アメフト

関西学院大学・片桐太陽とリンスコット トバヤス 春の初戦で躍動した〝新米コンビ〟

開幕戦で活躍した、太陽(右)とトビーの〝新米コンビ〟(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの春季交流戦で、関西学院大学と慶應義塾大学が4月20日に対戦した。東西のトップリーグに所属するチーム同士としては2024年シーズン最初の試合で、両チームの対戦は2019年以来5年ぶりに実現。新チームの始動から間もない時期ということもあって、基本的なプレーでの手合わせとなったが、後半に関学が突き放して30-7で勝利した。関学は、ルーキーWRの片桐太陽(大産大附)が、1年生で唯一出場。初めて受けたパスをタッチダウン(TD)につなげた。また、昨年はCBで試合に出ていたリンスコット トバヤス(愛称トビー、2年、箕面自由学園)は新たなポジションのWR/QBで登場。この〝新米コンビ〟が躍動した。

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デビュー戦、最初のキャッチでTD

期待のルーキー片桐が登場したのは、後半の第3クオーター(Q)。関学が16-7でリードしている場面だった。慶應陣の19yd、右サイドの一番外にセットした片桐がスラントのルートを走った。そこへQBの柴原颯斗(4年、啓明学院)がすかさずパスを投げ込む。

「ルート的に自分に飛んでくるのはわかってましたが、それでもまさかTDまで行くとは思ってなかったです」

片桐は、トイメンについていた慶應DBの内肩を目がけて切り込み、パスをキャッチすると、タックルを引きはがしてエンドゾーンへ駆け込んだ。

発展途上の1年生ながら、優れたボディバランスで敵のタックルを外してTDを決めた

ルーキーが春の初戦から出場するのは、異例の抜擢(ばってき)と言える。しかも初めてのパスレシーブでTDを決め、チーム首脳陣の期待にもしっかり応えた。終盤の第4Qには、今春にCBからQBに転向したトビーのロングパスをキャッチ。その後も、キャッチはできなかったがエンドゾーン内で相手守備と競り合って見せ場を作った。記録は2キャッチ70yd1TD。デビュー戦としては、ド派手と言っていい。

「出る前は緊張するかなと思ってたんですが、全然しなかったです。でも、3本目のパスは自分の悪いところが出てしまいました。昔から、集中力が切れてパスをドロップしてしまうところがあるんで……」。本人の反省とは裏腹に、勝負強さが目を引いた。

試合後、大村和輝監督は片桐をこう評価した。「体作りをずっとやってきて、だいぶ良くなってきたんで出しました。動きが柔らかくて球際も強い。今、先発で出ても(主力と)遜色ないと思います」

5月4日に米国で行われる南オレゴン大学との親善試合のメンバーにも、1年生でただ一人選ばれた。片桐にかかる期待は大きい。

大学入学後、初めてQBとして出場

「自分でも初戦から出られると思ってなくて、試合に出してもらえるというのもギリギリまで決まってなかったんです。ユニホームはもらえるっていうことだったんですが、1週間前に梅本コーチに『試合、出るぞ』って言われました」。片桐は落ち着いた口調で言う。

防具を着始めたのも、つい最近のこと。実戦練習もほとんどしてなかったが、ハーフタイムに4年WRの坂口翼(関西学院)に言われて後半から入ることになった。それからはトビーと繰り返しキャッチボールをして、感触を確かめた。

ハーフタイム以降、2人は入念にパスの感触をすり合わせた

トビーは片桐について言う。「太陽は、オーラがちゃいますね。アメフトを楽しんでるし、ほんまに好きなんやろうなっていうのが、練習のときから出てます。今日も『俺に投げてこい!』みたいなパッションを感じました。前から仲が良かったので、関学で一緒にやれるのを楽しみにしてました」

トビーにとっても大学入学後、初めてQBで出る試合だった。「QBの練習を始めたのは3月からで、感覚を取り戻さないと気持ちよく投げられない感じです。(太陽に)通したロングパスも短かったですし、自分の出来としては今日はヒドかったなと思います」

