陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

帝京大・星岳 初の“花の2区”で好走「来年はエースとして走る」

星は今大会、あこがれだった「花の2区」を任された

第96回箱根駅伝

1月2、3日@大手町~箱根の10区間217.1km
4位 帝京大 10時間54分23秒
2区 9位 星岳(帝京大3年) 1時間7分29秒

今年の箱根駅伝は青山学院大の2年ぶり5度目の総合優勝で幕を閉じた。10区間中7区間で区間新記録が誕生するなど、まれにみる高速レースが展開された。その中で、帝京大は大学歴代最高順位タイの総合4位でフィニッシュ。総合優勝というチーム目標には届かなかったものの、総合タイム10時間54分23秒で大学記録を大幅に更新する素晴らしい結果を残した。

帝京大は花形選手が不在と言われながらも、ハーフマラソンの平均タイムは出場全チームで3番目と総合力で勝負。そんな中、エース区間の「花の2区」を任されたのが星岳(3年、明成)だった。

役割に徹した納得のいく走り

自分の走りに点数をつけてもらったところ、星は「75点くらいかな」と語った。理由は、役割を果たせたことと、思った以上の走りができたこと。「1区の小野寺(悠、3年、加藤学園)がいい走りをしてくれた」と同学年の走りに力をもらった。そして「先頭の見える位置で3区の遠藤(大地、2年、古川工業)に襷(たすき)を渡すのが役割だと思った」と星はすぐさま狙いを定めていた。

ほぼ同時に襷をもらった青学の岸本大紀(1年、三条)が最初の1kmを2分41秒ほどのハイペースで入った。しかし役割を果たすと決めた星は、あえてこのペースに合わせずに自分のペースで走った。そしてハイペースの先頭集団から落ちていった選手を次々と捕らえ、順位を3つ上げる走りとなった。結果としては先頭集団には追いつけなかったが、自分のペースを崩すことなく、先頭の見える位置で遠藤に襷をつなぐ役割をしっかりと果たした。星は「思った以上の走りができたと思う」と、自身2回目となった箱根を振り返った。

それでもマイナスと評価した25点分については「正直に言って周りと比べれば、区間9位の結果は物足りない」と悔しさをにじませた。1時間7分29秒は決して悪いタイムではなく、むしろ例年であれば区間上位を狙える走りだった。しかし区間9位。同じく2区を走り、意識した選手にあげた東海大の塩澤稀夕(3年、伊賀白鳳)にも16秒及ばなかった。

星は「学生長距離界のレベルが上がっていることを感じた。ちょっと甘く見ていた部分があるのかなと思う」と反省を口にした。高速化が進む大学長距離界の中でも、「一定のペースで淡々と刻んでいけるのが自分の強み」だと星は語る。周りと比較して、課題を見つけながらも、自らの走りには自信を持っていることがうかがえた。

あこがれの2区から、当たり前に走る2区に

初出場となった前回大会は、10区で区間賞を獲得し、帝京大記録も更新するなど素晴らしい箱根デビューとなった。しかし、3年生になってからの駅伝シーズンは夏のけがが響き、出雲駅伝の出走はかなわず。チームとしても力を出しきれなかった。

前回大会では10区で区間賞を獲得した

全日本大学駅伝は、7区で区間6位と納得のいく走りができなかった。チームは総合8位でからくもシード権獲得。この結果に対し、「力不足というより力が発揮できていないという感じ」と星は振り返る。だが、ここでの不調がチームの引き締めにつながった。「自分自身もチームも箱根に向けていい準備ができた」と星が語るように、11月に星を含め6選手が10000mで自己ベスト更新と勢いがついた。こうした結果が、今大会の好成績につながった。

12月の共同記者会見で星は2区へのあこがれを語った。「影響力の大きい区間、魅力のある区間でもある。そして、高校の先輩である村山謙太さんと紘太さん(ともに現・旭化成)が走っていた区間。村山さんにあこがれて箱根を目指したので当然走りたい」

昨年12月の共同記者会見でも、2区への思いを口にしていた

結果として、今大会で星の念願はかなった。しかし来シーズンに向けて星は「エース区間である2区を当たり前のように走りたい」と語り、「春から箱根を見据え、1年を通して戦い続ける」と力強く語った。そう口にする星の眼差しからは、来シーズンは自分がエースであるという強い意志が感じられた。

主力だった4年生が抜け、これからチーム内での競争が激化することが予想される。その中で、最終学年を迎える星が帝京大のエースとして、チームを牽引する走りに期待感が増すばかりだ。