法政が3連覇中の明治を撃破 挑戦者として臨む14大会ぶりの決勝
アイスホッケーのインカレが12月25日に開幕した。準決勝が実施された28日、ホッケーが盛んな北海道・釧路のファンが沸いた。昨年までインカレ3連覇中だった明治大に、前回ベスト8止まりの法政大が土をつけたのだ。スコアは7-4。攻撃が代名詞の明治を、法政が完全に上回った。
先制点を許すも、6分間で4連続ゴール
第1ピリオドの立ち上がりは、前回覇者であり、この秋の関東リーグを制した明治のペース。エースFW池田涼希(あつき、4年、北海)が法政GK吉田駿太(4年、苫小牧東)を横に振り、技ありの先制ゴールを決める。完全に崩されての失点だったが、ここで法政の気持ちは下がらなかった。
明治の反則で人数が一人多いパワープレーを得た7分、味方がこぼしたパックを拾ってDF田畑秀也(4年、駒大苫小牧)が同点のロングシュート。8分には明治ゴール前でシュートリバウンドをたたき続け、最後はFW土屋光翼(こうすけ、3年、埼玉栄)が押し込んで2-1に。10分には3点目、13分には4点目を加え、4-1でこのピリオドを終えた。法政は第2ピリオドでもセーフティーリードを保ち続け、第3ピリオド15分、DF福島勇啓(ゆきひろ、4年、北海)の7点目で勝利を決定づけた。
インカレ3連覇中の第1シードに、ここ最近「8強の壁」を破れなかった法政が勝った。そこだけを見れば「番狂わせ」になるが、相手がひるんだ隙に4連続ゴールで優位に立った、法政の試合巧者ぶりが光る試合だった。相手に攻め込まれた場面では、FWが積極的に相手にプレッシャーをかけ、パックを奪って速攻に転じる。「守って、守って、カウンター」「パックを持ちすぎず、相手のゾーンでシンプルにプレーする」。このチームの方針が全員に浸透していた。
公式戦72連勝というかつての栄光
法政は今シーズン、春の関東選手権で明治に6-4で勝ち、秋の関東リーグ2試合でも2-4、4-5とほぼ互角。インカレ前の合宿は授業との兼ね合いで12月21日からと短かったが、外久保栄次コーチは「守りからのトランジション(攻撃への素早い切り替え)をテーマに、いい練習が積めた」と胸を張る。
かつて法政はインカレで1972年から12連覇を達成。リーグ戦を含めて公式戦72連勝という、おそらく大学アイスホッケー界において破られることのない記録を持っている。しかし近年は明治や東洋、早稲田、中央が積極的に強化を図ったことで上位に定着できなくなっていた。それでも武修館高時代は主力として日本一に輝いている主将・FW小西遼(りょう、4年)、副将のDF松井洸(ひろし、4年)ら、個人のスキルが優れた選手は多い。
主将の小西は、姉あかね(GK)が女子日本代表で、妹も将来を嘱望されているホッケー一家に育った。武修館高3年生のとき、一度は違う大学を紹介されながら、「昔強かったチームを強くしたい」と法政を選んだ。ここ数年の法政は「個々のテクニックはあるがメンタルが課題」「リードされるとすぐ腰を上げる(諦める)」と言われ続けた。それでも小西は、「今日は明治に負ける気はしなかった。先制されても、みんなも負ける気がしないと思ってたと思います。これまで自分たちがやってきたことに自信がありましたから」と言った。
小西にとって、対戦した明治のGK・磯部裕次郎(4年)は武修館高時代の同級生。磯部もまた、明治の主将を務めている。「普段は仲がいいんですけど、同級生だからどうとか、そういう意識はありませんでした。今日のカギは、いかに早くアイツをノックアウトするか。1ピリから降ろしてやる、と強い気持ちで試合に入りました」。磯部は3連続失点した後の1ピリ12分、交代を告げられてベンチへ。試合終了と同時に涙に暮れた。
「僕たちはまだ何もなしとげてない」
法政がインカレ決勝に進むのは14大会ぶり(当時のインカレは年明け開催)で、優勝は外久保コーチが主将だった30大会前までさかのぼる。「平成元年に優勝、令和元年にも優勝」。応援にかけつけたOBは盛り上がっていたが、小西は「別にまあ、そういうのは特に。大体、僕たちはまだ何もなしとげてないので」とクールだった。
これまで法政は、関東選手権で3位になったり秋のリーグ序盤で連勝したりするたびに「名門復活」と言われてきたが、いつもその勢いは長続きしなかった。インカレ最終日の12月29日。もう一つの準決勝の勝者・東洋大との決勝が、どんな勝負になるかは分からない。それでも、決勝進出を決めてなお「何もなしとげてない」と言いきる彼らの言動は、法政が挑戦者として戦ってきた証(しるし)かもしれない。