出雲駅伝優勝候補も5位の駒澤大 ルーキー篠原倖太朗「強いランナーになりたい」
2年ぶりの開催となった出雲駅伝。駒澤大のエントリーメンバー上位6名のタイム平均は5000m、10000mともに全20チーム中No.1。圧倒的な力を有し「優勝候補筆頭」と注目されていたが、力及ばず5位。納得のいく順位とは言えず悔しさの残る結果で今大会は幕を閉じた。
流れに乗れず手遅れに 田澤は気迫の走り
当日の気温は30度を超え、歴代大会の中で最も厳しい暑さとなった今大会。駒澤大の1区を任された篠原倖太朗(1年、富里)は、高校時代から1500mを得意とするスピードランナーだ。互いに様子を伺いながらのレースが展開される中、ラスト1kmで篠原含め先頭集団は8人に絞られる。しかし残り500mで他大学がスパートをかけ始め、篠原は集団から遅れをとり、8位で2区安原太陽(2年、滋賀学園)に襷(たすき)をつないだ。「初めての大学駅伝でチームに貢献し、自分自身をアピールしたい」と意気込んだ安原は、区間3位の走りで6位に浮上。
エース区間となる3区を任されたのは暑さに強い花尾恭輔(2年、鎮西学院)。順位を2つ上げ、4位でエース格の一人として監督からも期待される唐澤拓海(2年、花咲徳栄)へ襷が渡った。昨年度の3大駅伝で走れなかった悔しさをバネに今年度頭角を現した選手だが、スピードが上がらず、順位を3つ落とし8位で5区赤津勇進(2年、日立工)に襷リレー。「初めての駅伝で人一倍緊張していた」と話した赤津は、強風に阻まれ調子が上げられず、襷は8位で駒大の大エース・田澤廉(3年、青森山田)に託された。
田澤は10000m日本人学生歴代2位の記録を持ち、3年生ながら主将としてチームを率いてきた。襷が渡る前の心境を「(先頭で襷が渡り、東京国際大のヴィンセントと1分差ついている、という)当初のプランとは違う展開になってしまったが、自分がどれだけ前を抜けるかに切り替えた」と語った田澤。エースとしての矜持、主将としての意地で前を走る創価大、帝京大、そして襷が渡った時点では約1分差あった早稲田大を追い抜く気迫の走りを見せ、5位でゴールした。
1区篠原「勇往邁進」強いランナーを目指して
今大会は、5000mの駒大記録を持ち、5月の日本選手権10000mでは27分41秒68で田澤に次ぐ3位となった鈴木芽吹(2年、佐久長聖)がけがで欠場した。それでも2年生は4名が出場、3年生の田澤、そして1年生の篠原という若いチームになった。
篠原はただ一人、1年生からエントリーの枠を勝ち取った選手だ。大会前に行ったアンケートでも、チームの注目選手に田澤と自分自身を選び、出雲駅伝までは「先輩方が強いので1年生は走るのが難しいと言われているが、自分は絶対にメンバーになってやる! という気持ちをもってやってきた」と、力強い回答も見られた。立場上萎縮してしまいそうなところだが、この気持ちの強さも選ばれた所以なのだろう。5000mのタイムも今でこそ13分48秒57というタイムを持っているが、入学時は14分36秒11。長い距離を走ることに不安を感じていたが高校時代の顧問の熱心な指導を受け、大学の練習でも距離走をこなしたことが大幅な自己ベスト更新につながった。
1区の流れが結果にも影響してくることを考えると、その責任は重大だ。スタート直前の心境や調子を「暑さに対してはそこまで心配はなかった。1区という大事な区間だったため、結構緊張していた」と振り返った。後半は自らの持ち味であるスピード感を生かしたスパートで勝ち切ろうと考えていたが、結果を受けて「余力が残っていなかった。先頭の青山学院大まで(自分が襷を渡した時)約16秒の差。後続のメンバーに申し訳なかった」と悔しさをにじませた。
今後の駒大を担う期待の新人は田澤の走りを見て、「駒澤の4年間をかけて、少しでも近づかないといけないなと改めて感じた。どんなに調子が悪くてもあのような走りができる、速いというより強いランナーになりたい」と頼もしい目標を掲げた。
新型コロナウィルスの影響で、学生記者は満足に現地取材や対面取材を行えていない。今回も電話で取材を受けていただいた。電話越しの表情はうかがい知ることが出来なかったが、篠原はひとつひとつの質問にとても丁寧に答えてくれた。実力に加えて人柄も良く応援したいと思わせてくれる選手だと感じる。4年間かけて目標達成のために努力する姿を間近で見守れることに感謝したい。
前回大会王者の意地を見せられるか
11月7日の第53回全日本大学駅伝に向けて、先日チームエントリーが発表された。駒大からは出雲駅伝エントリー全メンバーに加えて円健介(3年、倉敷)、中島隆太(3年、藤沢翔陵)、東山静也(3年、高岡向陵)、 青柿響(2年、聖望学園)、 白鳥哲汰(2年、埼玉栄)、 佐藤条二(1年、市立船橋)の合わせて16人が選ばれた。
「優勝候補」として期待されながらも残念な結果に終わった今大会。田澤は「不甲斐ない。全日本や箱根はもちろん優勝を目指して、個人としては区間賞を取るのが目標」とリベンジを誓った。
トラックの記録だけでは結果を推し量ることができないからこそ、駅伝は多くの人を魅了する。前回大会王者の駒澤大。追われる立場となる今大会で、「優勝」の二文字を伊勢神宮にもたらすことができるか。