フィギュアスケート

急成長の「ゆなすみ」ペア、来年こそ世界選手権へ「クオリティーを高めていきたい」

急成長している長岡柚奈、森口澄士組。世界選手権出場の可能性は十分だ(すべて撮影・浅野有美)

フィギュアスケートのペアで急成長している、長岡柚奈、森口澄士組(木下アカデミー)が今シーズンの海外初戦を迎えた。「ゆなすみ」の愛称で知られ、結成1年目の昨シーズンは、グランプリ(GP)シリーズNHK杯で国際大会デビューを果たし、全日本選手権で優勝を飾った。2023年世界選手権金メダルの三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)に続く、期待のペアが世界の舞台を駆け上がる。

ペア結成1年目、国際大会デビュー

長岡柚奈(ゆな、藤女子中高)と森口澄士(すみただ、京都両洋、同志社大学卒)は昨年5月にペアを結成した。

ペアとシングルの二刀流で経験を積んできた森口に対し、長岡はペア初挑戦。だが、メキメキと力をつけて、2023年11月のGPシリーズNHK杯で国際大会デビューを果たした。ショートプログラム(SP)で8位発進し、フリーはサイドバイサイドの3回転ループ-ダブルアクセル(2回転半)-ダブルアクセルの3連続ジャンプを着氷するなど90.03点をマーク。SPとの合計135.39点で8位になり、堂々と滑り切った。

12月の全日本選手権は、「りくりゅう」こと、三浦璃来、木原龍一組の欠場により、唯一の出場となったが、SPとフリーの両方でミスのない演技で、合計173.64点のシーズンベストを出して初優勝を飾った。

GPシリーズNHK杯に出場予定。昨シーズンからの成長を見せる

世界選手権を逃した悔しさが次につながる

年明けからはバヴァリアンオープン(ドイツ)とチャレンジカップ(オランダ)に立て続けに出場し、世界選手権に出場するためのミニマムスコア(最低技術点)獲得に努めた。だがプレッシャーとの戦いは想像以上だった。SPの最低技術点にわずか2・83点届かず、世界選手権への切符を逃した。

「プレッシャーの中でいい演技をするのがどれだけ難しいか、どうやったらプレッシャーを乗り越えられるかを経験できました」と長岡。「昨シーズンの一番の目標がかなえられなかったのは本当に悔しかったですけど、世界選手権に出るために2人で頑張って練習してきたその過程が本当に大事だっていうことをコーチに言ってもらえて。私たちもそれを自覚してるので、これからに生かせると思います」と、前を向いた。

森口は「たくさんのその試合にまず派遣していただいて、いい経験ばっかりでした。たくさん緊張を感じたり、プレッシャーを感じたり、難しいところにチャレンジしてきたシーズンで、すごく充実していました」と振り返った。

4月のブルーム・オン・アイスではコミカルな演技で観客を楽しませた

ポジティブに話し合い、急成長

この1年間の2人の急成長ぶりには驚くばかりだ。シングルからペアに転向した長岡にとっては、スロージャンプもツイストリフトもデススパイラルも、初めてづくしだった。ブルーノ・マルコット・コーチや森口、三浦・木原組に基礎から教えてもらい、一つひとつ技術を吸収していった。

半年後には2回転のツイストリフト、サルコーとループの2種類のスロートリプルジャンプをプログラムに入れられるまでのレベルになった。長岡は「トリプルツイストとかデススパイラルとか、もっと技術を吸収していかないといけないと思うので、これからどんどん成長していきたい」と目を輝かせる。

森口は長岡の急成長について、「カップル競技は片方ではなく、2人がどう吸収できるか。ブルーノ先生との相性もよくて上達できた。日本にコーチがいない分、自分たちで研究するというか、自分の動作を映像で見て、もっとこうだなとか、ポジティブに話し合いができている」と説明する。

森口はシングルで全日本選手権7位に入るなど国内上位レベルにありながら、今春に同志社大学を卒業してからはペアに専念した。長岡はそんな森口に対し、感謝の気持ちでいっぱいだ。「シングルですごい才能も成績も持っていたのに、ペア一本にかけてくださったのが本当にありがたいです」

互いのリスペクトが短期間での成長につながっているのかもしれない。

長岡はペアを始めて2年目とは思えないほど技をどんどん吸収している

世界選手権出場、そして26年オリンピックへ

高校を卒業した長岡は大学に進学せず、競技に集中する道を選んだ。「澄くんが大学を卒業して練習にかけられる時間が増えたので、ミラノ(・コルティナ・ダンペッツォ・オリンピック)を目指すなら、たくさんの練習、密度が高い練習をしていきたいと思いました。いま大学に入るよりも、目標が一区切りしたときに入るのもいいのではないかと考えています」

3回転ツイストリフトの習得やスロートリプルジャンプの種類の増加など、世界レベルで戦うための課題はたくさんある。一方、強みであるサイドバイサイドのジャンプやリフトはさらに伸ばしていく。

森口は「一つ一つのクオリティーを上げて、もっと2人のスケーティングのユニゾンを高めて、世界選手権に出場するのはもちろん、結果もしっかり残していきたいです」。長岡も「一つ一つの大会にしっかり目標を持って、満足できるような大会が昨シーズンより増えるといいなと思います」と意気込んだ。

りくりゅうペアを追いかけ、世界トップレベルを目指す

新しいSPは「Goodbye yellow brick road」、フリーは「Space Table Symphony」を継続する。いずれもキャシー・リード・コーチが振り付けし、よりユニゾンを高めたプログラムに仕上げている。

9月初めにチャレンジャーシリーズ(CS)の「ジョンニックス・インターナショナル・ペア・コンペティション」で今シーズン初戦を迎えた。今年11月のGPシリーズ第4戦NHK杯にも出場を予定している。来年3月にアメリカ・ボストンで開かれる世界選手権出場に向けて練習を積んでいく。

もともと個人のレベルが高い2人だけに、ペア技術の習得が進み、ユニゾンが高まれば一気に世界レベルに達するだろう。りくりゅうペアに続く世界的なペアを目指して。「ゆなすみ」の成長ぶりから目が離せない。

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