慶應大フィギュアスケート・小堀瑛美 スケート人生最後のシーズンへやりきる
慶應大スケート部フィギュアスケート部門で、唯一の7級所持者である小堀瑛美(4年、市立千葉)は今シーズン引退を迎える。新型コロナウイルス感染拡大の影響により既に多くの大会が中止となってしまった今年。引退までの残り時間が限られている中、小堀は「やり切ったと思える年にしたい」という思いのもとモチベーションを落とすことなく練習に取り組み続けている。
目指していた大会の中止
ラストイヤーである今シーズン、小堀は「インカレ(日本学生氷上選手権)でフリーを滑ること」を目標に掲げていた。しかし新型コロナ渦で試合が次々と中止になっていき、先日ついに来年1月に行われる予定だったインカレの中止が決定。「誰が悪いわけでもなくしょうがないことだから受け入れなくちゃいけないと思っていたんですけど、発表があったときは覚悟してたはずなのに少し泣いてしまった」。小堀は中止が決まったときの心境をこのように話す。
インカレ以外にも既に出場を予定していた9試合がなくなり、「試合がなくなる度に落ち込んでいる」という小堀。それでも「何かしらの自分が出る大会で、練習してきたことが出せなかったとしても、少しでも諦めずに頑張れたと思えるような演技をすることが目標だし、その目標がモチベーションになって練習に取り組めています」と新たな目標に向かってひたむきに練習を続けている。
共に頑張る仲間に支えられた大学生活
大学生になって「スケート人生の残り時間を意識するときがたくさんあった」という小堀。そんなとき、大学からスケートを始め結果を残している選手や共に練習している部員から大きな刺激を受けていた。
「高校生のときに一人で練習していたときとはまったく違う。頑張ったら応援してくれて、調子が悪いときは慰めてくれたり一緒に頑張れる仲間。高め合っていける仲間と練習できた3年間だったなと思います」
そんな仲間への思いが強い小堀だからこそ、インカレの中止が決まった際も部員を思いやった。
「自分は7級で東京ブロック(東京フィギュアスケート選手権大会)の試合も予定されているんですけど、初級から6級の選手はブロックがない。自分はまだ他にも試合があるんじゃないかって希望があるけど、全部ないかもしれないっていう怖さやもどかしさ、特に今年引退する人の試合がなくなってしまうかもしれないのが悲しくて。頑張っていたのを知ってるからその部分も悔しいです」
7級を持ち、東京ブロックの出場資格を満たしているのは慶大では小堀のみ。それ以外の初級から6級の選手は、依然として試合の目処が経っていない状況が続く。そのような苦しい状況下でも、変わらずに練習に励む部員の姿がまた小堀を鼓舞するものとなっていた。
結果に捉われずやり切ったラストシーズンに
小堀は10月9日から11日に行われる東京ブロックに出場する予定だ。昨年の12月以来、約10カ月ぶりの試合となる。「最後だからこそ緊張はすると思うし(無観客試合という)今までと違うところもあるんですけど、自信を持って演技をしたい」と東京ブロックへの思いを語った。
小堀がラストシーズンのフリーに選んだ曲は『トゥーランドット』。荒川静香がトリノオリンピックで金メダルを獲得した曲で「使っても大丈夫なのかなと思っていた」という小堀だったが、貸し切り練習で荒川と一緒に滑った際本人から「是非使ってください」という言葉をもらったという。「プレッシャーがすごいです」と話しながらも「自分なりの世界観が表現できればいいなと思います」と新たなプログラムの意気込みを語った。
「失敗するしないにかかわらず、自分らしい大きいスケートを萎縮せずに自信を持って」。ラストシーズンであり、引退まであと何試合あるのかも分からない状況だからこそ、悔いのないように。結果や失敗にとらわれずやり切ったと思える演技を目指して、小堀はスケート人生最後のシーズンに臨む。