ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

決勝は早稲田vs明治 23シーズンぶりの早明頂上決戦、舞台は新国立競技場

早稲田はCTB中野(中央)の戦列復帰が大きい(ゲーム写真はすべて撮影・谷本結利)

ラグビー 第56回全国大学選手権 準決勝

1月2日@東京・秩父宮
早稲田大(関東対抗戦2位)52-14 天理大(関西1位)
明治大(関東対抗戦1位)29-10 東海大(関東リーグ戦1位)

 ラグビーの大学選手権準決勝2試合があり、第1試合は早稲田大(関東対抗戦2位)が天理大(関西大学Aリーグ)を52-14と圧倒。第2試合では連覇を狙う明治大(関東対抗戦1位)が、東海大(関東リーグ戦1位)を29-10で下した。この結果、11日に新しい国立競技場で開催される決勝は、23シーズンぶりに「早明戦」となった。明治大が勝てば2シーズン連続14度目、早稲田大が勝てば11シーズンぶり16度目の優勝となる。

 CTB中野の復帰で攻めの幅広がった早稲田

1試合は序盤、早稲田がスクラムで天理にプレッシャーを受けたが、得点を許さなかった。すると試合は一気にアタック力に長(た)けた早稲田ペースになる。中でも大きかったのは、昨年11月に負傷し、2カ月ぶりに戦列復帰した身長186cmの大型CTB中野将伍(4年、東筑)の存在だった。「オプションが一つ増える」と、主将でSHの齋藤直人(4年、桐蔭学園)も復帰を歓迎していた。 

前半10分、早稲田は自陣ラインアウトから中野が前に出たあと、FB河瀬諒介(2年、東海大仰星)がラインブレイク。最後はWTB古賀由教(3年、東福岡)が左隅にフィニッシュ。19分にはスクラムから中野が相手2人にタックルされながらもオフロードパスをつないで、今度はFB河瀬が左中間に飛び込んだ。さらに24分、ライン際で中野がオフロードパスを古賀につなぎ、古賀がそのまま左隅にトライ。21-0と大きくリードした。 

関西大学Aリーグを4連覇し、悲願の大学選手権初優勝にかける天理大は31分、WTB市川敬太(3年、日新)がトライ。21-7で試合を折り返した。 

不発に終わった天理のアタック

後半、今度は早稲田のFW陣が力を示す。試合後に「できすぎです」と相良南海夫監督がほめたように、ラインアウトでプレッシャーをかけて、相手の武器であるモールを組ませない。また前半、劣勢だったスクラムを修正し、逆にプレッシャーをかけた。早稲田に流れは傾き、11分にはPR久保優(3年、筑紫)がトライを挙げて28-7と、再び21点差に広げた。 

天理も15分、サンウルブズ入りが決まっているCTBシオサイア・フィフィタ(3年、日本航空石川)のトライで28-14と追い上げた。だが、その後はセットプレーで優位に立った早稲田が主導権を握って4トライを重ねた。結局、計8トライを挙げた早稲田が大勝し、6シーズンぶりの決勝進出を決めた。

天理大の小松監督(右)と岡山主将(会見写真はすべて撮影・斉藤健仁)

天理大
小松節夫監督の話
決勝の舞台に戻ることをテーマに1年間やってきました。(新しい)国立競技場でしたいと思ってました。警戒していたBK、中野が入ったことで一つくさびとなって、早稲田の理想とするような形となり、それを止められなかった。そこから、うまく流れ(の来た時間帯)もありましたが、ラインアウトが安定しなくてアタックの時間を増やせず、早稲田のアタック時間が多くなってしまった。最後まで修正できなかった。 

FL岡山仙治主将の話
自分たちの力をしっかり出すことを心がけましたが、そこを封じこめられた。早稲田の強さと、流れに乗れなかった自分たちの弱さが出た。それでもチームメイトは体を張ってくれたので、自分の中では楽しいゲームとなりました。結果はついてこなかったんですけど、次のシーズンに今回の経験がつながると思うので、まだまだ天理を応援してもらいたいと思います。 

早稲田の相楽監督(右)と齋藤主将

【早稲田大】
相良南海夫監督の話
昨年の今日、準決勝の壁に跳ね返されて終わってしまいました。昨年を超えようとゲームに臨んだ結果、しっかり勝つことができてうれしいです。日大戦が終わって、天理戦まで約10日間、本当にいい準備ができました。できることはすべてやったという中でゲームに臨めました。アタックにおいてもディフェンスにおいても、しっかりやってきたことを出せました。(決勝は)チャレンジャー精神で、早稲田の、齋藤キャプテン以下のチームとして集大成を見せたい。 

