大学野球

心に刺さる学生スポーツ番組を BS11「キラボシ!」小林都仁プロデューサー

小林さんは学習院大時代、硬式野球部に所属。しかし、華やかしい日々ではなかったと言う(提供写真以外、すべて撮影・藤井洋平)

「スポーツを伝える仕事をしたい」。日本BS放送(BS11)の小林都仁(くにひと)さん(41)は、高校時代に抱いた志を貫き、学生スポーツに特化したドキュメンタリー番組「キラボシ!」(毎週火曜日午後111130分放送)でプロデューサーを務めている。

チームを思うのは仕事もラグビーも同じ ANA菱田広大

マイナーとされる競技も広くカバー

今年10月にスタートしたBS11の「キラボシ!」は、高校や大学でスポーツに打ち込むチームや選手をテーマにしている。「最後の大会にかける学生アスリートはとても輝いています。番組名を『キラボシ!』としたのもそのためです」と小林さん。取材対象が大切にしているものについて掘り下げるのに時間をかける。「番組1本につき取材は約3カ月ですね。カギとなる言葉を拾いながら、選手の内側に迫っていきます」

「キラボシ!」では一般的にマイナーとされる競技もカバーしている。たとえば12月3日の放送では、9年連続で3種目総合団体優勝を飾った日大の馬術部を特集した。「一生懸命に競技に向き合うところは、どんなスポーツも共通していますので」と小林さん。これからも日の目を見る機会が少ない競技や選手にもスポットを当てていくつもりだという。

選手の“内側”に迫る番組を作るため、取材に時間は惜しまない(写真は番組提供)

大学時代の“ポジション”は用具の運搬係

小林さん自身も高校、大学時代はスポーツに打ち込んだ。埼玉・伊奈学園総合高校でも学習院大学でも硬式野球部でキャッチャー。ただし、選手としての華々しい経歴はない。

「高校ではベンチに入れなかったですし、大学でもレギュラーになれませんでした。当時も学習院は東都の3部でしたけど、リーグ戦に出場できたのは数えるほど。選手としてのハイライトは3、4部の入れ替え戦で神宮球場の土を踏めたことくらいでしょうか」

大学時代は戦力として貢献できない分、裏方としてチームを支えた。“定位置”は「荷物車」だった。「用具の運搬係ですね。部の予算が潤沢ではなかったので、部員が試合会場まで車で運んでたんです。大学の思い出といえば、荷物車の運転。これが真っ先に浮かびます」

学習院大硬式野球部時代、小林さんは選手として活躍できない分、用具の運搬係としてチームを支えた

高校でも大学でも選手としての活躍はなかった分、広い視野でチームを見られた。その経験は「キラボシ!」の番組作りにも生かされている。前述の日大馬術部の回では、団体9連覇の偉業に挑むチームの主将・古野博人(4年、東筑紫学園)を追いかけるとともに、レギュラーの座を失った1年生を真摯(しんし)に支える副将の磯野太(同、宮崎日大)にも注目した。

母校の学習院大硬式野球部は、2015年秋と17年秋に東都3部で優勝を果たしている。入れ替え戦に負けて2部昇格はならなかったが、レベルが高い東都大学リーグで2部をうかがう位置にはいる。「もし1961年春以来の1部復帰がかなったら、そのときは母校を『キラボシ!』で取材したいですね」。小林さんの夢である。

20年以上も貫いた初志

小林さんは高校時代に「スポーツを伝える仕事をする」と心に決めた。しかし就活には苦しんだ。大手のメディアを目指し、1年間の就職浪人もしたが、いわゆる「就職氷河期」だったこともあり、内定には至らなかった。それでも初志を曲げることなく、アルバイトをしながら道を模索。26歳のときに日本テレビ系の制作会社に入り、当時放送されていた「THE・サンデー」でスポーツコーナーを担当する。ようやく目標の入口にたどり着いた。その後、ドキュメンタリーをメインに扱う制作会社に転職。小林さんは伝統工芸を支える職人さんたちを丹念に描く番組を50本近く作った。「そこでドキュメンタリーが何たるかを学べたことは大きかったですし、いまにつながってます」と振り返る。

そして2012年にBS11に入社。当初は旅やゴルフなど担当番組は多岐にわたったが、17年から念願かなってスポーツ一本に。翌年からスポーツドキュメンタリーを手掛けるようになり、今年になって「キラボシ!」をスタートさせた。

「スポーツを伝える仕事をしたい」。初志を曲げることなく、これまでやってきた

「時間がかかり過ぎましたね」。小林さんは苦笑いするが、あきらめなかったからこそ、やりたかったことができるようになったのだろう。それも、大学時代のスポーツ経験があったから。縁の下の力持ちではだったが、積み重ねた日4年間が心のよりどころになった。

番組開始から2カ月が経った。視聴者からの「感動しました」「励まされました」との言葉に、やりがいを感じている。小林さんはこれからも「キラボシ」たちの熱い思いをくみ取り、見てくれた人の心に深く刺さる番組を作っていく。
学生たちの頑張る姿に、あの日の自分を重ねながら。