同志社大DB・泉勇太朗 「小さなヒーロー」が仲間と魅せるビッグプレー
同志社大学アメリカンフットボール部は今季、京都大学戦で勝利し、10年連続出場していた入れ替え戦の常連からの脱却に成功した。そのWILD ROVER(ワイルドローバー)の中で、今年からDB(ディフェンスバック)のスタメンとして試合に出場している選手がいる。2年生の泉勇太朗(同志社国際)は身長は168cmと小柄だが、パスカット時には大ジャンプを見せる。
高校最後の年にQBに転向し活躍
今季、泉の好守備が光った。「個人戦では、負けることがなかった」と、初戦の関西学院大学戦では、学生王者相手に屈することなく5回のパスカットを決め、鉄壁の守りを見せた。小さな体ながら、高く跳びボールに必死に食らいつく。一対一での勝負強さを見せつけ、泉にとって初のリーグ戦で多くの注目を集めた。
ディフェンスだけでなく、キッキング時のリターナーとしても活躍している。京大戦では前半終了間際に得意とするカットバックで、敵をすり抜け、快走を見せた。攻守ともに好プレーを見せるビッグプレーメーカーだ。
泉はアメフトを始めて今年で11年目となる。ピアノを習っていた泉だったが、先生の夫が関西大学アメリカンフットボール部の現監督である磯和雅敏監督だった。試合を見に来るように誘われ、そこでアメフトの魅力に惹(ひ)かれたのがきっかけだ。試合終了後に、すぐさま両親に自分もアメフトがしたいと告げ、そこから彼のアメフト人生が始まった。
高校時代は同志社国際高校でアメフトに励んだ。1、2年生の頃は主にWR(ワイドレシーバー)、DBとして試合に出場し活躍していたが、3年生の時にQB(クオーターバック)に転向。「これまでのアメリカンフットボール人生で1度も経験したことのないQBのポジションを、高校最後の1年で託されるのは非常に厳しかったです」。副キャプテンも務めていたため、満足のいくプレーができず、チームに貢献することができないことに不甲斐なさを感じるように。「自分の実力と立場に悩まされる日々の中、同期の力を借り、何度もプレーを合わせました」。その努力が実を結び、京都代表として出場したプリンスボウルでは、QBでMVPに選ばれるまでに成長した。
仲間の存在で強くなってきた
現在は、元々のポジションであるDBとしてアメフトに励んでいる。「QBの経験があるからこそ、DBとしてどのようなことをすれば相手QB が嫌がるのか、オフェンスの流れが崩れるのかわかる気がします」と話す。これまで積み重ねてきた努力が現在の糧となり、今季も経験を活かしたパスディフェンスが光った。
「この11年間の間、ずっと楽しく競技を続けてこれたと言ったら全くの嘘(うそ)になります。幾度もやめたいと心が折れかけました」とこれまでの競技人生を振り返った。そんな彼を支えたのがチームメートの存在だった。「必死に頑張る仲間の姿を見ると、弱気になっていた自分が恥ずかしくなり、不思議と力がみなぎってきます」。どんな困難も仲間とともに乗り越えてきた。家族のような存在に出会えたことが、これまで競技を続けることができた理由であり、泉の人生にとって大きな財産となった。
シーズン最終章が終わり、「4回生には本当に感謝しています」と、最上級生への感謝を語った。「来年のリーグが終わったときに、今年の4回生たちに『同志社は変わったな』と言ってもらえるように、結果で恩返しがしたいと思います」。主将を務めた髙島瑞生(4年、同志社国際)から「あとは任したで」と託された思いを胸に、来シーズンも小さなヒーローが仲間とともにビッグプレーを見せてくれるに違いない。