流通経済大の主将・積賢佑 積み重ねた無限の努力、初の4強かけて天理に挑戦
ラグビー全国大学選手権 3回戦
12月15日@埼玉県営熊谷
流通経済大(関東リーグ戦3位)43-39 帝京大(関東対抗戦3位)
「RKU」こと流通経済大学ラグビー部が新たな歴史を刻んだ。
12月15日、ラグビーの大学選手権に関東と関西の大学が登場し、3回戦4試合があった。流通経済大(関東リーグ戦3位)は、2シーズン前まで大学選手権9連覇の金字塔を打ち立てた帝京大(関東対抗戦3位)にチャレンジした。
公式戦で初めて帝京を撃破
過去2シーズンも両チームは大学選手権で対戦しているが、流経は16-68、0-45と大敗していた。しかし、この日は帝京のキックオフのミスにつけ込み、前半5分で早くも2トライ。12-0と、願ってもない最高のスタート。それでもFW勝負にきた帝京にひっくり返され、19-25で前半終了。後半も点を取り合ったが、22分で31-39と8点差にされた。
今シーズンは複数リーダー制を敷いている流経。その先頭に立ってチームを引っ張るキャプテンでNo.8の積賢佑(せき・けんすけ、4年、熊本西)は冷静だった。「フィジカルは負けてなかった。それに僕たちは週2回、ゲームフィットネスを上げるために、ボールを使って走り込みを続けてきました。相手が疲れてたので、圧倒しようと思いました」
確かに流経の自慢のアタックは十分に通用していた。積は「自分たちの強みはWTBの横瀬(慎太郎、4年、常総学院)とノックス(イノケ・ブルア、2年、フィジー出身)。外まで振っていこうと思ってました」と振り返る。
その言葉通り、右サイドに張っていた積の強いランもあって、後半29分にはMVP級の活躍を見せたWTBブルアがトライ。これで38-39。32分にはブルアがオフロードパスでFB河野竣太(2年、常翔学園)につないでトライ。43-39とついに逆転した。残り5分は積を中心にFW陣で攻撃を継続して時間を使い切り、歓喜のノーサイドを迎えた。
流経が公式戦で初めて帝京を下した瞬間だった。積は「3年間負け続けた相手にキャプテンとして勝てて本当にうれしいです! 『ワンチーム』『フォアザチーム』をテーマに、試合に出ているメンバーはやりきる、メンバー外もチームのために応援するという一体感の出たことが、今日の勝利につながりました」と、満面の笑みで言った。
内山達二監督も「ミスもありましたが、積は緊張と気合いのバランスを保って全力でチームに尽くしてくれた。どんどん成長してますね」とたたえた。
かつてサッカーでトップ下、熊本西では花園届かず
身長177cm、体重103kgのがっしりした体。もともと幼稚園から小6まではサッカーに熱中し、トップ下の選手だった。ただあまりチームが強くなかったこと、熊本工業高出身で熊本市消防局のラグビー部に在籍していた父の影響もあって、「ラグビーやってみようかな」と、中1から熊本ラグビースクールで競技を始めた。
ラグビー好きの父のサポートもあり、すぐに夢中になった積は、過去9回花園に出場している熊本西高に進学した。しかし、1、2年生のときは県の決勝で負け、3年生のときは準決勝で負けて花園出場はかなわなかった。入学当時に70kgほどだった体重を90kgまで増やし、FLやNo.8として目立っていたこともあり、流経のラグビー部に入るに至った。
大学1、2年生のときは、現在トップリーグのパナソニックで活躍している2学年上のFL大西樹の存在もあり、なかなか公式戦には先発で出られなかった。3年生になってNo.8の定位置を確保し、持ち前の突破力で存在感を示した。そしてコミュニケーション力もあり、プレーでも引っ張れる積は、4年生になると自然と同級生から推されてキャプテンに就任した。
好きな言葉は中学のラグビースクール時代に教えてもらった「実力は有限。努力は無限」だ。「ずっとこの言葉が好きで、少しずつ努力を重ねてきました」。キャプテンになった責任感もあり、授業の合間や、ほかにも空いた時間があればフィジカルトレーニングを続けて、ベンチプレスは150kgを支えるまでになった。
2試合続けて流経ラグビーの歴史を塗り替える!
来春からはトップリーグの強豪チームのひとつに加入する。その前に、目指すはもちろん初のベスト4、そして大学日本一である。12月21日、東大阪市花園ラグビー場(大阪)で、昨年度準優勝の天理大(関西1位)にぶつかる。
「天理も帝京と同様にフィジカルが強いですが、アタックは通用すると思うので、クオリティーを上げていきたい。ディフェンスでは相手に勢いに乗らせないように、前で倒したいです」。積は2試合続けて部の歴史を塗りかえるつもりだ。