大村監督に言われて今春からはWRの練習も始めた。「去年の前島(仁、今春卒業)の、もっと投げられる版みたいな位置付けで使えたら面白い」(大村監督)と、前半はWR、後半はQBで試合に出た。「WRも練習してたら勝てるようになってきて。今日も最初は『(WRで)出るよ』って言われてました。去年はCBで楽しませてもらって、色々やってますが、QBをするとやっぱり相変わらずムズいっすね」

1学年上の星野秀太(3年、足立学園)は、ルーキーの時から試合に出てるため経験値もあり、その分だけコーチや選手からの信頼が厚い。「僕にはそれを上回るリーダーシップと実力が必要っすけど、今の自分には全然ないです。でも自信はあるので、これから積み上げていきます」。トビーも星野との先発争いに意欲を燃やしている。

トビーはQBとしてパスを4回投げて3回成功54yd、WRでは1回レシーブ11yd獲得

小段天響がつける予定だった「背番号4」を背負い

片桐は名古屋市出身。南山大学附属小学校でフラッグフットボールを始めた。南山中学でアメフト部に入り、強豪チームでのプレーを目指して大産大附属高に進学した。「山嵜監督(現・同校総監督)に誘ってもらって、産大高でやることに決めました」と片桐。高校2年まではWRの主力として活躍し、全国高校選手権クリスマスボウルにも出場した。1学年上のQB小林洋也(現・近畿大2年)が卒業した後はQBにポジションを変更し、走力で大産大附の攻撃を牽引(けんいん)した。

片桐は大産大附属高時代、クリスマスボウルにも出場した
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関学への進学を決めたのは、昨年の1月。先輩WRの小段天響が関学に進んだことが大きかったという。「シンプルに日本一強いチームに行きたいっていうのがあって。天響さんもいるし、その部分では安心感があると思いました」。天響は、昨年春から主力として活躍してきた。

入学後、片桐はフレッシュマンに課される防具着用の体力規定値をいち早くクリアし、唯一初戦からの出場チャンスをつかんだ。この日つけた背番号4は、昨秋のけがでリハビリ中の小段が今年着る予定の番号だった。試合前から片桐につきっきりでアドバイスをしていた小段は言う。

「ボクの記録を全部塗り替えられました(笑)。ボクは去年、春の初戦でチェーンクルーをしていました。初めて試合に出た中央大学戦ではTDを取りましたが、太陽は一発目のキャッチでTDなんで。アイツの方が、全然活躍してましたね」。小段は悔しがったが、表情はうれしそうだった。

「太陽は僕が持ってないモノを持ってるというか、相手を置き去りにするスピードの次元が全く違うんですよ」。小段は高校の頃から片桐を一番近くで見てきた。そして、常に「コイツ、やばいな」と思っていたという。

「とにかく思い切りやってこい!」。小段は昨年の春、負傷中だった鈴木崇与(たかとも、現・パナソニック)に、この日の自分と同じように張り付いてもらって、こうアドバイスをもらった。

「僕はまだ2回生ですが、去年タカトモさんがしてくれたことをする立場になったと思っていて、アイツのことは全部サポートしようと。この1週間はずっと隣にいて、全部教えました」

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試合前、試合中、ハーフタイム。小段は常に片桐の横にいた。「今日はめちゃくちゃうれしかったっすね。僕がTDを取った気分になりました (笑)」。後輩の活躍を心から喜んだ。

太陽と天響の姿は、昨春の天響とタカトモを思い出させた

大学トップレベルの環境に、毎日が刺激

「天響さんが横にいてくれて、『取ってこい!』って言ってくれてたのが、プレー面でもメンタル面でも支えになりました」。関学に入学して1カ月弱。高校とはフットボールのレベルも、選手のスキルも全然違うという。片桐にとっては、毎日が刺激でいっぱいだ。

この日活躍した片桐とトビーのコンビに加えて、小段が復帰すれば、2024年ファイターズのオフェンスユニットはさらに面白くなる。

ともに、引き締まった表情に抜かりはない

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