陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

いよいよ明日! 4years.編集部が元旦にお届けする箱根駅伝みどころ

1月3日、まっさきに大手町のゴールに飛び込んでくるのは!?(撮影・松嵜未来)

あけましておめでとうございます! 2020年も4years.をよろしくお願いいたします。さて、お正月と言えば箱根駅伝! 間近に迫った大一番。4years.編集部的・第96回箱根駅伝の見どころをお届けします。記事には書ききれなかったこぼれ話もあるとかないとか!?

藤井みさ編集部員(以下、藤井):あけましておめでとうございます!

松永早弥香副編集長(以下、松永):おめでとうございます! あっという間に2019年も終わってしまいましたね。

篠原大輔編集長(以下、篠原):ほんまや。去年の箱根からそんなに経ってない感じがするのにな。

ずばり優勝予想は?

藤井:もう明日に迫ったわけですけど、ズバリ優勝予想はどこでしょう。

篠原:やっぱ東海やろな。全日本大学駅伝で優勝してから、なおさらそう思うわ。

松永:選手層が厚いですよね……。

藤井:黄金世代と言われる4年生だけでなく、全日本を走った3年生の西田壮志選手(九州学院)、塩澤稀夕選手(伊賀白鳳)、名取燎太選手(佐久長聖)という3人がすごかったですね。2年生の市村朋樹選手(埼玉栄)も堅実だし。1年生の松崎咲人選手(佐久長聖)も上尾ハーフで62分11秒と4位に食い込む走りでした。誰が走っても穴なんてないんじゃない? という感じさえありますね。

戦力充実の東海大。下級生の成長がチーム力を押し上げました(撮影・藤井みさ)

松永:実は東海って「大エース」という存在がいないんですよね。

篠原:全員がまんべんなく強いからなあ。

藤井:小松陽平選手(4年、東海大四)が10区を希望してて、「雑誌の表紙になりたい」って言ってました。取材したときも、「楽しい!」っていうオーラが全身から出てて。注目されるとより力を発揮できるタイプだなと思います。でも結局去年と同じ8区にエントリーされちゃって、ちょっと残念な気も(笑)。

篠原:俺は郡司(陽大選手、那須拓陽)に頑張ってほしいなあ。彼ももう、学生最後の駅伝か。3年生のときの全日本が終わった直後に彼が号泣しててね。「湊谷さんのために、もっと後続との差を広げたかった」って。4年生だった湊谷選手が逆転されて、優勝を逃したんよね。4年生への思いに惹(ひ)かれたな。彼自身が4年生になってけがで苦しんできて、最後の箱根でどんな走りを見せてくれるか。

藤井:合同取材で郡司選手に取材しましたが、まっすぐに「走るのが好き!」って伝わってくる人でした。「アンカー以外がいい」って言ってたんですが、またアンカーに……。2年連続で優勝のテープを切ったらすごいですよね。

「やっぱり4年生強かった」って、青学以外でも思います

藤井:青学はどうでしょうね? 5連覇を狙ってた昨年より、原晋監督の言動が慎重になってる感じがありますけど。

松永:事前取材でも「戦略のことはお話できない」って最初から牽制(けんせい)されました。主将の鈴木塁人(4年、流経大柏)は去年2月の丸亀ハーフを61分45秒で走って日本勢トップの4位になったんですけど、トラックシーズンは、スタートから突っ込んで徐々に後退するという展開が多かったです。それでもレース後は必ずと言ってもいいほど笑顔で、前向きなコメントを残してました。最後の箱根こそは、強さを見せつけてほしいですよね。

篠原:そういえば、去年の箱根も笑顔でゴールしてたな。

前回の箱根駅伝で、2位でも笑顔でゴールした鈴木塁人選手(撮影・松嵜未来)

松永:あと私は、箱根で競技からの引退を決めている吉田祐也選手(4年、東農大三)にも注目してますね。3年生のときに日本インカレ10000m3位で日本勢トップだった実力者で、引退しちゃうのは惜しい気がする。10年間の競技人生すべてをぶつける走りが見られると思います。それから、2区にエントリーされた岸本大紀選手(1年、三条)は、原監督が「いままでで一番の逸材」というほど。1年で2区はなかなかですね。