SH齋藤直人主将の話
12日にもかかわらず多くのファンのみなさんが来てくれてうれしいです。昨年度はこの舞台で負けて、新チームが始まるころ、去年のチーム超えようと。まずは去年のチームを超えられてよかった。BKのトライはFWの頑張りのおかげかな、と思いました。FWに助けられた試合だと思いました。目標はあくまでも日本一。残り8日間、楽しみながら最高の準備がしたいです。

数的不利の状況を耐え抜いた明治

2試合は、ともにFWに自信のある明治大と東海大がぶつかった。前半3分、東海はSO丸山凛太朗(2年、東福岡)がPGを決めて先制。しかし、準々決勝で相手のディフェンスの前に後手を踏んだ明治が、SO山沢京平(3年、深谷)を中心に素晴らしいアタック。7分、SO山沢のランからチャンスを作ると、最後はWTB山﨑洋之(4年、筑紫)がトライ。7-3と逆転した。 

その後は膠着(こうちゃく)状況が続いたが、31分には、再び山沢らのランで敵陣奥に入り、最後は連続攻撃から相手の隙を突いてSH飯沼蓮(2年、日川)が飛び込み、14-339分には相手ペナルティーからSO山沢がPGを決めた。明治が17-3とリードしてハーフタイムを迎えた。 

後半10分、明治がボールを動かしてCTB射場大輔(4年、常翔学園)が右中間にトライ。24-3とリードを広げた。しかし東海も反撃し、主将のCTB眞野泰地(4年、東海大仰星)からショートパスを受けたWTB望月裕貴(2年、東海大静岡翔洋)が縦をついてトライ。24-10と追い上げる。 

明治が東海とのしびれる戦いを制した

後半22分、明治のLO片倉康瑛(3年、明大中野)がハイタックルによりシンビン(10分間の一時的退場)となり、東海の数的有利となる。ペナルティーから東海はゴール前でスクラムを選択。2度、相手の反則を誘ったがトライにはつながらず、3度目のスクラムからボールがこぼれてしまった。 

7人のFWでスクラムを耐えた明治の粘りの前に、東海は得点に結びつけられなかった。この場面で得点が動かなかったことが大きなキーポイントとなった。 

細かいミスが積み重なって、東海の決勝進出はならなかった

その後も東海は得意のモールで相手ゴールラインに迫るが、明治はトライを許さず、逆に、36分、明治のLO箸本(はしもと)龍雅(3年、東福岡)がねじ込んで29-10とリードを広げて、そのままのノーサイドを迎えた。司令塔役のSO山沢が戻ってきた明治が、3シーズン連続となる決勝進出を決めた。 

東海大の木村監督(右)と眞野主将

【東海大】
木村季由監督の話
お互いに強みと強みがぶつかりあった。ゲームの入り方は絶対に引けないところではあったんですが、明治の圧力に、持ち味を出させてもらえなかったのがすべてだと思います。本当に今日は自分たちのラグビーができなかった。相手の力、これがすべてだと思います。我々も準備して、こだわってやってきて、ただやっぱりそこが足りない。結果がすべてですから、結果がもたらしたものでそう判断してます。(後半25分、数的有利でトライが取れなかった場面は)自分たちの強みであるスクラムを発揮できてました。二つペナルティーを取って、その次のプレーが勝負だったんですけど、そこでかみ合わなかった。

CTB眞野泰地主将の話
やってるラグビー自体は間違ってなかったと思うんですけど、細かいところのミスで後手に回ってしまった。自分たちの力が全然足りなかったし、準備も甘くて、もっともっと厳しさを持って、準備の段階からやるべきだということに気づきました。後輩にしっかり伝えて、必ず次にこれをつなげます。

明治大の田中監督(右)と武井主将

【明治大】
田中澄憲監督の話
本当に死闘だったと思います。お互いの意地ですね。僕も途中から監督という立場を超えて両校を応援してる不思議な気持ちになりました。(シンビンで1人少ない時間帯も)一つになって我慢できた。東海大は強いので、しっかり準備してきました。それが試合で体現できてよかった。こういうゲームでは自分たちのやってきたことを信じるしかない。それが東海よりちょっとだけ上回った。大学日本一を目標に一年間やってきました。さらにいい準備をしていきたい。

 HO武井日向主将の話
関西学院大戦からこの東海大戦に向けて準備してきた結果が出ました。(1人少ない状況は)明治の真価が問われるところでした。プライドで止めました。後ろの押しもあったし、まとまって、いままでにないスクラムを組めた。(ラインアウトディフェンスに関しては)相手のモールに対して、LO片倉を中心にラインアウトを準備してきたのが結果に表れました。決勝では早稲田は(早明戦の)借りを返そうと挑んでくるはず。こちらもハングリーにチャレンジャーとして優勝を目指します。