フィギュアスケート

立命館大フィギュアスケート・片平陽冬、井上晴絵 厳しい冬の寒さを耐え抜く2つの蕾

インカレ中止を受け、悔しさを露わにした井上(左)と片平(右)(すべて撮影・福清真人)

新型コロナウイルス感染症の影響により、全学生スケーターの目標である日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)の中止が発表された。3回生として立命館大スケート部フィギュア部門の主将を務める片平陽冬(まふゆ、甲府第一)と昨年インカレに出場した井上晴絵(2年、近江兄弟社)は悲痛な思いを打ち明けた。

やるせない気持ちでいっぱい

未曾有の事態により練習環境が制限される中、インカレに向けて日々、努力を積み重ねてきた。しかし、突然の中止発表。2人が真っ先に思い浮かべたことは、今年でラストイヤーを迎える4回生への思いだった。

「4回生が予選の西インカレへ向け、頑張っている姿を見てきました。その努力が報われる場所がなくなることがとても辛い」と片平。井上も「昨年は先輩のおかげで団体として3位に入賞することができました。今年も先輩たちと一緒に出場したかったが、それがかなわず残念」と複雑な思いを口にした。

主将としての責任

今年から主将を務める片平は自分の練習をしながら、後輩へのアドバイスもしっかり行い主将としての役割を遂行している。「1回の部練でどういうスケジュールを組むかなど、主将になり責任を感じることが増えました」と不安を吐露するも、「計画的に練習をすることの大切さを学ぶことができ、自分自身もより満足のいく練習が増えました」と片平。度重なる困難は彼女のスケートに対する姿勢を大きく変えていった。

主将としてチームを鼓舞する片平

主将としての重圧を抱える中、彼女の助けになっているのは仲間の存在である。「上回生を中心に全員が下級生のことを見て教えてくれている。みんな協力し合っている姿を見て、とても助けになっています」と部員たちへ感謝の思いを伝えた。

リベンジしたかった

昨年、1回生ながらインカレ出場を果たした井上。団体として3位に入賞を果たしたものの、「フリーでのミスが響いた」とインカレ初出場の1年目は18位という成績で終えた。昨年の借りを返す思いで、ここまで日々努力を積み重ねてきたものの、感染症の影響により部活動の自粛を余儀なくされた。

昨年、1回生としてインカレに出場した井上

井上は「なかなか練習できずコンディションを取り戻すことが難しかった。当たり前のようにみんなと練習している中で、制限や注意しないといけないことが積み重なるなど、普段と違う状況が続き苦労しました。今まで、何も障害なくスケートができていたことのありがたみを痛感しました」と語った。それでも練習再開後、すぐにリンクに戻れるよう決して準備を怠らなかった井上。自粛期間中は生活リズムが崩れるのを防ぐために、朝にランニングや縄跳びなどのトレーニングの日々を送っていった。

進化を遂げた2人

スケート部を引っ張っていく立場として期待される両選手。今後どういったチームにしていきたいかを問うと、片平は「フィギュアスケートは個人競技ではありますが、部活となると団体種目の色が強くなる。皆それぞれがライバルではありますが、協力しあって練習に取り組めるようなチームにしていきたい」。井上は「やらされて動くのではなく、自分から進んで行動するような自主性のある選手が増えるとチームの士気も上がる。各選手が目標を持ち、目標達成のため切磋琢磨していきたい」とそれぞれチームのビジョンについて語ってくれた。

10月3日に近畿フィギュアスケート選手権大会を控える片平と井上。12月の全日本選手権の予選ということもあり、2人にとって大事な一戦である。練習中はステップの精度やジャンプを中心に一つ一つの細かい動作を確認していた。「(公式戦の時期が近づいていることに対し)まだ準備する期間がほしいが、一つでも多く納得のいく演技ができるようにしていきたい」と片平。井上は「チームの目標でもある『PB(パーソナルベスト)更新』を果たしたい。昨年は自分でも納得のいくシーズンでした。今シーズンも納得できる演技にこだわり練習していきたい」と決意を示した。

チームと個人。それぞれに努力を積み重ね、進化を遂げた2人。厳しい冬の寒さを耐え抜いた蕾(つぼみ)は、春にきっときれいな花を咲かせるだろう。