篠原:東洋は2年連続往路優勝やけど、今年はどうやろな。

藤井:まず相澤晃選手(4年、学法石川)の2区が最大の見どころですよね。日本人最高だけじゃなくて、区間記録の更新も期待してしまったり。酒井俊幸監督が「相澤には記録だけじゃなく、記憶に残る区間賞をとってほしい」っておっしゃってたんですよ。

全日本大学駅伝では、まさに記憶に残る走り!(撮影・藤井みさ)

松永:記憶に残る。それって記録より難しいかもですね。

篠原:ほんまやな。でも今シーズンの彼を見てると「できるんちゃうか?」って思うわ。

藤井:東洋のスローガンは「世界への挑戦」。相澤選手もオリンピックを視野に、「世界と戦うんだったら学生ナンバーワンは当然」という意識で取り組んでいると言ってました。競歩ブロックで川野将虎選手(3年、御殿場南)が東京オリンピック内定を手にしたというのもかなり刺激になってるみたいですよ。

篠原:実際に世界がそこにあるからね。

藤井:あとはやっぱり4年生の力ということで、定方駿選手(川棚)や今西駿介選手(小林)がどう力を発揮してくるかが気になりますね。定方選手にお話聞きましたが、決意と使命感が胸に響きました。東洋の往路エントリーについて、酒井監督は「隠さずに」「正攻法で」とハッキリおっしゃってました。まずは往路に注目ですね。

虎視眈々と優勝を狙うのは……

松永:そう言えば、駒澤は大八木弘明監督がかたくなに「目標は3位以内」とおっしゃってましたね。

篠原:優勝も狙える感じやのにね。

藤井:選手はみんな「優勝」って口にしてましたよ。駅伝主将の中村大聖選手(4年、埼玉栄)は「優勝しなければいけないチーム」と。

松永:スーパールーキーの田澤廉選手(青森山田)の存在も大きいですよね。どこの区間に入ってくるか。

田澤選手(右端)は、名だたるエースたちとも堂々と渡り合います(撮影・安本夏望)

藤井:大聖選手は「田澤にばかり頼ってはいけない」ということも口にしてました。夏合宿でもすべてトップのAチームについて練習を消化してるし、誰もが認めるルーキーから、頼れるエースという存在になってきてますね。ちなみに1年生の夏合宿をすべてAチームでこなせた選手は、大八木監督が指導されてきた中でも片手で数えるほどしかいないらしいです。

篠原:帝京は去年5位なのに、今季は「5強」とは呼ばれてないんやな。

藤井:中野孝行監督も「5強に入ってないので気が楽」とおっしゃってました。でも「5強を崩す力はじゅうぶんにある」とも。

松永:中野監督、丁寧にお話してくださって、とても素敵な方ですよね。

藤井:思いました! 基本的に、指導方針は「自分流」。任された中でどれだけ自分でできるか、という……。ここでやりきった選手は、社会に出ても活躍できそうだなって感じました。帝京もエース不在なんですけど、小野寺悠選手(3年、加藤学園)が「エースになりたい」って言ってて、実際に出雲駅伝、上尾ハーフでも好結果を出してるので、楽しみにしてます。主将の岩佐壱成選手(4年、徳島科技)も「5強には勝たなきゃいけない」って言ってて、派手さはないけど着実に走ってくるんじゃないかと思ってます。

篠原:法政はエースの佐藤敏也選手(4年、愛知)がけがでメンバー入りできんかったな。関東インカレのトラック2種目の日本勢トップで、今年の法政は来そうや! って思ったけど。

青木涼真選手は「山の神」となれるか(撮影・松嵜未来)

松永:本当にずっと気にしてたんですけど……。だからこそ、青木涼真選手(4年、春日部)のリベンジに期待してます。青木選手には去年、「理系アスリート」の取材で話を聞かせてもらいました。サッカー部に入ろうとしていたのに、ひょんなことから陸上部への道を選んだそうです。法政に進み、2年生のときの箱根で5区を任され、9人抜いての区間賞。注目された2度目の山登りでは、7人抜きで区間最高記録を更新するタイムだったんですが、國學院の浦野雄平選手(4年、富山商)と東海の西田選手に続く区間3位。佐藤選手の分まで思いっきり駆け登ってほしいです! 

往路優勝、あの大学もあり得る!?

