アイスホッケー

中大が関大を破り準決勝へ 両校主将の長く長く続いた戦いの果てに残した言葉

戦いを終えて。終了直後は固い表情だった関大の三浦(左から2人目)も、中大の阿部(左から3人目)と握手するときは笑顔に(すべて撮影・山口真一)

アイスホッケー日本学生氷上競技選手権 準々決勝

12月27日@北海道・日本製紙アイスアリーナ
中央大 3-1 関西大

アイスホッケーのインカレが12月25日、「氷都」北海道釧路市で開幕した。27日の準々決勝では、ともに優勝を狙う中央大と関西大が対戦し、3-1で中大が勝ち残った。

関東、関西とリーグは違っても、大阪・高槻キャンパス内にアイスアリーナを持つ関大に中大が遠征するなど、両チームは普段から交流がある。ユニフォームのカラーもともにネイビーで、システムを重視するホッケースタイルも似ている。さらに言うと、今季の両チームのキャプテンは、ともにインカレ開催地である釧路の出身だ。

がむしゃらに向かってきた三浦をよく覚えている

中大の阿部翼(4年)は、4年前に釧路の武修館高が全国優勝したときのキャプテン。関大の三浦詰平(きっぺい、4年)も釧路工高で、やはりキャプテンを務めていた。2人はともに地元のトップチーム「クレインズ」のジュニア組織出身で、同じFWだ。

阿部(中央左)は生来のリーダー。コーチと選手とのパイプ役でもある

阿部が武修館のキャプテンとしてチームを牽引(けんいん)していたその年、武修館はインターハイを制した。三浦が通っていた釧路工は、かつて日本代表を何人も送り出した強豪ながら、普通科志向が強まった近年は、インターハイの上位に進むことができなくなっている。2人が高3だったときも、市内大会では武修館が釧路工に負けたことは1度もなかった。

それでも阿部には、当時の三浦の姿が強く印象に残っている。阿部は言う。「点差がついて周りの選手があきらめるような場面でも、彼だけは『絶対に勝つんだ』という気持ちを前に出して、がむしゃらにプレーしてました。プレーで周りを引っ張れるのは、僕にはない素晴らしさ」。現在も三浦はチームで一番力がある5人が集まる、関大の「第1セット」を任されている。阿部は中大の「第3セット」だ。プレーでの影響力は三浦に軍配が上がるだろうか。

三浦は闘志を表に出して引っ張るキャプテンだ

対する三浦も、阿部を称して「自分で勝手にライバルだと思っていた」と言う。「クレインズジュニアのときから、翼が何か言うとそれだけでチームがまとまるんです。そこに彼がいるだけで、雰囲気が変わる。そこだけは絶対にかなわない部分でした」

「尊敬していたと伝えてください」

この中大vs関大戦は、長くライバル関係を築いてきた2人がぶつかった最後の試合でもあった。試合に勝った阿部たち中大は28日、準決勝で東洋大と戦う。敗れた三浦はこの日の中大戦を最後に、競技としてのアイスホッケーを卒業する。阿部は「まず詰平には、おつかれさまと言いたいです。高校時代からお互いに高め合って今日までこれました。尊敬していたと伝えてください」

その三浦は「試合前のアップから、絶対に勝つという気持ちを出してやったんですけど、僕の努力が不足してました。僕らに勝った中大が優勝してくれると信じてます」と言い、吹っ切れた表情でリンクをあとにした。

関大を支えた4年生部員。悔いなき試合、悔いなき4年間だったことは表情が示している

卒業後、阿部は社会人の強豪でホッケーを続け、三浦は関大のコーチになる。近くにいるときも、遠くにいるときも、どこかでつながっていた2人のキャプテン。彼らに率いられたチームの「熱」で、普段は寒いはずのアリーナがこの日はあたたかく感じられた。