野球

特集:東京六大学 2020真夏の春リーグ

戦えることに感謝し、単独最多46度目の優勝を目指す 法政大学・中村迅主将

神宮に大学野球が戻ってくる。法政の主将・中村に話をきいた(写真提供:すべて法政大学野球部)

8月10日に開幕予定の東京六大学野球春季リーグ戦。リーグ単独最多となる46度目の優勝を目指す法政大学は、1試合総当たりとなる方式を想定しながら準備に余念がありません。中村迅(じん)主将(4年、常総学院高)に約4カ月遅れで実施される「春」への思いを聞きました。

1球の重さをより大切に練習に取り組む

野球ができるのは幸せだな―。
チーム練習が再開された6月8日、中村は約2カ月ぶりとなる仲間との再会を果たしながら、つくづくそう感じたという。自分たちは恵まれているとも思った。

「全国の春のリーグ戦がほぼ中止になった中、僕らはリーグ戦ができるので。戦えなかった人たちの思いも背負ってやるつもりです」

今年は夏の甲子園大会も中止になった。中村は高校球児の胸の内にも思いを巡らす。常総学院高3年時は春夏連続で甲子園に出場。夏はベスト8に進出した。「聖地」に立てた幸せを知るからこそ、目標を失くした高校の後輩や、球児たちの無念さがわかる。中村は「彼らの分まで……という気持ちもあります」と言う。

悔しい思いをした選手たちの分まで、全力でプレーしたいという

今年の春のリーグ戦は通常の勝ち点制とは異なり、1試合総当たりで行われる。これまでもトーナメントと同じ緊張感で戦ってきたが、1試合がより重たいものになる。一投一打にかかる重圧もこれまで以上になるだろう。そこで法政大では練習の段階からプレッシャーを課す取り組みをしているという。練習では打ち損ねても捕り損ねても勝敗には直結しないが、試合では時に致命傷になる。試合につながるための練習はずっとやってきたことでもあるが、その度合いが強くなっているようだ。ただし、だからと言ってピリピリし過ぎているわけではない。常総学院高時代も主将を務めた中村は「みんな野球ができる喜びにあふれているので、チームの雰囲気はいいです」と伝えてくれた。

自分の将来を拓く一打で優勝をたぐり寄せる

4月の緊急事態宣言発令後は合宿所も一時解散になり、中村は茨城の実家に帰った。約2カ月の自主練習期間は小学生時代のチーム(名崎ヤンキース)のグラウンドで、常総学院時代の同期たちと体作りに励んだ。その間には緊急事態宣言の延長により、5月末に開催予定だった春のリーグ戦が取りやめに。実施されるか不透明になってしまったが、モチベーションを落とすことはなかった。体作りの成果は出ているようで「打つ時に体の軸がしっかりしてきたように感じています」。

もちろんバットも振り込んだ。中軸の三番を任される予定の中村は「東京六大学リーグの各校のエースは好投手揃いですが、彼らを打たなければ優勝はないので、球速や球種をイメージしながらスイングしていました」。

今を全力で、そしてその先のために。中村はバットを振り続ける

『法大に中村迅あり』と印象づけたのが、昨春の明治大1回戦だ。この試合の8回、中村は2死2、3塁の場面で代打を告げられる。マウンドには昨年のドラフトの目玉だった森下暢仁(広島東洋カープ)が。法政大は7回までこの森下から得点を奪えず、0対3と劣勢に立たされていた。中村はこの場面で、ベンチの期待に100点満点で応える。低めの球に上手く対応すると、放った打球は低い弾道のまま右翼席へ。リーグ戦初本塁打が起死回生の代打同点アーチになった。「たまたまです」と中村は控えめだが、プロ入り後もローテーションの一角として活躍している右腕からの一発。「自信になっているのは確かです」

春のリーグ戦は自身の進路のためにも重要になる。「上」で野球を続けたい希望を持っている中村は「僕はアピールしなければいけない立場。首位打者になって、率を残せる打者であると示したい」と意気込む。昨年のドラフトでは高校、大学で1年上の宇草孔基(うぐさ・こうき)が広島から2位指名を受けた。「近しい先輩だったので、いい刺激になりました」

野球ができることに、春のリーグ戦を戦えることに感謝し、自らの将来を切り拓く一打で、早稲田大と並ぶ優勝回数からさらに一つ積み上げる。

 

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