篠原:その國學院やけど、出雲駅伝は強かったなあ。

松永:まさに「歴史を変える挑戦」を体現してますよね。

藤井:キャプテンの土方英和選手(4年、埼玉栄)は、走りでも言動でもチームを引っ張れる選手です。そしてチームトップの5000m、10000mのタイムを持つ浦野選手は背中で引っ張るタイプ。エース二人が、すごくうまくチームを高みへ導いているなと思います。

篠原:浦野選手はやっぱり5区やったな。

出雲駅伝での土方選手のスパートはすごかったですね(撮影・藤井みさ)

藤井:山のトレーニングを積んでるとも言ってましたしね。負けず嫌いの浦野選手が、今年はあと一歩でトップになれなくて、ちょっと悔しい顔をしてるところ(日本インカレ、出雲駅伝)を見てきてるんで、最後は心から「よっしゃ!!! 」って言えるといいなと思います。ちなみに浦野選手は、気になったことはとことん調べるタイプみたいです。

篠原:ここに食い込んできそうなのが、東京国際やな。シード権が目標ってことやけど、もっと上にいくんちゃう?

藤井:もし、ガッチリはまれば往路優勝も!? とも思います。それぐらいチームの雰囲気がよかったです。

松永:伊藤達彦選手(4年、浜松商)がチームをレベルアップさせてますよね。去年は学生ハーフ3位、ユニバーシアード3位、箱根駅伝予選会日本人1位、翌週の全日本で2区の区間賞!

篠原:全日本はヤバかったな。テレビのCMが明けたら、いきなりトップになってた。

全日本での伊藤選手は、まさに激走でした(撮影・藤井みさ)

藤井:強すぎますよね。留学生のイェゴン・ヴィンセント選手(1年)も強いし……。あと私が注目してるのは、丹所健選手(1年、湘南工科)です。伊藤選手に下級生で一番伸びてるのは? と聞いたら、彼の名前が上がって。丹所選手自身も「ここまで伸びるとは思ってなかったけど、ここまで来たら絶対箱根を走りたい」と言ってました。あとそういえば、大志田秀次監督が以前「中央学院さんのような、目立たないけど常にシード圏内にいる、というチームになりたい」とおっしゃってたんですよ。

篠原:たしかに中央学院は5年連続シード権獲得。「大エース」はいないけど、毎年確実に走ってくる印象やな。

藤井:全日本で思い出しましたけど、順大がここへ来て上がってきてるなと思います。

教育実習で中学生にもらったという赤いハチマキ。全日本では、まさかの忘れ物!(撮影・安本夏望)

篠原:一時トップにも立ってたしな。10000mの平均タイムも過去最高。長門監督の着実なチームづくりが実ってきてるんやな。橋本龍一選手(4年、法政二)には、箱根では赤いハチマキを忘れず走ってほしいわ。

藤井:拓殖も、上尾ハーフでラジニ・レメティキ選手と主将の赤﨑暁選手(4年、開新)がワンツーフィニッシュ。他の選手も自己ベスト更新。出雲、全日本と奮わなくて、選手だけでミーティングして危機感を共有したそうです。

松永:やっぱり意識の共有は大事ですよね。駅伝って走るのは一人だけど、チーム競技なんだなと思わされます。

名門復活なるか?早稲田、中央、明治

藤井:予選会から出てきた早稲田はどうでしょう?

松永:13年ぶりの予選会では9位。その翌週の全日本大学駅伝では6位で3年ぶりにシード権を手にしました。前回、けが明けで箱根駅伝に挑んだ太田智樹選手(4年、浜松日体)は2区で区間21位に終わりましたが、今シーズンはエースであり駅伝主将として安定した走りを見せてます。

篠原:10000m記録挑戦競技会でも、メンバーを引っ張ってたな。

太田駅伝主将の存在は大きい(撮影・小野口健太)

松永:それから、エントリーメンバーに入った5人の4年生のうち、尼子風斗(あまこ・かぜと、鎌倉学園)と三上多聞(たもん、早稲田実)の二人は初のメンバー入り。三上選手は今年3月の日本学生ハーフマラソンではチームトップの63分46秒を記録してます。2011年優勝メンバーの北爪貴志さんが高校の恩師で、「一般入部でもやれるよ」との言葉を胸にここまで来た、というエピソードもあります。

