野球

亜細亜大学が8季ぶりのV、巨人ドラ1の平内龍太ら盤石投手陣と日替わりヒーロー

優勝投手で最高殊勲選手に輝いた亜細亜大学の平内龍太(撮影・ナイターはすべて朝日新聞社)

東都大学野球秋季リーグ戦第5週最終日

11月4日@神宮球場
▽2回戦(亜大2勝)
亜大 101 001 100|4
中大 000 000 000|0
【亜】内間、青山、平内-草部、向井【中】植田、畠中、石田裕、西舘、藤沢-古賀、大塚
【本塁打】木倉(植田)【二塁打】虎谷、田中幹(亜)齋藤(中)
▽最終成績 (1)亜大8勝2敗(2)立正大7勝3敗(3)国學院大6勝4敗(4)中大、東洋大、駒大3勝7敗

2回戦総当たり、勝利数で優勝が争われた東都大学野球1部秋季リーグ戦。頂点に立ったのは亜細亜大学だった。11月4日に行われた第5週(最終週)2回戦、亜細亜大学が中央大学を4-0で破って成績を8勝2敗とし、2016年春以来となる8季ぶり(中止の今年春を除く)26度目の優勝を決めた。最高殊勲選手にはエースの平内龍太(4年、神戸国際大附)が選ばれた。

最終週に2試合連続本塁打の勝負強さをみせた木倉(撮影・佐伯航平)

亜大は初回、中大の先発・植田健人(3年、興國)の立ち上がりを攻め、木倉朋輝(3年、星稜)の2戦連続となる2号ソロホームランで先制。3回には1死三塁から主将・矢野雅哉(4年、育英、広島6位)の内野ゴロの間に1点を追加。6回、7回にも1点ずつを奪いリードを広げた。

先発は内間拓馬、抑えは平内とドラフトコンビ

亜大の先発マウンドには10月26日のプロ野球ドラフト会議で東北楽天から4位指名を受けた内間拓馬(4年、宜野座)が上がった。前週の東洋大学2回戦でリリーフ登板した際に打ち込まれた内間に対し、生田勉監督(54)は「これでダメだったらお前はプロに行ってもダメだ」と檄を飛ばした。内間は「これで覚悟を決めました」と言う。最速150kmの力のある速球を軸に5回を投げ被安打3、無失点の好投を見せた。2番手の青山美夏人(2年、横浜隼人)が3回を無失点でつなぎ、最終回は巨人1位指名の平内龍太が中大のクリーンアップを三者凡退に打ち取り優勝投手となった。

先発して5回を無失点に抑えた内間

開幕前、主将・矢野が「亜細亜の投手陣が一番いいと自信を持って言えます」と断言していた通り、リーグ戦を通して投手陣が素晴らしい働きを見せた。平内は今年3月に右肘クリーニング手術を受け、春夏はリハビリ、トレーニングに取り組み、今秋復活を果たした。3勝を挙げ最高殊勲選手に選ばれた。リリーフで登板した9月30日の駒澤大学2回戦では最速156kmをマークした。青山も先発に、リリーフにと7試合に登板し、最優秀防御率を獲得(1.11)。内間も3勝を挙げ、投手陣の3本柱が優勝に大きく貢献した。

楽天4位指名の内間、広島6位指名の矢野、巨人1位指名の平内(左から)

「4年生が頑張れるチームは強いと経験上感じています。春のリーグ戦がなくなってしまったから、今年の4年生は1年間でたった10試合しかできない。これで卒業する4年生にはたくさんチャンスを与えたい」と生田監督はリーグ戦序盤から4年生の頑張りについて何度もコメントしていた。
「練習してきたことを神宮で発揮しよう。失敗を恐れず、悔いが残らないように思い切っていこう」
生田監督の言葉に、選手たちは燃えた。

好調な選手を大胆に起用、期待にこたえる

打線では日替わりヒーローが生まれた。9月30日、第2週の駒大2回戦ではそれまでリーグ戦出場のなかった広瀬将(4年、県岐阜商)が6番・レフトのスタメンに抜擢された。広瀬は公式戦初打席で先制の3点スリーベースを放ち、チームは大いに盛り上がった。
「前日、コーチから広瀬のバッティングがすごくいいと報告があったので、それを信じてスタメンで出しました。『どうせ明日はまたスタンド(ベンチ外)なんだから開き直って、思い切ってやれ』と声をかけたら、一世一代の仕事をしてくれた」と生田監督は広瀬起用の理由について話した。広瀬は10月7日、第3週の國學院大學2回戦でも決勝の犠牲フライを放ち勝利に貢献している。

日替わりヒーローは下級生からも飛び出した。生田監督は「紅白戦で結果を出した者をベンチに入れる」と選手たちに公言している。9月25日、第1週の立正大学2回戦では、前日の紅白戦で三塁打を放った山下滉介(2年、岡山理大附)が今季始めてベンチ入り。山下は延長タイブレークとなった11回裏、2死一、三塁から代打で打席に立ち、サヨナラのタイムリーを放った。

新人賞を獲得した天井(撮影・佐伯航平)

1年生の活躍にも触れないわけにはいかないだろう。右翼手の右田稜真(1年、二松学舍大附)はリーグ2位の打率3割5分5厘をマークし、ベストナインを獲得。中堅手の天井一輝(1年、広島商)も打率3割をマークするなどの活躍で新人賞を受賞した。右打ちの右田、左打ちの天井の2人は、来年以降のクリーンアップ候補として期待を背負う。

「六大学の優勝チームと戦えるチャンスを」

優勝が決まり、マウンドに集まって喜ぶ選手たちを見ながら、生田監督の胸には喜びよりも切ない気持ちがこみ上げてきたという。優勝後の記者会見で生田監督は話した。
「4年生が中心になって、本当によくチームを引っ張ってくれました。ただ、今回は優勝をしても神宮大会がなくなってしまって、次のステップがなく、この試合が最後になってしまう。彼らの気持ちを考えると、正直、切ない気持ちになります。もし、できるものなら、東京六大学の優勝チームと、1試合でもいいからこの神宮球場で戦えるチャンスをつくれないでしょうか」

優勝したが、今年の明治神宮大会は中止となった

コロナ禍で春のリーグ戦、6月の全日本大学選手権が中止になってしまった。秋は各地でリーグ戦が行われたが、リーグ戦が戦われている10月上旬、明治神宮大会の中止が決まった。今年は春秋ともに全国大会が行われずに大学野球のシーズンが終わってしまう。生田監督の思い、選手たちの思いから、なんとか実現の可能性を探ることはできないものだろうか。

東都大学野球秋季リーグ戦表彰選手

最高殊勲選手 平内龍太(亜大)満票、初▽最優秀投手 平内龍太 9票、初▽最優秀防御率 青山美夏人(亜大)防御率1.11、初▽首位打者 与倉良介(駒大)打率.400、初▽新人賞 天井一輝(亜大)
【ベストナイン】投手 平内龍太 10票、初▽捕手 立松由宇(立正大)14票、初▽一塁手 虎谷貴哉(亜大)13票、2回目▽二塁手 牧秀悟(中大)14票、4回目(遊撃手で1回含む)▽三塁手 木倉朋輝(亜大)14票、初▽外野手 若林楽人(駒大)満票、初・右田稜真(亜大)12票、初・与倉良介 6票、初▽指名打者 花嶋悠吏(立正大)14票、初
(満票は15票)