アメフト

立命館宇治高・庭山大空 関学育ちのQB、クリスマスボウルで佼成学園にやり返す

関西地区の決勝でランに出る庭山(撮影・安本夏望)

アメフト第50回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル

 12月22日@横浜スタジアム
佼成学園(関東、東京1位)vs 立命館宇治(関西、京都1位)

 アメフトの高校日本一を決めるクリスマスボウルが、12月22日に横浜スタジアムで開催されます。昨年と同じ顔合わせとなり、4回目の出場で悲願の初優勝にかけるう立命館宇治が、史上4校目の4連覇を狙う佼成学園に挑みます。早くも大学での活躍が楽しみになる選手がたくさんいる中、両校から4years.の注目選手を一人ずつ紹介します。立命館宇治はQB(クオーターバック)の庭山大空(にわやま・おおぞら、3年)です。

関学との死闘を制し、佼成と2年連続のクリボ決戦

11月24日、関西地区決勝は死闘となった。立命館宇治と関西学院(兵庫1位)の対戦。第1クオーター(Q)、立命館宇治は二つのインターセプトで得た攻撃をタッチダウン(TD)につなげる。13-0。関学は第2QにエースQB前島仁(3年)が55ydを走りきるTD。13-7。立命館宇治は第2Q終盤にパントリターンTDを決め、前半を19-7とリードして折り返した。第3Qは関学に先にTDされて19-20と逆転された。勝負の第4Q。立命館宇治は第4Q3分すぎ、ゴール前3ydからRB村上太智(3年)が中央を突いて逆転のTD。庭山からRB南田億(3年)へのパスで2点コンバージョンも決め、27-20とした。関学は試合残り1分41秒で前島が28ydのTDラン。1点差に迫ったが、トライ・フォー・ポイントのキックは失敗で27-26のまま。関学の運命をかけたオンサイドキックのボールを立命館宇治がリカバー。時計を回し、日が沈んだ万博記念競技場にエンジの花が咲いた。 

秋の関西を制した瞬間、立命館宇治のオフェンスメンバーは跳び上がって喜んだ(庭山は中央の5番、撮影・安本夏望)

試合後、庭山は言った。「人生の中で一番タフな試合になりました。僕らが勝つには『ONE TEAM』になるしかないと思ってました。先行逃げ切りしかできなかったチームが、ディフェンスを信じて、全力でやれたと思います」。第4Q開始時点で19点のリードがありながら大逆転を喫した昨年のクリスマスボウル。あの屈辱から1年が経ち、成長したチームの姿があった。 

関学で問題児だった自分を、立宇治が成長させてくれた

庭山はこの日の対決を誰よりも心待ちにしていた。いまは立命館宇治のエースQBだが、実は関学育ちなのだ。

父の久由さん(50)が大阪体育大でアメフトをしていたこともあり、関西学院大学ファイターズが運営する小学生対象のフットボールスクール「上ケ原ブルーナイツ」で競技を始めた。関学中学部に進み、タッチフットボール部に入った。QBとDB(ディフェンスバック)でプレー。中2の秋にDBのスターターとして出た試合で、相手にTDを許した。その試合に負け、先輩たちは引退となった。「あのとき、腐ってしまった」。新チームの立ち上げに向けた話し合いで、チームメイトと衝突した。当時を振り返り、庭山は「いまの自分がその場にいたら、そいつ(自分)のことを『何やこいつは』って思うぐらい問題児でした」と話す。庭山はチームを去る。そしてクラブチームの大阪ベンガルズでフットボールを続け、立命館宇治高に進んだ。そしてついに、中学でともに戦った仲間とのクリスマスボウルをかけた大一番がやってきたのだ。「相手が関学に決まってうれしかったですし、立宇治(りつうじ)に行って成長したっていう姿を見せたかったんです」 

関学のお家芸であるショベルパスを繰り出す庭山(撮影・安本夏望)

中学のときの自分とは違う。ベンガルズと立命館宇治でプレーし、新たな発見もあった。「ベンガルズは土のグラウンドでした。関学を出て、人工芝グラウンドの環境や指導者にも恵まれてたのが分かったし、初めて関学のよさを知りました。関学に合わないと思ってやめたんですけど、いまはあのときの自分が未熟だったと思います。立宇治で成長させてもらって、自分一人では何もできないと分かりました」。オフェンスの自分以外の10人を信じ、チームのみんなを信じて始めて、前へ進めた。庭山の全身全霊のプレーを目の当たりにした中学時代の仲間も、きっと感じるものがあったはずだ。

関学のQB前島と「お互い、最高のライバルや」

「お互い、最高のライバルや」。試合後に関学のエースQB前島と抱き合い、そう言い合った。高校最後の対決を制したのは庭山だった。「これからも意識して練習すると思いますし、人生の戦友であり、最高のライバルでもあります」。これからおそらく立命と関学で彼らが迎えるであろう4years.が、いまから待ち遠しい。

試合の直後、立命館宇治の庭山(5番)と関西学院の前島(11番)は抱き合ってお互いをたたえた(撮影・藤井みさ)

 さあ、その前に庭山には、立宇治に悲願の初優勝を持ってくる戦いが待つ。1年前、大阪のヤンマーフィールド長居に駆けつけてくれた大応援団の前で、大逆転負けを喫した佼成学園が相手だ。「あの悔しさを忘れずに取り組んできました。ずっと『無冠の帝王』と呼ばれてきたので、佼成に勝って日本一になりたいです」。この1年のすべてを、そして関学で始まったここまでのフットボール人生のすべてを、ぶつける。12月22日の横浜スタジアムで、佼成学園ロータスに、ぶつける。

昨年のクリスマスボウルで敢闘賞を受け、何ともいえない表情の庭山(撮影・松嵜未来)
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