藤井:予選会でギリギリ通過だったのは、中央。私は予選会で中央の陣地にいましたが、発表をまつときは心臓の音が聞こえそうなほど張り詰めた緊張感がありました。舟津彰馬選手(4年、福岡大大濠)が1年生主将だったときに予選落ちしてしまったことを一瞬思い出しました。

予選会10位での箱根駅伝出場が決まり、安堵の表情を見せる舟津選手(左)、田母神選手(撮影・藤井みさ)

松永:かなりドキドキしましたよね。今大会には当時1年生副将だった田母神一喜選手(4年、学法石川)もエントリーメンバー入りを果たしました。ふたりとも主戦場は中距離。とくに主将の田母神選手は、去年の夏から本格的に長距離の練習に取り組んで、ここまで来たという。

篠原:中距離で世界を目指してきて、夏からでここまでこられたことに才能を感じるな。

藤井:ほんとに! 舟津選手も田母神選手も現段階では補欠になってるので、どこに入ってくるかですね。

松永:チームのムードメーカーとして、舟津選手は池田勘汰選手(3年、玉野光南)の名を挙げて「池田はほかの選手にいい影響を与えるストイックさで、みんなを巻き込んでくれる。それは池田の一つの力。正直、自分よりもまじめ。チームの中でいちばんまじめです」と教えてくれましたよ。

藤井:そういえば田母神選手は、学法石川高校出身。相澤選手と、あと明治の阿部弘輝選手(4年)も同級生ですよね。阿部選手は今年、けがに苦しんでましたが……。

松永:彼の復活はもちろんですけど、明治だと予選会で積極的なレースを展開した手嶋杏丞選手(2年、宮崎日大)にも注目です。前回の箱根では当日に補欠となりました。その一方で同期の鈴木聖人選手(水城)は1区で箱根デビュー。手嶋選手は練習でも常に鈴木選手を意識し、ライバルは? という質問にも「鈴木に勝ちたい」と答えるほどです。手嶋選手に対して阿部選手は「練習からしっかり走れてたので、(予選会では)手嶋はいくなと思ってました。その通りの走りで『頼もしくなったな』って。先輩としてうれしいですし、僕もそろそろ復活しないといけないなと思いました」と話してました。

予選会で一時日本人トップに立った手嶋選手(撮影・小野口健太)

篠原:こういうライバル関係が刺激になって、さらにお互いを成長させるんやな。

語り尽くせぬみどころ! 決戦は明日!

藤井:26年ぶりに箱根路に帰ってきた筑波も、やっぱり注目ですよね。

篠原:松永さんが合同取材に行ってたよな。

松永:はい。悔し涙を浮かべた予選会から1年後、同じ場所で歓喜の涙を流す選手やスタッフの姿を見て、いろんなことを乗り越えてきたんだろうなと思ってました。改革を先導してきたのは3年生たちでしたが、医学生で元駅伝主将の川瀬宙夢選手(5年、刈谷)、走りでチームを牽引してきた金丸逸樹選手(4年、諫早)の存在も大きかったと思います。二人にとって最初で最後の箱根駅伝になるので、悔いのない走りをしてほしいなって思います。

箱根駅伝出場が決まり、笑顔を見せる選手たち(撮影・松永早弥香)

藤井:それから関東学生連合チーム。今年は去年の「#タツヤを漢に」に加えて、「#闇鍋大作戦」がスローガンだと、主将の阿部飛雄馬選手(東大4年、盛岡一)がTwitterで発信してました。阿部選手は昨年の近藤秀一選手(現GMO)に続く東大から2年連続の選出で「箱根=東大、というイメージがつけばいい」と言ってましたね。

松永:本気で「10位(相当)以内」を狙うという思いから、今大会では選考レースではなく、ほかの大学チームと同様に最後の最後までメンバーを見極めて選ぶ方針を選手たちが選びましたね。創部2年目の育英大からは外山結(とやま・ゆい、2年、前橋育英)もメンバー入りを果たしました。けが続きの高校3年間が、いまの強さにつながっています。

篠原:まだまだ語りつくせんわな。

松永:本当ですね。でももう明日!

藤井:我々も今日は早く寝ましょう! 当日はレース中にTwitterをご覧になり、レース後の記事も読んでくださいね!