです」と意気込む。
そのためにしっかり準備もしてきた。前回は下りになったところでペースダウンしたのを踏まえ、夏合宿で下りのダッシュを練習にとり入れた。昨年から取り組んでいた、山を19.8km走る練習を増やし、山登りでモノを言う臀部(でんぶ)とハムストリングスを鍛え上げた。手応えも感じている。山の練習ではポイントの設定を20秒くらい上げているが、それでも心身ともに余裕があるという。
平地でも勝負できる自信がついた
ところが12月18日の記者会見で「どこを走りたいか」と聞かれた西田は言った。
「走りたいのは2区か5区です」
なぜ2区なのか? 今シーズンの西田は平地でも好結果を出してきた。出雲ではアンカーを任され、本人としてはいい走りではなかったが、区間2位に。続く全日本では4区で自身初の区間賞を獲得し、16年ぶり2度目の優勝に貢献した。平地でもいける。エース区間の2区でも勝負できる。順天堂大の塩尻和也(現・富士通)が持つ区間記録には6秒及ばなかったが、全日本の区間賞は大きな自信をもたらしたようだ。
来年を見すえているところもある。「4年生の箱根では2区で区間賞をとりたいと思ってます。チーム事情もあるので、あくまで5区を走れる選手が出てくれば、の話ですが」
ともあれ、目前に迫った箱根では5区を走るのが濃厚だ。ライバルと目される浦野と法政の青木涼真(4年、春日部)の2人も「山の神」の座を狙っているが、「往路1位のゴールテープを切るイメージはできてます」と西田。前回のように山に入るまでのペースを抑えることなく、平地から飛ばしていくつもりだ。
服部勇馬から学んだこと
前回の箱根駅伝のあと、総合優勝のメンバーとなった西田のもとに、服部勇馬(トヨタ自動車)から電話があった。服部とは昨年夏のトヨタ自動車の合宿に参加させてもらった際に同室となり、以来、連絡を取り合う関係だ。当然祝福されると思いきや、服部はこう言った。「浮かれるな。区間賞でなくてよかった」
西田の調子がいいときほど、服部は厳しいのだという。全日本で区間賞をとったときも、テレビ中継の解説者として西田の走りを見ていたにも関わらず、連絡はくれなかった。
西田は服部の真意を理解している。
「アスリートであるなら、目の前の結果に一喜一憂することなく、高いところを目指せということだと思います」
今回の箱根の結果がどうあれ、西田はすぐに切り替えて、次の目標へと邁進するだろう。
服部からは食事についても影響を受けた。服部と出会う前は食が細く、寮で出される食事も残していた。その一方でお菓子が好き。食生活に問題があったが、合宿での服部の食べっぷりを見て、自分もしっかり食べるようになった。それでも体重に変動がないのは、食事で得たエネルギーを練習で消費できているから。好循環を繰り返すことで練習の質も高まった。
いまは大好物のチョコレートを控えている。大事な試合の前日だけ、Suchmos(サチモス)の曲を聴きながら、棒状のチョコを食べて、スイッチを入れるのがお決まりになっている。
全日本での活躍で明らかに顔つきが変わった西田。自信にあふれた男の走りに注目だ。